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「いつからマナが山崎先生とそういう関係になっていると?」
「いつからなのかはわかりません。でも、夫に愛人がいるのは前々からわかってはいました。しかも複数の女性がいることも――」
「知ってたんですね?」
「知ってはいても、どうすることも出来ませんでした。悪いのは私なんですから――」
「どうしてですか? もしかして、あなたも不倫をしていたんですか?」
「しません。そんなこと1度もしたことはありません。私が女としての役目をしっかり果たせていなかったから、夫は外で愛人を作ってしまっていたんです。私に女としての魅力があったら、きっと夫は浮気なんてしなかった」
そう言った彼女の目からは、涙が溢れ出ていた。俺は山崎の奥さんだから、きっと似た者夫婦なんだと思っていた。奥さんも外で男を作って遊んでいるような最低の女なんだと勝手に思い込んでいた。でも、違っているようだった。しかも何でこんなにキレイで旦那想いの奥さんが、あんなダメ人間と一緒になってしまったのかが不思議で仕方なかった。
「俺が言うのも変ですけど、あなたはキレイだし女性としての魅力は申し分ないと思います。それにあなたは、浮気なんてしてないし、するような人じゃない。あなたは悪くなんかありません」
「あっ、ありがとう――」
「他の浮気相手の女性にも会いに行かれたんですか?」
「そんなことしません。そんなことしなくても、もう――」
「――――」
何か考えでもありそうな言い方だった。
「あなたも、五十嵐さんが不倫をしているのを知った上で私たち家族について調べたみたいですね」
「山崎先生と別れさせるのに情報が必要だったんです。すいません――でもどうして今になって浮気相手のところになんか?」
「雄平さんは私を愛してなどいません。これから先もずっと――。2才の娘もいます。あんな父親じゃいない方がマシです。だから最後くらいあの人に痛い目にあってもらいたいと思って、探偵に依頼して浮気現場の写真などの証拠を撮ってきてもらいました。私の勝ちです。まさか雄平さんは私が裏切るなんて思ってもいないハズだから、きっと驚くでしょう」
「マナは騙されていたんです。許してあげてもらえませんか?」
「マナさんが騙されたのはわかっています。でもこれは許す許さないという単純な問題ではないんです。私は雄平さんに、浮気をすると自分だけでなく相手の女性も大変なことになるのをわからせたいんです。五十嵐さんには申し訳ないと思いますけど見せしめになってもらいます」
「見せしめって――何をするおつもりですか?」
「五十嵐さんのご両親や学校に、このことを知らせるつもりです」
「そんな――何とかなりませんか?」
「ごめんなさい。可哀想だとは思うけど、もう決めたことだから――」
それから俺は何度も何度も頭を下げてお願いをした。でも、彼女が意志を変えることはなく、とうとう車から降ろされてしまった。恐れていたことが現実になってしまった。どうしたらいいんだ。俺は誰に相談したらいいかわからなかったし、まず何をすべきかもわからず途方にくれていた。