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夏祭り当日。
朝一番に真理子をショートステイの送迎車へ送り出すと、柊吾は「はぁ……」と短く、溜まっていた息を吐き出した。
平日の昼間に母がいないことには、デイサービスのおかげでこの一ヶ月ですっかり慣れた。けれど、今日は「夜も母が帰ってこない」のだ。
部屋に戻ると、いつもなら夕方には戻ってくるはずの母の気配がない夜を前に、独特の開放感と、そわそわとした落ち着かない高揚感が部屋の中に満ちていた。
瑞樹との待ち合わせは夕方。
それまでまだ何時間もあるというのに、柊吾は部屋の中を意味もなくうろうろと歩き回っていた。
(……ええと、夕方まで、何していればいいんだろ)
普段なら真理子の夕食の仕込みや薬の準備に追われている時間も、今日はすべて必要ない。ぽっかりと空いた自由時間を前にして、落ち着かない手つきで部屋を片付けたり、何度も時計を見上げたりしてしまう。
ふと、自分の服の袖口に視線が落ちた。
(……あ。シャワー、浴びておこうかな)
頭に浮かんだ瞬間、柊吾は自分の顔が一気に沸騰していくのを感じた。
瑞樹と二人きりで過ごす、初めての夜。
それを想像しただけで、心臓が肋骨を裏側から激しく叩くように打ち鳴らされる。
真理子の目を盗んでは、あれほど腰が砕けるような濃密でいやらしいキスをしてくる瑞樹だ。母の目が完全に存在しない今夜、一体どんな顔をして、どこまで自分に触れてくるのだろう。
(……って! 何を期待してんだ僕は!! 落ち着け、落ち着け自分……っ!)
思考の破廉恥さに気づき、柊吾は自分の両頬をパンパンと力任せに叩いた。
頭をぶんぶんと振って激しい妄想を振り払おうとするものの、一度暴走し始めた想像力は歯止めが利かない。
(いや待てよ……夏祭り……河川敷……人混み……暗がり……? もしかして、花火の音に紛れて物陰に引き込まれたり……!? 雑木林の奥とか、河川敷の橋の下とかに連れていかれて……外で、そんな……っ!?)
妄想が過激すぎる方向へすっ飛んでいき、一人で赤くなったり青くなったりしながら頭を抱える。ベッドの上でゴロゴロと転がっては「何考えてんだバカ!!」と枕に顔を埋めて身悶えした。
どうにか火照った頭と顔を冷まそうと、柊吾は逃げ込むように浴室へ向かった。
シャワーから溢れ出す冷たい水が、熱を持った肌を叩く。けれど、目を閉じれば昨夜の瑞樹のキスの感触と、過激な妄想が交互に蘇り、冷水すらぬるま湯のように感じてしまう始末だった。
(……しっかりしろ、僕。今日はただの夏祭りだ。普通に花火を見るだけかもしれないじゃないか……っ。いや、でも……万が一、いや、億が一ってこともあるかもしれないし……っ)
必死に自分へ言い聞かせながらシャワーを終えると、瑞樹が以前「似合うと思いますよ」と勧めてくれたネイビーの甚平に袖を通した。
鏡の前で何度も襟元を直し、ワックスで前髪の束感を整える。かつてはあれほど鏡を見るのが嫌だったはずなのに、今日だけは、瑞樹の目に映る自分を少しでも魅力的なものにしたかった。
YuNo_🖤💫🌎
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コメント
3件
わあああああああ!!!!マジでこの作品読んでる途中から胸の高まりが止まりません!!!!!( ;∀;)自分自身がこんなにドキドキしていいんでしょうか!?いいえ、ダメです((( あのカプを見届けるのが私の天命です(( マジで頑張って、休みながらも作品を書いてください!!✨️
かんなさん、第57話、読ませていただきました🌷 柊吾の「母がいない夜」を前にした浮き足立ちと、妄想で一人で大暴走するところがもう…! 彼の純情なのに熱量がすごい相反する感じが、細かい仕草や思考の描写でひしひし伝わってきて、編集者的にも「ここを書き写したい」と思える一話でした。シャワーのシーン、冷水すら効かないって表現、すごく好きです。瑞樹の目に映る自分を少しでも良く見せたいって気持ちが、ネイビーの甚平にワックスまで整える行動に現れてて、もう胸がきゅんとします。お祭り、どうなるんだろう…楽しみです!