Side Lion
「今頃、人間の俺らってどうしてるんだろうね」
歩いている最中、急にジェシーが言った。
いつの間にか深い森に入り、日の光は届きにくい。太陽は高いはずなのに薄暗くて、ライオンのくせに少し怖かった。
「さあ。普通に仕事できてればいいんだけど」
楽観的なきょもに、俺は突っ込む。「じゃあ、『俺ら』がふたりずついるってことになるじゃん。そんなのありえないよ」
「確かに」
慎太郎も賛同する。
「…スタッフさんとか、心配してるかも」
北斗が言ったけど、そんなこと今の俺らが考えたってどうにもならないことはみんなわかっていた。とりあえず、早く元に戻る方法を見つけるのが何より重要だ。
「でもさ、俺ら以外の動物は喋らないよ? さっきから空飛んでる鳥とか、樹が食った小動物とか北斗の虫とか」
高地の声がする。
俺は何だかいたたまれなくまって、北斗を見やった。北斗もまた俺を見た。
「じゃあ、人間から動物になってるのは俺ら6人だけってことだね」
とジェシーはひとりうなずく。「でも、なんで俺らだけなんだろうね?」
その質問には誰も答えなかった。俺も全くわからない。しばらくの沈黙が続いたあと、どこか間の抜けたきょもの声が聞こえた。
「なあ、俺ねみーんだけど」
5匹は頭上を見やる。
コウモリは逆さで木に留まったまま動こうとしない。翼みたいに見える上肢も、抱きしめるように身体に巻きつけている。ほんとに寝るつもりか。
「俺も眠い」
今度は慎太郎が言った。そばの木の根元に座り、丸くなる。その姿は絵本から飛び出してきた”森のくまさん”のようで、何だか愛くるしかった。
「ねえ何だよー。みんな寝るのかよ。俺全然眠くないし」とジェシーは不服そうだ。
そう言われると、俺も眠たくなってきた。動物になってからまだ一睡もしていない。昼はライオンにとっては睡眠の時間なのかもしれなかった。
「…俺も寝るわ。おやすみ」
慎太郎の隣で身体を横たえると、
「おい樹もかよ。まあいいや、夜行性とかもあるしな」
北斗が言って、ジェシーも静かになった。
どこからか聞こえてくる鳥のさえずりや、木の葉が風に踊る音。その自然の声に耳を澄ませていると、いつの間にか意識は眠りの底へ落ちていた。
続く
コメント
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どうぶつになった6人が今後どうなるのか、すごく楽しみです🤩