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一時の感情に身を任せ

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一時の感情に身を任せ

22 - episode21

♥

31

2025年08月18日

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episode21 幼なじみ


ブライドside


目を覚ましたとき、心底驚いた。映矢輝の体が、角あたりからボロボロと消えていっていたからだ。

だが、閻魔の体に斧が突き刺さっていて、何を差し置いてもまずこいつの体を切り裂くことが第一だと考えた。

映矢輝の斧を一緒に握りしめ斧を上から下へとおろす。そして、映矢輝と共に討伐をすることに成功した。

閻魔はあっけなかった。声も出さず、惜しむこともなく死を迎えた。

腹の傷は不思議と言っていいほど痛くない。おそらくだが映矢輝が何かしらの魔法か何かをかけたのだろう。

映矢輝が後ろにもたれかかってきた衝撃で、私も尻もちをつく。やっぱり疲れたのか、と思いつつ肩を叩いた。

するとどうしたことか。映矢輝の体はもう足まで消えかかっていた。後ろに倒れた原因は疲労からきているものじゃあない。足が消えたことで立てなくなったから倒れたのだ。

そもそも、なんで体が消えているのかもわからない。なんとかする方法はないのか、頭の中はそれ一色だった。

すると、映矢輝が振り向き、抱きついた。そしてそのまま口を開く。

「あぁ、えーちゃん、あったかい。」

違う、私が温かいのではない。映矢輝が冷たいんだ。映矢輝は今、死にかけているんだ。私は心の奥底で、僅かにそう察した。

「ずうっと、こうしてたいなぁ。できれば、千ちゃんもいっしょに」

「ばか、お前、、!もう喋んな、!」

そう言う私の目からは涙がこぼれていた。

「ううん。もう、喋っても喋らなくても結末は変わらない。最期にちょっとだけお話しようよ。あたしが求めていた幸せは、みんなと怯える事なく会話をすることだったんだから。」

