ピンポーン。
その音にひどく反応してしまった。
宅配便なんて頼んだっけ。
もしかしたら、もしかしたら、開けたら、めんがいるかもなんて、
なんて、
…
「………!」
こえ、出なかった。
だいすきな人がそこに立ってた。知ってる。知ってる、この、身長。体型。服装。
なーんにも、変わってない。
「………ほんとにめん?」
「…ほんとに俺だよ!!」
いる。いるんだ、そこに。
胸がいっぱいになる、ってのは、こういうことを言うのかな。わかんないや。
見慣れた肩のラインが、呼吸に合わせて少しずつ動くのが、すごく懐かしい。やっぱり、俺はこの人が好きなんだなぁ、って、思う。
「…おかえり…………」
「うん。ただいま。」
すこし、泣きそうになる。
このひとと一緒になって、一緒に住んで、身体を半分こするようになってから、俺はひどく欲張りになったのだ。今、はじめて、気づいた。
「……さみしかった。」
とん。
暑い胸板に軽く顔を埋めて、静かに、息を吸った。めんの匂い。甘くて、苦くて、わからない、だけど今日はすこし、違う。洗剤が、違うものね。
「…あらら、寂しくなっちゃった?」
とくん、とくん。心音。
「………うん。」
ちょっとだけ素直になれる。
あなたは、あなたが大好きな俺の髪をくしゃりと撫でて、そのまま腕を回して、いっぱいの温かさで冷えた身体を包み込むのだ。
「………。」
桁違いの包容力を持ってる。このひとは。
「……すぅ…、……………。」
もいちど、ゆっくり深呼吸をすると、なんとなく、受け入れられそう。めんってのは、当然のように俺の隣にいるコイツのことだ。
それが、ときめきよりはたったの安心感みたいなかんじで、うれしい。
「……ごめんね。」
「いい。……でも、もう、こんな急に離れんな、よ。」
「もちろん。」
事情とか、ほんとは色々聞きたかったのに、なんだか全部どうでもよくなってしまった。
そこにめんがいるだけでいいや。
「………あの…いや、あ~……」
「なに?」
「…すっげぇ、恥ずかしいこと、言う、よ。」
心音が速くなっていくのが、面白い。
「おん。」
「…あ、うん、あのさ。…俺も、おんりーが足りなくて、………あの、今、うわぁ、すっごい、嬉しい。充電。」
…震えた声に、思いっっきりときめいてしまった。
「………………ばか。…俺は、モバイルバッテリーじゃないし。…………」
「うん。うん、はは、ん。ソーリー。」
ぎゅ。ぎゅー。
「………。………………、…。」
生きてる。生きてるなあ。
はじめて、雪っていいな、って思った。こんなにあったかい人がいるんだ。
…今日は、いっぱいいっぱいいっぱい、たくさん、めんを、愛してあげる日にしよう。
「……お疲れ様。めん。
今日は、美味しい豚汁作ったよ。」
今日も明日も明後日も、めんは、当然のように俺の隣にいてね。
コメント
2件
とっても好きです…(;;)♡♡♡