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「何してるの?」

「えっ」


 鷹也が鏡に向かって変顔をしている。

 怖いんですけど……。


「その……練習を」

「練習?」

「え、笑顔の……」

「ひょっとして、ひなに怖がられないため?」


 こくこくと鷹也が頷く。

 はぁ……何をしているんだか。


「大丈夫でしょう。ひなもパパが出来たって言ったらきっと喜ぶわよー」

「……でももし怖がられたら? パパ怖い! とか言われたら俺立ち直れない……」


 いやいや、そのムンクの叫び顔の方が怖いって。


「もう! 着替え持ってきたから早くお風呂入って。大輝のパジャマだけど体型似てるから大丈夫でしょう?」

「勝手に借りていいのか?」

「うち用に私が買っておいたものだからいいのよ。また鷹也のも買っておくわ」


 突然泊まることになったからなんの用意もないのよね。下着とか歯ブラシはさっきコンビニに行って買ってきたけど。

 

「……俺、ここ用とかいらない」

「え?」

「今朝、藤嗣寺へ行く前に不動産屋へ行ったんだ。まだホテル暮らしだから、住む所を探しに」

「……」

「仮押さえしたけど、断ろうと思ってる」

「断る?」

「ここで一緒に住みたい。だって俺たち結婚するんだよな?」

「そ、そうだけど」

「ダメなのか?」


 そっか。結婚承諾したんだから、これから一緒に住むのは当たり前か……。

 でも、今まで祖母とひなの女3人暮らしだったから緊張するな。

 もちろんそんなこと言ってられないけど。


「……ダメじゃないよ。でも、ここでいいの?」

「ここでって……杏子とひなにとっては大事な場所じゃないのか?」

「確かに私はもう15年近くここに住んでるけど、だから結構古いと言うか……。新婚生活には向かないかも」

「新婚生活……」

「いやっ、も、もう子供もいるんだし、新婚って感じじゃないかもしれないけど」

「……子供がいたって新婚は新婚。杏子がそう言ってくれるのは嬉しいよ」


 なんでそんなにニヤニヤにしてるのよ。

 一応気を使っているんだからね!

 こんな古いマンションでいいのかなって。

 ここは鷹也が以前近くに借りていたマンションとは比べ物にならない、とっても普通の(庶民的な)築15年になるマンションだから。それに……。


「ここ、お父さんの名義なの。お父さんが知美さんと結婚する時に、祖母と私を家から追い出す形になるのがイヤで、新築マンションを買ってくれたの。祖母も亡くなったし、私たちが結婚するなら父に相談しないと……」

「お父さんのマンション……そっか……」


 あれ? 鷹也がまたムンクになりつつある。


「まだ挨拶も済んでないし、俺、泊まってもよかったんだろうか……」

「泊まるくらい……」

「明日挨拶に行けないか?」

「明日⁉」

「本当は今日行きたかったくらいだ。長い間杏子をシングルマザーにさせてしまったんだ。一発どころか何発殴られてもおかしくない」

「物騒なこと言わないでよ。……わかった。知美さんに聞いてみる」


 夜の12時間際だったというのに、知美さんにメッセージを送ったらすぐに既読になった。


『大丈夫よ! お父さんのことは私に任せて! あ~楽しみだわ~』


 とメッセージが返ってきた。

 『大興奮!』と目をハートにしたうさぎのスタンプと共に。


「わぁ……。知美さんめっちゃ興奮してるわ……」

「なんか、頼りになりそうだな」

「ハハハ……知美さん若いからね。それに、知美さんがいなかったら……」

「……?」


 私は妊娠に気づいたときのことを鷹也に話した。

 知美さんのアシストがなかったら、明るい気持ちで出産を迎えられなかったかもしれないと。


「本当に感謝してるの、知美さんには」

「……ああ、俺も感謝しかない。杏子にも……」

「え?」

「ひなを産んでくれてありがとう」

「鷹也……」


 鷹也が私を抱きしめる。


「これからはずっと傍にいるから。杏子のこともひなのことも俺が守りたい」

「うん、うん……」


 幸福感と、それを上回る圧倒的な安心感が私を襲う。やっと気づいた。私、不安だったんだ。私、寂しかったんだ。

 久しぶりの抱擁は私を弱くする。

 もう、この温もりを手離せない。


 

入れ替わったらバレました!

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