テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
情など、復讐という研ぎ澄まされた刃には、ただの邪魔な錆でしかないというのに。
「効率的ですね」
アルベルトはいつものように、感情の起伏を一切排した無機質な声で、事務的に資料を整理していく。
その徹底した「機能」としての振る舞いは、出会った頃から変わらず、相変わらずのものだった。
すると、ダイキリがふふっと
まるで秘密の悪戯でも思いついた子供のように笑い、私たちの間にするりと割り込んできた。
「それにしても、お二人って本当に息がぴったりですよね」
「気のせいでは?」
アルベルトの即座の否定を、彼女は楽しそうに受け流す。
「えー絶対そうですって! なんだか、見ていて羨ましくなっちゃいます!」
「……羨ましい? 何がかしら?」
私が不機嫌を隠さずに眉をひそめると、ダイキリはカウンターに頬杖をついて
ニヤニヤとした好奇心に満ちた視線を隠そうともしなかった。
「だって、言葉がなくても次に何をすべきか分かってるみたいなんですもん。エカテリーナ様が資料を手に取れば、アルベルトさんが何も言わずにペンを差し出す。アルベルトさんが考え込むと、エカテリーナ様が当然のように答えを導き出す……」
「それは、単なる利害の一致による効率化よ」
「えーっ、そんな冷たいこと言っちゃって! 私には、お二人がとっても素敵な『お似合いのカップル』に見えますけどね」
ダイキリの無邪気な、それでいて鋭い一言が、静まり返った店内の空気に波紋のように広がった。
「なっ、ば、バカじゃないの? コイツはただの共犯者よ」
動揺を悟られまいと声を荒らげる私とは対照的に
アルベルトは微動だにせず、ただ静かにグラスを磨きながら答える。
その横顔は相変わらず鉄の仮面のように冷ややかだ。
「ごもっともですね。私は彼女の協力者であり、盾です。それ以上の定義は必要ありません」
「盾……ですかぁ? 騎士みたいな?!」
「騎士? そんな綺麗なもんじゃないわよ。第一、この男に人の心とかないでしょ」
「おやおや、失礼なことを言いますね。悲しいです…」
「嘘泣きしたってキモイだけよ」
アルベルトの棒読みの反論を切り捨てると、ダイキリはさらに含み笑いを深くして言った。
「ほら! 今みたいなの! どんなに言い逃れしようとしても無駄ですよ。二人で一緒にいる時の空気感とか、視線の交わし方とか……あきらかに普通じゃないですもん!」
彼女の指摘に、酒場の薄暗い照明の下でさえ、自分の顔が熱く上気していくのが分かった。