「さて、美姫さん」
啓悟くんが私に向き合って言う。
外から聞こえる怒鳴り声や罵声____
なにかが壊れたり崩れたりする音____
降りしきる雨の音____
「もうすぐ、緑谷くんたちがここに帰ってきます」
『うん』
啓悟くんは____
「ここに避難してきた一般市民の人達が緑谷くんに対して何をするか分からない
もしかしたら暴動が起きるかもしれない。
俺はそれを、今外にいるエンデヴァーさんたちと止めてきます
最悪の場合、、、」
一般市民でさえも手を出さないといけないかもしれない、そうボソッと言う。
分かってる____
分かってはいるけど____
「美姫さんは、巻き込まれたら危ないのでここに居てください」
やっぱり。
そう、言いに来たんだよね?
そう、言いにわざわざ部屋まで来て止めに来たんだよね?
けど。
『いやだ』
私が言うと啓悟くんは
「へ?」
と、びっくりしたような顔をして言う。
『いやだ!私も止めに行くんだ!
出久くんに…会いに行くんだ!!!』
なんだか自分が思っていたよりも感情が溢れてしまって、涙が込み上げてくる。
『よく、頑張ったねって
大丈夫だよって…会って…言ってあげたいんだ』
啓悟くんは険しい顔をする。
そして窓の外を見る。
「こんな状況でどうやって…」
そう呟く。
けれど大丈夫だよ、きっと。
『さっきね、A組のみんなが来たんだ』
「え?」
『みんなの姿が本当に頼もしくて…
きっとみんななら出久くんを受け入れてくれるように必ずできるよ!!』
そう言ってすぐ。
「えっ!?美姫さん!」
啓悟くんの手からスっとすり抜け
私は、妊婦だから走ったらあれなんで…
超高速早歩きで
『だから出久くん…みんなのところ行ってくるね!』
と廊下を走る。
「ちょっ美姫さん!待って!」
パタパタとまだ1部しか生えていない羽をしながら啓悟くんは軽く飛びながら追いかけてきて
私を抱き上げ____
地面から足が浮く____
『きゃぁあ!?』
え!?もう飛べるの!?大丈夫なの!?!?
『きゃああああ』
久しぶりで、色々と怖くってめっちゃ叫んじゃう私。
スーーーーーっと高くは無いが、
廊下、階段____
を
飛びながら移動していく。
怖くて足がバタバタ動いているのを見て
「あはは!美姫さんビビりすぎですよ〜」
と笑う啓悟くん。
『こわいよ〜〜〜』
そう、言うと
スピードがゆっくりになり
「大丈夫、安心して。
ほら、足を出して。歩き続けて」
私の両手を持ち、言う啓悟くん。
『あっああ〜!!』
「ふふ、上手です」
空中を歩いてるみたいだ!!
これって…
これって…
ハウルの動く城の、ハウルとソフィの空中散歩みたいじゃん!?!?!?
みんなが集まっている場所の入口前の最後のトンネルに着く。
『啓悟くん…ありがとう』
止めに来てくれたんだよね
けど私…
『ごめんなさい…』
と啓悟くんの方を見ると
クシャッ
『あぇ!?』
啓悟くんに頭をクシャクシャと撫でられた。
そして____
「全く世話焼きですね…美姫さんは」
とニッコリと笑って
「そういう所…好きです」
チュ
と私の頬にキスをした。
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