テラーノベル
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第二次世界大戦の戦火が激しさを増す、194X年。冬の気配が漂う灰色の空の下、ヨーロッパの荒廃した街並みに、軍靴の足音が響いていた。
ナチス・ドイツは、不機嫌そうな面持ちで瓦礫の道を歩いていた。戦況の報告、補給路の確保、そして終わりの見えない侵攻計画。頭の中は常に戦略で埋め尽くされ、周囲への配慮など微塵もない。彼の頭部、すなわちドイツの国旗を模した丸い輪郭は、冷酷な光を反射している。
「チッ、全く……どこへ行っても足場が悪いな」
彼が鋭い視線を足元に向けたその時だった。路地裏の陰から、小さな人影が慌てて飛び出してきた。
「あ……っ!」
コツン、という鈍い音が響き、ナチスに衝突した小さな影は、あっけなく背中から地面に倒れ込んだ。
ナチスは苛立ちを露わにして、その場に座り込む少女を見下ろした。深い灰色のフードを被った、あまりにも小さな存在。身長はせいぜい130センチメートルほどだろうか。
「おい、どこを見ている。貴様、目が見えないのか?」
ナチスが冷徹な声で言い放つと、少女はビクリと肩を震わせた。転んだ衝撃で、深く被っていたフードがずり落ちる。
ナチスは一瞬、言葉を失った。
フードの下から現れたのは、腰まで伸びた透き通るような銀色のストレートヘア。そして、その長い髪の間から覗く、同じ銀色の獣耳だった。しかも、少女が恐怖でおどおどと身を震わせるたびに、スカートの裾から伸びる銀色の尻尾が二本、不安げに揺れている。
「……あ、あの……ご、ごめんなさい……っ! わ、私……急いでいたので……」
少女――天乃鈴は、真っ赤な瞳を涙で潤ませながら、慌てて敬語で謝罪した。彼女の身体から溢れる微かな気配は、人間とは明らかに異なる。鈴は「獏」の末裔であり、この殺伐とした戦時下において、人々の見る悪夢を喰らうことで密かに均衡を保っていた。
「……獣人、か。それも見たことのない種族だな」
ナチスの興味が、冷徹な支配欲へと変わるまで時間はかからなかった。彼は手を伸ばし、鈴の顎を掴んで無理やり顔を上げさせた。
「貴様、何者だ? どこの国の……いや、どこの組織の実験体だ?」
「ひっ……! ち、違います……っ! 私は、ただ……夢を……食べているだけで……!」
鈴は恐怖で身を縮める。彼女の能力――夢を食べた相手の身体能力を向上させる力や、重混反応という特殊な防衛本能は、この戦場ではあまりにも異質だった。人間相手ならば一日一度、対象を昏睡させることもできるが、国という強固な精神と実体を持つ「カンヒュ」相手には、強烈な目眩を誘発させることすら困難だ。
その時、路地の角から冷ややかな声が響いた。
「おいおい、そんな小さな相手をいじめて何が楽しいんだい? 君も悪趣味なことだね、ナチス」
姿を現したのはイギリスだった。燕尾服を纏ったその紳士は、腹の底が見えない笑みを浮かべている。その後ろには、アメリカやソ連、中国といった連合国の面々が警戒心を露わにして続いていた。
「ほう、連合の連中か。……おい、この『獏』とかいう娘、なかなか面白いぞ」
ナチスは鈴を背に隠すようにして、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべる。
日帝やイタリアが背後に控える枢軸の陣形に対し、連合国は冷静に状況を分析し始めていた。アメリカが頭を回転させ、ソ連が戦車のように重苦しい威圧感を放ち、中国が「何やら珍しいものがいるネ」と鋭い眼光を向ける。
鈴は四方を巨大な国々の視線に晒され、恐怖で過呼吸になりそうだった。しかし、彼女の心は知っていた。この戦場に渦巻く、凄まじい悪夢と憎悪を。
彼女は震える手で小さく祈った。どうか、この争いが少しでも鎮まる夢を――たとえ一瞬でも、彼らに安らぎの夢を見せることで、その鋭い牙が少しでも鈍ることを願って。
「皆様……お争いは……おやめください……」
小さな銀色の獏は、歴史を揺るがす強大なる国家たちの間で、ただ一人、無力な祈りを捧げ続けていた。第二次世界大戦という巨大な夢の中、彼女の存在は、やがて来る終焉の行方をわずかに変える楔となるのかもしれない。
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食べれるすぽんじ@🐢投稿
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コメント
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うわぁ…!第1話からすごい世界観!🦋✨ ナチス・ドイツが国として擬人化されてるの、めっちゃ衝撃的…!しかもその道端で小さな銀色の獏ちゃん(天乃鈴)がぶつかっちゃう展開、運命の交差すぎて鳥肌たったよ😭💕 「夢を食べてる」って設定がもうエモすぎるし、戦時下で一国を相手にするには小さすぎる存在なのに、それでも祈る姿が切なくて…。イギリスの登場シーンも紳士っぽくてカッコよかった!続きどうなるの…?早く読みたい!!