テラーノベル
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小学生の頃。
二人は、毎日一緒だった。
『くっさん、今日も川行く?』
「行く。宿題終わったらな」
『絶対サボるでしょ』
「ローレンがうるさいからやる」
『それ褒めてる?』
夕方まで走り回って、帰り道は並んで歩いた。
「なぁ」
『何』
「ずっと一緒だよな、俺ら」
『当たり前だろ』
「中学も同じだし」
『高校も一緒だろ』
「……だよな」
でも、その約束は守られなかった。
――――――――――――
「……引っ越すの?」
母親の言葉を聞いた日の夜。
『……ほんとに?』
「……うん」
『どこ』
「遠いとこ」
『……なんで』
「分かんねぇ」
沈黙。
『……いつ』
「中学入る前」
『……そっか』
ローレンは、ぎゅっと拳を握る。
『……忘れな、いでね』
「忘れねぇよ」
『……手紙書いて』
「書く」
『電話もして』
「する」
『……約束だからな』
「約束」
最後の日。
駅のホーム。
『……行かないで、』
「行くしかねぇだろ」
『……ずるい』
「……ローレン」
『……絶対、また会うから』
「……ああ」
電車のドアが閉まる。
ローレンは、動けなかった。
――――――――――――
それから、10年。
街の駅前。
『……あ』
人混みの中で、見覚えのある銀髪。
『……くっさん?』
振り向いた男と、目が合う。
「……ローレン?」
『……ほんとに?』
「……変わってねぇな」
『そっちこそ』
一瞬、言葉が詰まる。
「……久しぶり」
『……10年ぶりだな』
「……急にいなくなってごめん」
『……謝るな』
「……連絡」
『途中から来なくなった』
「……俺が悪い」
『……寂しかった』
「……俺も」
沈黙。
人の流れだけが、二人の間を通り過ぎる。
『……今、何してんの』
「仕事」
『……そうか』
「ローレンは」
『……同じ街で働いてる』
「……偶然すぎるな」
『……運命ってやつじゃね』
「言うようになったな」
『10年分だ』
少し笑う。
『……なぁ』
「ん」
『あの時の約束』
『覚えてる?』
「……ずっと一緒、だろ」
『……忘れてなかったんだ』
「忘れるわけねぇ」
ローレンは一歩近づく。
『……もう』
『どこにも行くな』
「……行かねぇ」
『……今度こそ』
「今度こそ、だ」
夕方の光が、二人を照らす。
離れていた時間は長かった。
でも。
『……また、並んで歩けるね』
「……ああ」
10年分の空白は。
これから、一緒に埋めていけばよかった。
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