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そして、家には帰る気が全くおきなかったのでマックで時間を潰していた。何気なく時計を見ると、既に20時を回っていた。店を出ると、誰でもいいから話がしたかった。
ピッ――
すると受話器から男性バンドグループの曲が聴こえてきた。
『もしもし、どうしたのこんな時間に?』
『ごめん、ちょっと誰かと話がしたくなってさ』
『何かあったの?』
『何にもないけど――』
ゆずきの声を聞いたら何だかホッとして、体の力が抜けたようだった。
『大丈夫?』
『あぁ――ゆずきの声を聞いたらホッとしちゃってさ』
『私なんかでも役に立つんだ』
『当たり前だろ! ゆずきがいてくれて本当に心強いよ』
『そう――それより今日、校門のところで話をしていた女性って誰?』
誰にも見られないように、直ぐに場所を変えたのに、ゆずきには見られていた。
『ちょっとした知り合いだよ』
『もしかして、マナの不倫相手の奥さん?』
『どっ、どうしてそのことを?』
『知らないと思ったの? 私だってマナと1年以上も一緒にいるんだよ。様子がおかしければ変に思うのは当然でしょ。それに圭太が私に隠れてガリベンとコソコソ話してたのも知ってたし。だからガリベンから全て聞かせてもらったの』
『ごめん、巻き込みたくなかった。飯塚のことがあった時もゆずきを巻き込んでツラい思いをさせてしまったからさ』
『本当にマナを嫌いになってたら、今でも付き合ってないって。マナはどうしようもないバカだから、いずれまた問題を起こすと思ってたし、覚悟はしてた。だから圭太1人に重荷を背負わせないから』
『あっ、ありがとう』
張り詰めていた糸が切れたように、自然と涙が溢れてきた。
『圭太――泣かないで』
『泣いてねえよ』
これ以上涙が流れないように上を見ながら歩いた。それから俺はゆずきに、今まであったこと、今日あった出来事を包み隠さず話した。2人で話し合ってみたけど、解決の糸口は全く見つからなかった。
それから数日後、山崎詩織さんから電話があって、俺とマナの2人で駅前のカラオケボックスに来るように言われた。だから学校が終わると嫌がるマナを連れて待ち合わせ場所に向かった。俺はマナにとにかく謝れと言った。頭を下げて、もう2度と会わないし、連絡もしないと奥さんの前で誓えと言った。マナは首をげていた。〝どうして?〟というような顔をしていた。
お店の駐車場に着くと、クリーム色の小型乗用車から詩織さんがドアを開けて出て来た。
「すいません、お待たせしました」
「いいえ、私もさっき来たばかりです」
それから、受付を済ませた詩織さんと一緒に部屋に入った。
「どうしてこんなところで?」
「話す内容が内容なので個室の方がいいと思ったの」
「なるほど」
確かにファミレスや喫茶店とかでは浮気とか不倫とかいうような話はしづらい。