「俺の名前はぷりっつ」
その名前を聞いてハッとした。顔を見た時にどこかで見た事あるような気がしていた。しかし名前を聞いて確信した。彼は第二性別の研究の第一人者でありここ最近メディアにも取り上げられた研究家のあのぷりっつだった。なぜそんな人がここに?そんな疑問が浮かび口を開こうとしたが、自分が今ヒート状態である事を忘れていた。すぐにぷりっつの近くから離れたがその様子を見てぷりっつは笑っていた。
「大丈夫やで俺今Ωのヒートがかからない薬飲んどるから。ほらこっちおいで?」
確かにヒート状態である俺の近くに長いこといる割には何の変化もない。恐る恐るではあるが彼に近寄ってみた。すると彼が手を出してと言わんばかりに俺の手をさしてきた。大人しく手を出してみると、彼は俺の掌にそっと薬を置いてきた。おそらくヒートを抑制する薬だろう。しかし俺には薬を飲む上で一つ大きな問題があった。それは、薬を飲むのがメチャクチャ苦手ということだ。普段薬を飲む時は薬と一緒にゼリーを口にいれ、かろうじて飲めていた。しかし今この場にゼリーなんてものがあるはずも無く、薬を掌に乗せたまま呆然としていた。そんな俺の様子を見て、ぷりっつが
「もしかして薬飲めへん?」
こんな年にもなって薬が飲めない事を気付かれ、恥ずかしくいたたまれない気持ちになる。しどろもどろに飲めないと答えるが、恥ずかしさのあまり思わず俯いてしまった。ぷりっつはそんな俺に何も言わない。
(あぁ、、呆れられたかな)
しばらく沈黙に包まれたが、俺は耐えかねてその場を離れようとした。もうこれ以上醜態を晒したくないからだ。そう思い立ちあがろうとすると、ぷりっつに思いっきり腕を掴まれ強く抱き寄せられた。あまりの予想外の行動に体が動かなくなる。抱き寄せられた状態のまま不安げにぷりっつの顔を見て言った。
「あの、どうしましたか?」
「いや、その、、薬が飲めへん言うた時の様子があまりに可愛くて//」
「は?」
どうやらあの沈黙は呆れて何も言わなかったのでは無く、可愛さのあまり悶えていただけらしい。
「薬が飲めんのやったら俺が飲ましたろか」
そう言うとぷりっつは俺の掌から薬を取り、自分の口の中に放り込んだ。次の瞬間俺の口に舌を絡ませてきた。そして舌と共に唾液に塗れた薬がぬるりと俺の口内に侵入してきた。その後も俺が薬を飲むまでぷりっつが口を離すことはなかった。薬を飲んだら絡んだ舌をようやく離してくれた。離した舌から糸がつたう。いまだに何が起こったか把握しきれてない俺にぷりっつは耳元で言った。
「ちゃんと飲めたな」
ニマァと笑顔で言うぷりっつ。俺はなんだか気恥ずかしくなり再び顔をうつ伏せてしまった。すると大通りの方からぷりっつを呼ぶ声がした。
「あっ俺もう行かな」
そう言うとぷりっつはスクッと立ち上がった。そうだ彼は今注目の研究家で俺1人に時間はかけていられないのだ。別に寂しいとかではないがなんだか胸の辺りがチクチクする。
「ほなな、また会えたらいいなえーと、、」
「あっと、あっとって言います」
「そっか‼︎ほなあっとまたどこかで!」
そう言いながらぷりっつは大通りに姿を消していった。
(また会えるといいな、、//)
ふと自分の唇に触れる。唇には微かに彼の温もりが残っていた。
コメント
4件
あまり考えたことの無いペアでしたが、めちゃくちゃいいですね!!! !!!!!、
もしかして同担!?やったー"(ノ*>∀<)ノまじ最高です👍