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十一時五十五分。予約したフレンチレストランの入り口前で、僕は倒れそうになっていた。
(……おかしい。仕様書には、こんな過酷な耐久テストの予定はなかったはずだ)
視界が少しチカチカする。脳内CPUは熱暴走を通り越し、もはや冷却ファンすら回る気力を失っていた。原因は明確だ。今朝、幸せな目覚めと共に彼女から提示された、『誕生日特典(おかわり)』という名の過負荷である。
「陽一さん? 顔色が白いですよ? 大丈夫ですか?」
隣で僕の腕を掴む白石さんは、恐ろしいほどに輝いていた。 昨夜と今朝の激闘(?)を感じさせない、瑞々しい肌。太陽を味方につけたような眩しい笑顔。 吸い取られた僕と、チャージされた彼女。これが、男女のスペック差というやつだろうか。それとも白石さんだからか?
「……白石さん。……正直に、言ってもいい?」
「はい、なんですか?」
「……お腹が空いたというより、精魂尽き果てたというか……」
筋トレで多少は体力がついたはずなのに、体中が『リソース不足』だと警告を鳴らしている。白石さんは聖母の顔をした小悪魔――そんな、とびきり愛らしくて恐ろしい笑みを浮かべ、僕の腕をぐいっと引き寄せた。
「大丈夫。大丈夫。私がしっかり元気にしてあげます! ……ランチの後は、お買い物も、それから……夜のお祝いの予定も、まだまだ残ってるからね♡」
「……が、頑張ります。意地でも完遂してみせます……」
「期待してますね♡」
彼女の楽しげな追撃に、僕の意識は再び遠のきかけた。背景(モブ)から主役(ヒーロー)への昇格の代償は、想像以上に甘く、そして過酷だった。
風宮 むぅまろ(̨̡ ¨̯