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風宮 むぅまろ(̨̡ ¨̯
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芙月みひろ
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運ばれてきた料理を前に、僕は思わずフォークを止めた。
牡蠣のグラタンに、ブロッコリーとトマトのサラダ。そして、しっとりと焼き上げられた鶏むね肉のグリル。
「……あの、白石さん」
「はい、なんですか?」
「前から気になっていたんだけど……僕、やけに牡蠣やブロッコリー、鶏むね肉ばかり食べさせられている気がするんだけど、気のせいかな?」
僕の指摘に、白石さんは一切動じることなく、むしろ満面の笑みで答えた。
「気のせいじゃないですよ。健康にもいいですし、なにより――」
彼女は座ったまま、少しだけ顔を僕の方へ寄せた。 そして、周囲に紛れるような小さな声で囁く。
「……私、陽一さんに、元気に(……とくに、夜)なってほしくて♡亜鉛にアルギニン、男の人には必須の栄養素たっぷりですよ? ふふ、もしかして……今の今まで、気づかずに食べてたんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、僕の脳内でこれまでの食事ログが高速でフラッシュバックした。
デートのたび、勧めてきたメニューの数々。
(……嘘だろ。今日だけじゃない。僕はずっと、彼女に物理レベルで『餌付け』されていたのか!?)
知らぬ間に胃袋を掴まれ、スタミナを管理され、彼女好みへと最適化されていたんだ……。
「これからも、い〜っぱい食べてくださいね♡」
「……っ、白石さん!」
真っ赤になる僕をよそに、彼女は「はい、あーん」と拒否権を許さないトーンで追い打ちをかける。
「ほら、逃げちゃダメですよ? 私、今夜もすっごく期待してるから♡」
強制的に口に放り込まれた牡蠣の劇薬みたいな味と共に、僕の脳内には『今夜の予定』という名の高負荷なタスクが次々と強制予約(キャンセル不可能)されていった。