テラーノベル
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廊下を歩きながら、シュメリと僕はバルトを探していた。
耳をクリクリして、鼻をヒクヒクさせる。
「あにゃーん」
バルトの匂いと声がする。
「どこに行くんだい、リンネ」
「にゃにゃ!」
シュメリ、こっちだよ。
先導するように僕は廊下を走った。
その先を、バルトとムスクが歩いていた。
「あにゃー!」
僕はバルトに飛びついた。
「おっと、リンネ?」
僕を受け止めたバルトが驚いた顔をした。
「クロノアとの話は、終わったのですか?」
ムスクが顎を撫でてくれた。
「うにゅ」
「リンネ、突然走ったら迷子になるよ」
シュメリが後ろから追いついた。
「お疲れ、シュメリ。なんで、リンネは猫なんだ?」
バルトがシュメリに声を掛ける。
「クロノアのもてなしが怖かったみたいでね」
シュメリが眉を下げて僕を眺めた。
そういえば、ずっと猫のままだった。
人の姿になるのを忘れていた。
「戻れなくなったわけじゃないんだな」
「そうではないようだよ」
人の姿になったほうがいいのかな。
でも、猫の姿でいると皆が撫でてくれるから、嬉しくて忘れちゃう。
今もムスクが喉を撫でてくれて、気持ちいい。
「それで、どうだった?」
バルトが神妙な面持ちでシュメリに問い掛けた。
「記憶は、もう心配ないようだ。魂に被っていた殻は消えたようだよ」
「そうか」
バルトが、ほっと息を吐いた。
「けど、魔花が……私といるだけで、開くのだそうだ」
シュメリの顔が暗い。
魔花は開いちゃいけないのかな。
「悪いことはありませんよ。魔力が上がり、身を守る術となります。これからもシュメリと共にあるなら、魔花は開くに越したことはないでしょう」
ムスクが丁寧に説明してくれる。
シュメリの表情が暗いのを心配したんだろう。
「クロノアの実験体にだけは、絶対にしない。魔術師団への入団は、断固拒否するよ」
「あぁ、そういう心配ですか」
ムスクが頭を抱えた。
「魔術の使い方なら、僕が教える。属性さえわかれば、それでいい」
「適正までは、わかりませんでしたか?」
ムスクの問いに、シュメリが言い淀んだ。
「……属性外だそうだ」
ムスクが、息を飲んだ。
「属性外?」
「うにゅ?」
バルトが首を傾げた。
僕はバルトの腕の中で、同じように首を傾げた。
「火水風土の自然四属性、光闇の二属性。合わせて六属性のうち、魔術師は必ずどこかに当てはまります。ですが時々、どれにも当てはまらない術者がいるのです」
「それは、危険なのか?」
バルトの問いに、ムスクが黙った。
「危険かどうかすらも、今はわからない。場合によってはクロノアの実験体のほうがマシな事態にもなる」
シュメリの顔が深刻だ。
バルトの顔が引き攣った。
「そんなこと、あるのか? 魔術が使えるだけだろ?」
「どんな魔術が使えるのかが、問題なのです」
ムスクがシュメリに目を向けた。
「クロノアは何か、言っていましたか?」
「時々、見せに来いと。適性を見定めるためだそうだ」
ムスクが考え込んだ。
「クロノアにしては、真面ですね」
「そうだろう。私も不気味に思った」
ムスクとシュメリが同じ顔をしている。
僕とバルトは、首を傾げるばかりだ。
バルトがシュメリに手を伸ばす。
銀色の髪を撫でた。
「考え過ぎるな。魂と記憶は落ち着いたんだろ。リンネは大丈夫だ」
僕は、ヒュッと息を飲んだ。
少し前の僕なら、シュメバルって叫んでいたけど。
今は、シュメリとバルトの間に違う絆があるのを知っているから。
(二人が仲良くなると、凄く嬉しいんだ)
僕はバルトの手に肉球を重ねた。
「にゃ、うにゃ」
大丈夫だよ、シュメリ。
僕はもう、シュメリやバルトから離れたりしないから。
「ふ……うふふ」
シュメリが、笑みを漏らした。
「私の頭を撫でるなんて、いい度胸じゃないか、バルト」
顔を上げたシュメリは、いつもの優雅な表情に戻っていた。
「俺のほうが、背が高いからな」
「理由になっていないね」
言い合いしながら、シュメリが僕を抱き上げた。
「そっちは、どうだったんだい。魔術は使えた?」
「こっちもこっちで、とんでもないことがわかりましたよ」
ムスクが苦笑する。
「新月の日、俺は能力が増えるらしい」
「増える? 減るとか、弱るではなく?」
シュメリが怪訝な顔をした。
「風属性に加えて、土属性が芽吹きました。殊更、植物と相性がいいですね」
「木こりだったからな」
バルトが、さらっと答えた。
「森はバルトにとって住み心地が良かったのでしょうね。魔種が求める場所だったのでしょう」
いわゆる、体質に合っているというやつだろうか。
風属性と土属性なら、納得だ。
(だとしたら、僕はなんだろう)
そもそもあんまり知識がないから、よくわからないけど。
僕も森で暮らしていたから、やっぱり森系なんだろうか。
「本当に優秀な魔術師を紹介していただきました。礼を言いますよ、シュメリ」
ムスクがシュメリに微笑みかける。
「自信がなければ、紹介などしないよ。団長殿」
シュメリが得意げだ。
バルトが褒められて、嬉しいみたいだ。
僕も嬉しい。
「さて、仕事は終わりかい?」
「今日のところは、終了です。新月の日は我ら魔術師にとり、本来は休息日ですからね」
「では、三人で帰ろう」
シュメリが自然にバルトを促した。
「ムスク団長、お疲れさまでした。リンネをよろしくお願いします」
バルトがきっちりとムスクに頭を下げた。
「ええ、勿論です。リンネ、また近いうちに」
「うにゃ!」
ムスクに前足を、こちょこちょされた。
シュメリとバルトが並んで歩き出す。
「腹減ったな」
「新月の日に魔術を使ったんだ。いつもより消費が激しかったのだろう。何か食べて帰ろうか」
「普段着だけど、いいのか?」
クスリと、シュメリが笑んだ。
「今日は僕も普段着だ。露店で買い食いなんか、どうだい?」
「それ、いいな」
二人の会話が心地良い。
「シュメリもいいかい?」
「あにゃ!」
シュメリの腕の中で、僕は前足を上げて答えた。
「店に付いたら人の姿になるんだよ」
「うにゃ」
クロノアが怖くて猫魔になっちゃったけど。
今日は猫の姿でシュメリやバルトに甘えていたかったんだ。
僕は、二人の会話を聞きながら、シュメリの腕に揺られていた。
お股ポテト
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はるにし
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コメント
1件
わあ、39話お疲れさま! リンネが猫姿のままで甘えてるの、めっちゃ可愛いかった…「戻るの忘れた」じゃなくて「撫でられたいから忘れてた」ってのがもう尊い。 シュメリとバルトの距離感が徐々に縮まってるのもじわじわ来る。「言い合いしながら一緒に露店行く」って、もう立派な家族ムーブじゃないですか。リンネも前足上げて「あにゃ!」って同意するし、この3人の空気感が心地よすぎる。 新月日にバルトに新しい属性が芽生えたのも気になるし、シュメリの属性外問題も謎が深まって続きが待ち遠しい〜!