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「遠野さんの仕事に対する姿勢とか……。実は気になっていたんだ。でも遠野さんには彼氏がいて、なかなかプライベートな部分では話しかけられなかった。もし良かったら俺と付き合ってほしい。この年だし、真剣に。結婚を前提として」
え……。結婚を前提に?
私が尊と付き合っていた頃、夢見ていた結婚という二文字も今となっては現実味を感じられなかった。
騙されているんじゃないだろうか?
この人だって、結局は浮気とかするんじゃ。
仕事している姿は真面目だけど。
「あの……」
返事に困っている私に
「返事は今度でいいよ。別れてからそんなに時間も経っていないみたいだから。真剣に考えてほしい」
そう言って彼は、会議室から出ていった。
「はぁ」
もう少しで休憩時間も終わるのに、黒瀬さんの告白が頭から離れずにいた。
「最近、先輩ばっかりズルいです!」
黒瀬さんに呼び出された理由を何度も問い詰められ、華ちゃんには告白されたと正直に話した。
「春人さんにだって頭触られるし!流星さんにだってポンポンされるし!」
「っ…!」
流星という言葉を聞いて、思わず飲みかけていたお茶をこぼしそうになる。
「黒瀬さん、会社でも人気なんですよ。まぁ、私はタイプじゃないですけどね!」
うん、黒瀬さんの容姿は彼女のタイプではないだろう。
「告白、どうするんですか!?」
「断ろうと思ってるよ」
「えー!もったいない!」
そんな会話で昼休憩で終わってしまい、気づいたらもう帰社時間だった。
今日は、残業もなくて良さそうだし帰ろう。
夕ご飯、何がいいかな。なんか、疲れちゃった。 瑞希くんが喜んでくれるもの作ってあげたいな。
・・・〜〜〜・・・
「流星!ねっ、今度、いつ同伴してくれる?行きたいお店があるの」
露出の多い服。濃い化粧。常連のお客さんは、俺の肩に頭をのせていた。
「いつが良い?どこに行きたいの?」
「新しくできたカフェ!なんかね、スイーツが美味しいんだって。写真撮って投稿したいの!」
彼女が行きたいと言っている店を仕事用携帯で検索をする。
「ここ?」
画面を見せると、彼女はさらに俺と身体を密着させてきた。
「そう、ここ!」
オープンしたばっかりだから、混んでるだろうな。
「わかった。予約するから、また時間教えて」
「やったー、嬉しい」
満面な笑みを浮かべる。普通の男だったら可愛いと思うんだろうな。
「じゃあ、ご褒美にシャンパンお願いしてあげるー?」
「いいの?無理しないでね。ありがとう」
ヘルプに伝えると、コールが始まる。
こんな毎日だ。
彼女は注文したシャンパンを一口飲み、俺にも渡してきた。
はぁ、これは一気しなきゃいけないやつだな。
ゴクッと一気に飲むと、歓声があがる。
カクテルグラスなので、あまり量は入っていないが酒はできるだけ飲みたくない。
帰って葵に心配かけたくないし。
そんな中、ふと春人のテーブルを見た。見たことのある女の子が座っている。
あれって、葵の後輩の子じゃん。
また来たのか?
どうして春人、俺に教えないんだよ。
コールが終わり、静かになる。
「ごめんね。ちょっと席外す」
自分のお客さんに声をかける。
「しょうがないなぁ。でも人気キャストさんだもんね!また帰ってきてね」
「うん」
こういう理解してくれる子は助かる。
<こんなにお金かけたのに!>
<どうしてすぐ行っちゃうの?>
なんて、怒鳴られることも多いから。
「失礼します」
春人のテーブルに座る。春人は俺を見て、一瞬変な顔をしたが、お客さんの前ではいつもの王子様スマイルに戻った。
「あー流星さんだ!また来てくれたの?華、嬉しい!」
嫌われてはいないみたいだな。
「良かったら、ご一緒してもいいですか?」
「もちろん」
彼女にはわからないように、春人を肘でつついた。
俺の意図を察してか
「今日もこの間の先輩さんは、来たくないって?」
ああ、先輩?と彼女はカクテルを飲みながら呟く。
「先輩はもう来ないと思いますよー。てか、聞いてくださいよ!なぜか先輩モテ期なんです!」
私だっていろいろ頑張っているつもりなのになと彼女は少し悔しそうだ。
「新しい彼氏でも出来たの?」
春人が問う。
「ううん。違います!今日、先輩、会社の人に告白されたんです!結婚を前提にって!!しかも会社で人気の男の人なんですよっ。前から、先輩のこと好きだったらしくて。まぁ、先輩、頑張り屋さんだし、性格良いし、胸も大きいし」
「……っ!」
俺は飲もうとしていたウーロン茶をこぼしそうになった。
春人が俺を肘でつついた。
落ち着けってことか。
「それで?付き合うことになったの?」
「返事は今度で良いって言われたみたいで。どうなんですかね?」
葵の幸せを考えたら、将来が安定している男と付き合った方が良いだろう。
上手くいけば、そのままスムーズに結婚って流れにもなるかもしれない。
でも俺は諦めたくない。
「ただ……」
彼女の顔が険しくなった。
「ただ……?」
「あんまり先輩を怖がらせたくなかったし、ただの噂話かもしれないから、葵先輩には言わなかったんですけど、その告白してきた黒瀬さんって、なんか付き合ったらモラハラ?とかDVとか変態って噂も一時流れたんですよね。実際どうなのかはわからないんですけど」
やばい、すげー心配。
思わず春人と目が合う。
「でもさ、付き合ってみなきゃどういう人かってわからないよね?俺だって、モラハラ男かもしれないよ」
春人が彼女の手を握る。
「えー?春人さんは絶対違いますよ」
彼女は嬉しそうな笑顔を向けていた。