「…暑いな」
自然と喉奥から出た呟きは、額の汗が滴るよりも早く蝉の音によってかき消され
その事実は一層体を火照らせた
もうあれから一年だ
今でも現実味がない、あの出来事はもう一生頭忘れはしないないだろう、秋になっても、冬になっても、春になっても
いや、忘れてはいけない
そんな事をぼんやり考えている内にも、汗は止まることを知らず、キンキンに冷えたアイスが食べたくなってくる
「しょーがない、アイス買うか〜」
そう思い、汗でぐじょぐじょした右手で小銭を掴み、歩き出す
確かこっちだった筈だ
歩いているうちにも、考える事は止まらない
あの時は蝉がうるさかった
今もうるさい筈なのだが、何処かそうは思わない
そう頭を悩ませているうちにも目的の場所が見えてくる
「全然変わらないな」
やっと駄菓子屋に着いた
他の店は次々と変わってゆく中で、此処だけはずっと自分の事を思い出させてくれる
懐かしさを感じながら店内に入ると、一気に涼しさを感じ、疲れが溢れ出す
それを感じながら、品物を見ていく
30円のラムネや10円のスクラッチなどだ
見渡していると、一つのアイスが目にとまる
キンキンに冷えた、最後の一つのアイス
運が良かったらしい、最後の一つだとは
そのアイスを小銭を握った手とは反対の手で優しく持ち、早く食べたい思いからか少し早足で買いに行く
会計に行くと60円と言われ、少し驚きながら財布からぎこちなく10円を取り出しもともと握っていた50円と合わせて差し出す
そして店内を出ると同時、店内の涼しさとは違い先程のむし暑さを感じ、そそくさと近くにあった古い木製のベンチに座った
ベンチは日光で完全に熱くなっていたが、それでも疲れの方が大きく気にしない事にした
「いや~にしても値上げされているとは…」
まあ安すぎて心配になるくらいだったから、別に良いのだが
寧ろ、今まで50円だったのが可笑しいくらいじゃないか
そう思っているうちにも汗はポタポタと頬を伝い、アイスの袋にも滴り落ちる
[ベリッ]
袋を開け、すぐにアイスを取り出す
溶けない内に早く食べてしまわないと…
そういえば、昔…あの時もこうだったな
思い出に浸りながら、溶けないようにアイスを食べはじめた
コメント
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短編小説書いてみたかったんですよね〜 あと、こういう系の書き方もやったことなかったから練習したかった…やっぱり難しい…