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#シリアス
耐えられなくなって、また前髪を引っ張って顔を隠そうとする僕を見て
天馬くんは、クシャッと顔を綻ばせて笑った。
◆◇◆◇
駅のベンチで泣きじゃくり、張り詰めていた糸が切れたあとの静寂。
遠くで鳴る電車の発着音だけが、現実との細い繋がりを保っていた。
僕は膝の上で、まだ震えの残る指をぎゅっと握りしめる。
「……あの、天馬くん」
「ん?」
隣に座る天馬くんが、壊れ物を扱うような優しい声で応じる。
「その…最近、天馬くんに助けられてばっかりだし……」
さっきだって、パニックになりかけた僕を迷わず守ってくれた。
世界が歪んで見えたとき、大きな掌で耳を塞いで、ノイズを遮断してくれた。
過呼吸で酸素をうまく取り込めない僕を、落ち着くまでずっと、確かな体温で支えてくれたのだ。
僕は、彼に何も返せていない。
「……なにか、お礼させてほしい」
消え入りそうな声で告げると、天馬くんは少し困ったように眉を下げて笑った。
「いや、別に気にすんなって。俺が勝手にやってることだし」
「で、でも……っ!」
珍しく僕は食い下がった。
彼に寄りかかってばかりの自分が情けなくて、対等になりたくて。
「僕の気が、済まないから……っ」
必死な僕の様子に、天馬くんは「んー」と顎に手を当てて考え込む仕草を見せた。
少しの沈黙。
風が僕たちの間を通り抜けていく。
やがて、彼は悪戯っぽく、ふっと口角を上げた。
「……じゃあさ」
「?」
「期限とか決めないから、いつでもいい。……水瀬から俺のこと遊び誘ってほしいな」
「……え?」
あまりに予想外の提案に、僕は目を瞬かせた。
何か高価なものや、大層な恩返しを想像していたから。
「僕から……誘う、だけ?」
「だっていつも俺からじゃん。たまには、ね?」
天馬くんは首の後ろを少し照れくさそうに掻きながら、拗ねた子供のような顔をした。
「水瀬は俺のこと、自分から誘うほどには思ってくれてないのかなー……なんて」
「…そ、そんなこと思ってないよ……!でも…さ、誘っていいの?」
恐る恐る、確認するように尋ねる。
天馬くんは不思議そうに目を丸くして、迷いなく答えた。
「良いに決まってんじゃん。っていうか、俺は水瀬が話しかけてくれるのが一番嬉しいし」
「……!」
視界がじわりと熱くなる。
認められたような、居場所をもらえたような、そんな感覚。
「……うん。じゃあ、そうする。僕も、天馬くんともっと……話せるようになりたいから」
決意を込めてそう言うと、今度は天馬くんが驚いたように目を見開いた。
それから、逃げるように視線を逸らして、照れ隠しみたいに笑う。
「……それ、普通に嬉しいわ」
それから数日が経った、昼休みの教室。
窓から差し込む日差しは、夏の気配を色濃く孕んでいた。
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