テラーノベル
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豪雨が窓を叩く、首相官邸の最高機密室。逃亡用のヘリを待っていた内閣官房副長官・久徳公浩の前に、ドアを完全に破壊して勇一、輝道、篤、そして卓の4人が立ちはだかった。
「そこまでだ、久徳公浩。国家転覆、および数々の殺人教唆の容疑で逮捕する」
勇一が突きつけたのは、現職の官房副長官に対する逮捕状だった。久徳は眉ひとつ動かさず、デスクに深く腰掛けたまま、冷酷な笑みを浮かべた。そして、手元にある高級な万年筆を弄びながら、まるで愚かな子供に世界の仕組みを説くかのように、静かに口を開いた。
「跡部君。君がスパイなのはわかっていたよ。明日処刑する予定だったがね。運がいい小童だ…刑事、私は逮捕かね?……高橋勇一刑事、お前たちは何も分かっていない。私を裁けば、この国の裏の治安維持システムそのものが崩壊するのだよ。……お前たちの父親の時から、何も変わっていない」
勇一の身体が激しく強張る。
「10年前、お前たちの父親が何を追っていたか知っているか? 警察内部の裏金ではない。その裏金が、私の元へと流れてくる国家規模の循環システムそのものだ。だから消した。小山伸一を使ってな。あの男は、副総監の椅子と引き換えに、喜んで親友、あぁお前たちにとっては父親か、その人を撃ったよ」
久徳は愉悦に満ちた目で、勇一と輝道の兄弟を見つめた。
「朝原卓、お前が10年前に生き延びたのも好都合だった。お前の死を偽装して裏社会のマネーロンダリングの道具に仕立て上げたのも私だ。そして、それを監視するために亀井輝道、お前の元妻である佳奈子を送り込んだ。佳奈子は素晴らしい女だったよ。金と権力への欲望の塊だ。私が『朝原の金を奪い、輝道を消せば、お前を新しい裏の女王にしてやる』と囁くだけで、簡単に私の猟犬になった」
「……萌子は、小山萌子はどうして殺されなきゃならなかったんだ!」
勇一が怒りで声を震わせ、デスクを叩いた。久徳は冷たいため息をつき、能天気に首を振った。
「小山伸一の娘か。ほぉ。あれはとても素晴らしい『捨て駒』だった。小山が私を裏切らないための人質であり、佳奈子が暴走した時のための生贄だ。佳奈子が萌子を病院から突き落とした時、私は確信したよ。私の作ったシステムは完璧だとね。親の因縁で狂った兄弟が共喰いを始め、小山は娘を失って完全に私の犬になる。……全ては、この国を裏から正しく支配するための、些細な犠牲に過ぎないのだよ」
久徳は高笑いをした。自分の完全勝利を確信し、全ての陰謀を自ら饒舌に語り尽くしたその瞬間――卓がポケットから一台のスマートフォンを取り出し、画面を久徳に向けた。画面の中で動いていたのは、数百万人の視聴者数を示すカウンター。そして、日本中の大手マスコミと検察庁へ「今この部屋の会話」がリアルタイムで同時ライブ配信されているという冷徹な現実だった。「お前たちの情報操作システムは、すでに俺のハッキングで完全に無力化してある。この部屋に俺たちが入った時点でな」
卓が10年間の闇社会で培った技術のすべてが、久徳の牙城を崩した。
「……何、だと……?」久徳の顔から余裕の笑みが消え、初めて絶望に歪んで床に崩れ落ちた。輝道がゆっくりと近づき、久徳の手首にガチリと手錠をはめる。
「久徳。お前の時代はもう終わったんだよ」
コメント
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第16話、一気に読ませていただきました。久徳が自らすべてを語るあの高笑いのシーン、本当に背筋が凍るようでした。一人ひとりの過去を弄び、すべてを“自分のシステム”の一部だと言い放つ冷酷さ……そこから卓さんがスマホをかざす展開への切り返しが、もう最高に気持ちよかったです。10年間の潜伏が、あの瞬間のためにあったんだなと胸が熱くなりました。完璧な悪役の告白と、確かな正義の証明、本当に痺れる回でした!