Side Bird
俺は足を止めて振り返った。さっきまで横や後ろにいたみんなは、なぜかずいぶん離れている。
「ねえ何してんのー?」
声を投げると、ジェシーが答えた。
「ちょっと待って、草食べてる。ここ美味しい」
そう言って、立ち止まっては地面の草をもぐもぐしている。
俺は歩いて戻る。
慎太郎は低木の果実をもぎとって食べ、大我に分けている。
樹は猫みたいに手を……じゃなくて前足を舐めてるし、高地は……どっか行った。
いつからかエサの時間に変わっていたようだ。
「この木いちごみたいなの美味いよ。北斗も食う?」
ふと声がして目を向けると、足元にハリネズミがいた。なんだ、そこにいたんだ。
小さい手に丸い木の実を持っている。それがなんとも愛らしくてたまらない。
「いや、俺はそういうの食べないから…」
言ったとき、それまで座っていた樹がいきなり立ち上がった。その視線の先には、何か白い物体が駆けていく。もしかしたらウサギだろうか。
追いかけて捕まえたらしく、前足を器用に使って食いついている。
「あぁ…」
俺は呆気に取られ、思わず声を漏らす。
すると、視界の隅で黒い生き物を捉えた。虫だと思った瞬間、本能的に身体が動き、勝手に翼が動く。
一瞬の間、思考は人間であることを忘れていた。
気づけば遠巻きに樹と俺を見ている4人。
「肉食だな…」
「慎太郎もだろ」
言い返してやると、「俺、なんか雑食のクマらしいんだよ」
どこから見つけてきたのか、どんぐりをぱくり。
「あー美味かった」
樹がやっと顔を上げた。血にまみれた口周りを、また足で拭っている。
「大丈夫だよ、お前らは食わないから」
ジェシーが「Hehe…そうだよね」と引きつった微苦笑を浮かべた。
それぞれ腹ごしらえを済ませたあとは、冒険の続きだ。
「うおっ、これ何? キノコ? 美味そう。食べられんのかな、食べてみようかな」
歩き出して早々、慎太郎が変わらないマシンガンの速さで喋り出す。
見ると、そばの木のもとにカラフルなキノコがひとつ生えていた。色んな色が混ざったマーブルみたいな、何とも不思議で危ういキノコ。
それに手を伸ばそうとする慎太郎を、後ろから高地が止める。
「やめとけって、見るからに怪しいだろ。野生の勘とかねーのかよ」
「でもすごい色してる。他の植物はいたって普通なのに。夢の世界から飛び出してきたみたい」
大我が感嘆の息を漏らした。
「そういう色こそ毒々しいって言うんだよ」と樹は呆れたように息をつく。
「ま、とりあえず先行こう!」
ジェシーが軽やかに駆け出して、みんなも慌ててついていく。
「ちょっと誰か! 俺載せてよ!」
そんな高地の声がして、慎太郎が笑って両手でハリネズミをすくい上げる。ジェシーの背中にそっと載せ、みんなで進み出した。
続く
コメント
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末ズにすくいあげられ背中に乗せられるダディ🦔… さすがにかわいすぎます笑