朝焼けの瞳に、白銀の乱雑に切られた髪、細く白い身体。
其の全てが愛おしくて、堪らない。
其の全てを僕のモノに、
否、僕のモノだ。
誰にも渡さない。
邪魔をする奴は全員消す。
例え、
どんな手を使ってでも。
じわじわと肌に伝わる熱。
煩く泣く蝉共。
本当、夏って嫌い。
チョコレヱトも直ぐ溶けるし、
兎に角暑い。
でも、君は好き。
隣で風にサラリと髪を吹かれ、擽ったそうだ。
可憐。
一生懸命黒板を見ながら板書している。
綺麗。
ふわぁと口を開けて欠伸をする。
素敵。
此方の目線に気付きにこりと微笑む。
好き。
……では教室のハジを見てみよう。
おや?俯いてるくらぁい人が居る。
栗色のふわふわした髪。
恨めしい。
最早 “ 半袖 ” という概念をぶち壊す服の下の包帯。
怨めしい。
無駄に整った綺麗な顔。
ウラメシイ。
さて問題です。
何故僕は “ 彼奴 ” を嫌っているのでしょうか。
答えは、
このモノガタリの最期に。
「敦くん」
「へっ、あっ、だざい、さん……」
「此の前は、あんな態度とって御免ね」
「いっいえいえ!あの時、機嫌が悪かったんですよね……!」
「……うん」
少し、苦しそうなのは、
気の所為だろうか?
此処はあまり日が当たらない図書室なので、
太宰さんの顔は暗くてよく見えない。
人も居ない。
生憎、今乱歩さんは職員室に呼び出されている為、
此の図書室に二人きり。
何処と無く気まずい。
「敦くん」
「はっはい!?」
急に声を掛けられ、可笑しな声を出す。
「ねえ、私の事嫌い?」
「え?」
「私の事、」
「憶えてる?」
「……え?」
意味が判らず、同じ言葉を繰り返す。
憶えてる?だとか、そんなの知らない。
太宰さんとは新学期が始まって初めて会った、
初めて、
初めて?
あれ?だったら如何して。
先生は転校生の事なんて何も説明していない。
つまり彼は新学期前から教室に居るはず。
けれど、僕の記憶には太宰さんの事なんて欠片も無い。
一体何故……
「敦〜!!」
「!」
何時もの声が聞こえた。
安堵しスクリと立ち上がる。
其の時、太宰さんに腕を掴まれた。
「行っちゃ駄目だよ 」
「はい……?」
「彼の元には行ってはいけない」
「何でですか?」
何故なのかと問う。
太宰さんは、諦めたのか、
それとも絶望したのか。
そっと目を閉じ、「……なんでもない」
と呟き消えていった。
「敦?」
「あっ!ここに居ます!」
「もぉ、何してたのさ」
「一寸本を探していまして……」
あはは……と苦笑いをし誤魔化す。
「ふぅん……」
其の笑いを見て、彼は何を思ったのか。
僕には到底判らない。
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