コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ども、かんおです。
みなさん侵夜ラジオ聞きましたか?自分はYouTubeでの同時視聴のところ(無料パート)だけしか聞けませんでしたけど、面白かったです。
有料会員なりたいけどなあ…。ラジオとかその辺に疎くてできてません。
⚠︎これはwrwrd様の名前をお借りした二次創作です。ご本人様とは一切関係ございません。
⚠︎BLです。苦手な人はブラウザバック。閲覧は自己責任でお願いします!
テレタビーズ(軍パロ)
…
紙に書かれて普段見えないその顔が、いったいどんな表情をしているのか考えるのがいつしか癖になっている事に気付いた。
全体の指揮をとる透き通った声があたりを震わせるたびに、鼓動がわずかに早くなる。
戦争への恐怖などではない。これは…何だろうか。
戦闘の際に滲み出る聡明さと諦めの悪さが、魅力的で。自分にはないものばかり、持っているのが、こればっかりはなぜか妬ましくもなくて。
自分でも薄々気付いている。
お前はあいつが好きなんだろと、俯瞰して自分を見ているもう1人の自分が語りかける。
うるさい。
この気持ちは、しまっておかなきゃいけないんだ。
自分にとっても、ロボロにとっても。
「好きだよ」
眠かったんだ。
連日の戦闘に、膨大な量の書類整理。
偶然通りかかったロボロに助けを求めて、書類整理を手伝ってもらっていた最中だった。
「……は」
ピタリと音が消えた。
2人とも手元なんて一切動いてなくて、呼吸さえしてるか怪しい。
「…ちが、あの……せや、この前会った女が…」
「女子供はここしばらくは避難させとるやろ」
「…じゃなく、て、………」
「…大先生、昔よりも嘘つくの下手になったんとちゃう?」
は、と鼻で笑われる。
…あ、これは流そうとしてる雰囲気。
(これで流されたら次いつ言えるん?)
なんて言おうかわからなくて、一歩踏み出した足がそこで止まる。
ロボロは不思議そうにこちらを見て、じゃあ俺戻るからと横を抜けようとしてくる。
待って。言わないと、ここで。今。
そんな気持ちが先走って、何をどう言うか全く考えないまま無計画にロボロの手首を掴んだ。
「あ?なんや、用があるんなら早くしてくれんか?俺は多忙なんや」
「その、だから…、俺本当に」
ぱしっ、と乾いた音が響いた。
振り払われた手がピリピリとわずかに痛む。
状況をすぐに飲み込めなくて、顔を上げれば冷たい、何を考えているかわからない瞳がこちはを見つめていた。
「そういう嘘、だるいからやめえや」
「なんでそんな頑なに…」
ふと、部屋の隅にあるカレンダーを思い出した。
ああ、そういえば今日は我が国の建国記念日だ。
建国記念日ということは、…エイプリルフールだ。
嘘をつく日。なんて、なんて残酷な。
「…じゃーな」
「ロボ、」
やや駆け足で部屋を出てしまったロボロには、もう声は届かないだろう。
追いかけていくべきだっただろうか。
そんな勇気はなかった。自分が認められる未来がどうしても見えなかった。
窓の隙間から、西日が明々と降り注いでいた。
ロボロの現場の異動が決まったのは、その後すぐだった。
・
大先生のことは、結構好きだった。
ヘラヘラしてて掴みどころのないヤツだし、めんどくさいヤツだけど。良いヤツだし、気さくで明るくて、戦争の最中だって大先生がいるだけでワントーン明るくなっていた。
だから、嫌だったんだ。
あんな悪趣味な嘘をつくようなヤツだとは思ってなかったから。
人の感情を弄ぶようなヤツだとは思ってなかったから。
最後、手を振り払ったときの顔が頭から離れなかった。
心の底から傷ついたような顔。
(なんやねん。俺の方が傷ついてんねんぞ)
列車がごとりと一度揺れて、動き出した。
窓の外をぼーっと眺めていれば、軍服の男の姿があることに気づいた。
「おいロボロ‼︎」
「…は⁈大先生⁈」
なんで、あんな最悪な別れ方したのに、なんでお前が来るんだ。
大先生が大きく腕を振り上げて、何かを投げた。
大きく弧を描いたそれは見事に俺の目の前の窓から車内に入ってきた。
なにか錘のようなものを紙で包んだものだった。
「っっばーーか!!!」
大先生の精一杯出したであろう声が小さく聞こえる。
もうずいぶん遠くになってしまって、どんな顔をしているかはわからない。
さぞ笑っているのだろうか。
あんな嘘っぱちで怒る小さいヤツだと嘲笑っているのだろうか。
手元の投げられたものを開けば、中に入っていた錘はただの石だった。
「なんだ、ただのイタズラかよ…ん?」
包んであった紙に小さな文字で何かが書いてある。
『午後だっただろうがよ馬鹿』
「…なに?」
午後?何の話だ?今は明らかに午前だし。
…あの日?
エイプリルフール…。午後?
「あ」
いつしか聞いた事がある。
エイプリルフールは午前中に嘘をついて、午後はネタバラシの時間。嘘をついてはいけない。確かそんな感じな事を誰かが話していた。
確かにあの日…あの話をした時は午後だ。
西日が印象的だった。
え?
じゃあ、あれは。
「嘘じゃな…」
事実に気が付いた正午、確実に伸びていく大先生との距離を嘲笑うかのような青空が広がっていた。
…
軍パロ。どうしても完璧に幸せにできない。