私には、頷くことしか出来なかった。

「あたしのせいで、怪我をおわせてしまって、ごめんなさい。でも、一緒に戦えて楽しかった。それに嬉しかったよ。」

「馬鹿野郎、、私はちっとも嬉しくねぇ!第一、なんでお前、体が、、!」

「あぁ、これは、、あいつを倒すために禁術を使った反動だよ。でも、、後悔はしてない。」

「ほんとに、、ばかやろう、、、!」

「嬉しいなぁ、あたしのために泣いてくれて。あたし、2人に酷いこと、沢山しちゃったのに。」

「酷くなんてねぇ、正当防衛だろうが、でも、お前につけられた傷は中々に痛かったよ」

「あはは、、ごめんね。それでも、2人に攻撃している最中でも、あたしは2人が大好きだったんだ。これだけは絶対にほんとう、。」

「でも、、あいつからの支配の恐怖と、、2人の気持ちを天秤にかけたときに、、恐怖の気持ちが勝っちゃった、、!」

「それなのに、それなのに!2人があたしに優しく接してくれたのに、、!あたしは最後の最後まで、、天秤を自力で傾けることが出来なかった、、!!!」

「ほんとうに、、ごめんね。」

「もう、おまえ、、ほんとう喋んな、!」

「ならその恐怖が去った今、お前が幸せになる権利はいくらでもある!!だから死ぬな!!戻ってこいよ!!」

もう、映矢輝の角と足は完全に消えた。

ボロボロと体と共に流れていく涙は、とても痛ましくてたまらなかった。

「ううん、もうダメだよ、。」

「あたしの幸せは、、もう随分前になくなっちゃった、、、だから、、ごめんね。」

「もう生きられないの。こんな結末になって、、ごめんねぇ、、。」

「そんなに謝るな、、!お前が謝ることなんて、ひとつも、、!!!」

「あるよ、たくさん、、!」

「怪我させてごめん、わがまま言ってごめん、迷惑沢山かけてごめん、巻き込んでごめん、数え切れないくらい、ごめんねを言いたい。」

「でももう、、時間が無いの。あたしは君たちに、中途半端にしか謝れない。だからお言葉に甘えて、言わないことにするの。」

「あぁ、怖いなぁ。死ぬの。2人と、、お別れするの。とっても怖い。」

「でも、、最期に守れてよかった、、!あたしにとっては、君たちがただそばにいてくれることが幸せだから、、!」

「そして、、何年経っても、あたしのこと、、忘れないでね、、あたしも2人のこと、、、何年経っても忘れない。」

「ねぇ、もし。もしもの話よ。また、、どこかで会えたら。たとえ、どちらかがどちらかのことを忘れていたとしても。」

「その時は、、胸を張って、仲間って呼んでくれる、?」

「、、当たり前だろ、、ばか!!」

「お前は本当に大バカ野郎だよ!」

映矢輝の体は、もう胸と腕、顔程度しか残っていなかった。

もう、本当にすぐ死ぬ。

「勝手に、、守った気になって、勝手に死んで!!」

「なんだよ、なんだよそれ!私は絶対に認めない!!!」

「私だってお前に言いたいこと、まだ沢山あるんだよ!!」

「お前のおかげで私は、、!私は悲しみを知った!楽しさを知った!!」

「私はまだ、、!お前にありがとうすら、!言えてないのに、!!!」

「勝手に死ぬなんて許さねぇ!末代までお前のことを呪ってやる!!」

「んふふ、、それが聞けただけで、もう嬉しいわ。」

「あぁ、もう、、お別れの時間ね、、。」

「えーちゃん、そして、、せんちゃんも、、」

「あたし、この世で1番、2人のことが、だぁいすき。」

「ありがとう、、そして、、ごめんね、、」

映矢輝の体は、私の腕の中から完全に消え去った。骨も残らなかった。

本当に勝手なやつだ。取り残された側の気持ちを何一つ考えちゃいねぇ。

「なぁ映矢輝、、!私、お前のためにこんなものまで買っちまったんだぞ!!」

それは、映矢輝と戦う前に購入したネックレスだった。

「こんなの私も所夜もつけねぇ!!お前にしか似合わねぇんだよ!なのに、!勝手に消えやがって、!!」

泣くしかなかった。自暴自棄だった。

我ながら、汚い声で泣いていたと思う。

すると、その時。

所夜の空間が見えた。

そこから入ってきたのは、知らない女。

白衣をまとっていて、私より少し髪の長い女。

敵かと思った。気配が人間じゃないからだ。

警戒したが、もう私に戦う気力というものはなかった。

すると、女が口を開く。

「はぁ〜、そんなに殺気を出さなくてもいいじゃない。私はあんたの敵じゃあないわよ。」

「私は南野シュリ。あいつに、、所夜千夜に言われて来たわ。」

「ちょっとシュリ!早いですって!」

空間から所夜も出てきた。どうやら本当に敵ではないらしい。

「ブライド、そんなに泣かないでください。目が腫れます。はい、手ぬぐいです。」

「なぁ、!こいつ誰だよ、お前の知り合いなんだろ?」

「えぇ、そうです。起きるのが遅くなってすみません、こいつを呼び出していたら遅くなってしまって、、。」

「あら、感謝して欲しいくらいなのだけれど?この薬を作るのに、いくら貴重な原石を使ったと思って、、!!」

「まぁ、まぁ、本題に移りましょう。」

何を話しているのかよく分からない。というか、もう聞く気にもなれない。

「、、ブライド、、映矢輝は?」

「、、、、ついさっき、死んだ。」

「こんなことを聞くのは不躾ですが、、遺留品なんかはありますか?」

「遺留品、、」

ふと目に入ったのは、映矢輝の妙にキラキラした可愛らしい斧だった。

他に遺留品と呼べるものはないだろう。骨も何も残さず死んだのだから当然だ。

「あの斧くらいだと思う。他にはもう、、何も、」

「そうですか、言わせてしまってごめんなさい。もう休んでください。あなたの出血も少なくないんで、、あら、もう寝ちゃいましたね。」

所夜がなにか言っていたが、もう私の疲労は限界だったらしく、そのまま目を閉じた。












所夜side

目を覚ましたら、民家の中だった。

気を失っていたのだ。確か、、あの魔法をくらって、、

民家の方が介抱してくれたのだろう。体が軽い。

お礼を言い、急いでブライドを探した。が、どこにもいない。

映矢輝の姿も見当たらない。きっと二人になにかあったのだ。

私は自分の腰から吊るしてある、目玉を手に取る。この子は私に2000年ほど従ってくれているペットのようなものだ。

「さぁ、サードアイ。探知をお願いしますね。」

