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第11章:淡き想いと、黒き胎動
セレナの回復を待つため、ゲズたちは一時、レファリエの辺境にある小さな村で身を隠していた。
星の夜は静かで、空にはかつて失われた星々の名残が揺れている。
⸻
―村の静寂、心のざわめき―
「セレナ、これ……薬草、合ってるか?」
ゲズは不器用に摘んだ植物を手に、恥ずかしそうに見せる。
「……それ、ただの雑草よ」
「……マジか」
笑い合うふたりの間に、以前よりも柔らかい空気が流れる。
「前のあんたは……もっと怖かった」
「え?」
「力に飲まれそうで、話しかけづらかった。
でも今は、ちゃんと、私に話してくれる」
ゲズは火を見つめながら、言葉を探す。
「セレナがいると、俺は落ち着くんだ。
戦いのときも、夜も、変な夢見ないし……」
「……私も、同じ」
目が合う。
どちらも視線を逸らせないまま、火の光に頬が染まっていく。
だが――ふと、地面が微かに揺れた。
⸻
―兆し―
その揺れは一瞬。
だが、ゲズの雷紋がほんのわずかに反応していた。
「……嫌な予感がする」
セレナは空を見上げてつぶやいた。
「何かが……動き始めてる。
でも、今だけは……この時間を大切にして」
ふたりの手が、そっと触れ合う。
⸻
―虚空の監視者―
その様子を、遠くの暗い星雲から誰かが見ていた。
「……情など、無意味だ」
黒き騎士――レル=ザイオス。
目は開かれ、鎧はより冷たく重厚に変わっていた。
「彼を壊すには、まず“その心”を砕く」
月の裏にて、鎧の剣が静かに抜かれた。