サードアイはわかった、とでも言ったかのように瞬きをする。

探知くらいならサーバーに行ってもいいのだが、いかんせん手続きが面倒くさいのだ。

数十秒後、居場所がわかったらしく、目玉をプロジェクターのようにして情報を映す。

居場所は、、地獄!?そして映矢輝が戦闘不能、まもなく心肺停止と映し出されている。

これは思ったよりまずい。サードアイに目を閉じて休んでいるよう伝え、空間を使いオブサーバーへと急ぐ。

私はとある個人医の所へ駆け込んだ。

深夜だろうが関係まい。こいつとはもう、気を使う関係なんかじゃない。

「シュリ!!いますか!?シュリ!!」

扉を力強く叩く。すると眠そうに、一人の人物が出てきた。彼女こそが、私の『幼なじみ』である医者だ。

「なに?いま深夜よ?時間帯わかってんの?」

「ごめんなさい。お詫びは後日必ず、、とにかく、!作ってほしい薬があるんです!!」

「あんたがそんな顔してるなんて、らしくないわね。いいわ。何を作ればいい?」

「責任問題が大きい事なのは重々承知の上ですが、、例の試作品を、、作ってくれませんか!?」

ダメ元だ。効くかなんてわからない。

「あんたねぇ、、何に使うつもり?」

「私の、、大切な友達に。お願いします!!あなたなら、これくらいの薬作れるんでしょう!?」

「はぁー、、いいわよって言った私がバカだったわ。、」

「まあ、断るとあんたネチネチうるさいものね。」

「そのかわり、しっかりお代と書類はあんたに書いてもらうからね。」

「っ!!ありがとうございます!!」

「待ってて。5分頂戴。」

そう言って、彼女は調薬室に入った。

シュリは優秀な医者だ。薬が作れて、病気に詳しくて、人を何人も助けているためオファーが絶えることない名医、、。

私は、彼女に頭が上がらない。幼なじみと言いつつ、何度も助けられた。大きくて頼りがいのある背中は、誰にとっても眩しかった。私とは違う。

数分後、注射器と薬品が入った小箱を持って、二人がいる地獄へと向かった。

到着は遅かった。だが、シュリの作った薬なら、彼女の術なら、大丈夫だ。

静かな顔をして、斧に向かって術を唱える。人間であるブライドが万一術で拒否反応を起こしたらまずいので、抱えて少し離れる。

蘇生「暗黙の木の葉隠れ」

そう唱え、先程作ったのであろう薬を打ち込む。

その間に私は、サードアイに自宅の仮眠室にシュリが最低限の治療をできる設備と布団の用意を頼み、ブライドの止血を始める。

シュリの方からは、紫色の光が立ち込め、段々と、、映矢輝の体が見えてきている。やはり、彼女はすごい医者だ。

ブライドの止血が終わった頃には、映矢輝の体はほとんどもとに戻っていた。

「、、!はぁ、ほんとに、よかったです。」

「お手数おかけしました。ありがとうございます。」

「まぁ、あんたの頼みに答えるのはもう慣れたものよ。」

「それで?その顔は。あんたが抱えてる子の治療もしてほしいって顔ね?」

「あはは、、よくご存知で。」

「いいわよ、ここまで付き合ったんだし。サードアイがいないってことはあんたの家で治療しろってことでしょ?空間開いてくれるなら行ってあげる。」

「はい。じゃあこちらに。」








ブライドside

目が覚めると、よく嗅ぐ香りだった。きっと所夜の家だろう。

普段の布団とは違う寝心地だ。恐らく、、仮眠室だろう。

重い体を起こし、目をこする。朝には強いつもりだが、怪我のせいで気だるさがあってあまり起き上がりたくない。

布団から出て、ふと隣を見た。普段なら隣には何もない。はずだった。

「ふわぁ〜、、あれ、?ここどこ?」

信じられなかった。眼の前には、死んでいるはずの者がいたからだ。

なんで、どうして?だってあのとき、私の腕からは確実に、、!骨もなく、消え去ったはずなのに、!

分からない。何がどうなったらそうなるのか。でも、そんなことはどうでも良かった。




ガバッ

「あれ、?えーちゃん、、?!」

「よかった、、!ほんとに、、!よかった、!!」

「死ななくて、、生きてて、、!ほんとに、!」

「ごめん、、!!ひとりで戦わせて、!ほんとにごめん、、!!」

「謝るのは私の方なのに、なんでお前が最後に謝るんだよ!!おまえが死ぬってわかったとき、私がどんだけ苦しかったかわかってんのよ、、!」

「えーちゃん、、。」

「、、えーちゃんが言ってること、よくわかっちゃう。あたし、なんにもわかってなかったね。ごめん。ごめんね。泣かせてごめん。」






「あら、あんた達。起きたのね。感動的再開のところ悪いけど、体に異常はない?」

入ってきたのは、気を失う前にみた女だった。

「あんた、、南野シュリ、、だっけか。何者なんだよ。よく知らねぇが所夜の知り合いなんだろ?」

「質問に質問で返さないでほしいのだけれど、、まぁいいわ。あのときはろくに説明できる状況でもなかったしね。」







「改めて自己紹介するわ。私の名前は南野シュリ。一応医者をしているの。あいつ、、所夜千夜の幼なじみよ。」






「「、、、はぁ!?!?」」










はーい毎度おなじみ楽書生でーす!

さて、来ましたよ新キャラ!この子を書くのが楽しみすぎて思ったより早く投稿できました🫶

にしても長い話になりました。5000文字いったの結構久々かも!?

それでは軽く南野シュリの設定を書き連ねておきます!後日雑談部屋の方でも四人のしっかりした設定を上げるつもりなのでそちらも見てくださいね!




名前 南野シュリ 性別 不明 年齢 不明(所夜よりは下)誕生日 9月16日 職業 医者(科は一応外科)種族 邪仙 能力 「どんな植物でも薬草に変えることができる能力」(表)

オブサーバーの個人医。優秀ゆえ、大きな病院からのスカウトが絶えない。自身の能力を使い、サーバーに住む人外の診療を中心として活動している。所夜のように戦うことはできないため、所夜とは違う形で人の命を救いたいと思うようになった。所夜の過去を現代で唯一覚えている理解者。所夜も、自分のことをわかってくれる大切な幼なじみと思っているが、合うたびに喧嘩をしてしまう。


今後ずっと関わってくるので、ぜひ覚えてあげてください!

それでは!

一時の感情に身を任せ

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