テラーノベル
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朝起きて洗面所の鏡を見ると酷い顔の自分と目が合った。
目は少し赤くなっていたけれどあれだけ泣いた割にはあまり酷くはなっていないようで安心した。すぐに冷やしたおかげだろうか。
今日は昼からM!LK全員の仕事だ。つまり、勇斗とも会う。上手くできるだろうか。私情で仕事に悪影響を与えるなんて絶対にやってはいけないことだし、他3人にも迷惑をかけたくない。
行きたくないな。
なんてことを思っていても時間が止まるわけないので、もう仕事の時間になってしまった。重い腰を上げて仕事場へ向かう。
楽屋の前に着くが、ドアを開ける勇気が出ない。これで勇斗しか中にいなかったらどうしよう。そんなことを考えていると後ろから声をかけられる。
「仁人?なにしてん?」
「あ、太智……」
後ろを振り返るとそこには太智がいた。勇斗じゃなくて良かったと安心する。
「なんで立ち止まってるん?楽屋入るで?」
「あ、うん……」
俺は太智と一緒に楽屋の中に入る。どうやらまだ俺たち以外は来ていないようで、誰もいなかった。少しほっとする。
「てか、仁人何その顔」
「………え?」
「目赤いし、ひっどい顔してんで」
やっぱり太智には言われるだろうなと思ってた。
「いろいろあって………すぐ、目、冷やしたんだけど……」
「………勇斗関係か」
やっぱり太智にはすべてがバレる。長年一緒にいるからなのだろうか。
だから、今日は勇斗に会うことも怖かったが、太智に会うのも怖かった。自分の全てを見透かされて、昨日の自分の悪い所もすべて気づかれてしまうと思ったから。
「ちゃんと冷やしたのは、えらいやん。けど、メイクさんに謝っとけよ。で、ちゃんと隠してもらえ」
「………うん」
「……何あったんか知らんけど、何か言いたくなったらいくらでも聞くから」
太智は普段世間話をするくらいのテンション感でそう言ってきた。深く介入はしないけど、困ったら助けてくれる、そのスタンスが有難かった。
「ありがとう、太智」
「ん」
しばらくすると全員が楽屋に着いた。もちろん勇斗も。俺たちは一切目が合わない、話もしない。
さすがに舜太も柔太朗も俺たちに何かあったと感じ取ったようだ。ごめん、楽屋の雰囲気を暗くしてしまって。
「仁ちゃん」
「ん?」
舜太が少し気まずそうに小声で話しかけてくる。
「勇ちゃんと、何かあったん?」
「………うん。ちょっと喧嘩しちゃった」
そう言うと眉を下げて、少し悲しそうな顔をする舜太。俺ら2人が年上なのに、最年少にこんな顔させてしまって申し訳ない。
「そっか、なんかあったら言いや。俺なんでもするよ」
「ありがとう。じゃあさ、仕事始まるまで一緒に話してたい」
「そんなんでいいん?たくさん話したるで」
舜太は俺たちの喧嘩の内容を深く探ることは無く、最近の面白かったこととかハマってることとかいつもみたいな世間話を沢山してくれた。
一人でいるとやはり暗くなって色々考えてしまうから誰かと話していた方が気が楽になる。
それに、明るくニコニコ人懐っこい舜太のおかげで、舜太と話す時は心は穏やかになれた。
今日の仕事は雑誌の撮影である。今回は2:3で別れて撮るパターンと、5人全員で撮るパターンらしい。
もし、俺と勇斗2人の撮影だったらどうしよう。そう考えただけで怖くなった。
「じゃあ、2:3の撮影は、吉田さん曽野さんの2人、佐野さん塩﨑さん山中さんの3人でお願いします」
スタッフさんからそう言われ、安心する。良かった、舜太と一緒だ。
「仁ちゃん一緒やね」
「うん。良かった」
舜太がニコニコ笑顔でそう言ってくるから、こちらも笑顔になってしまう。
まずは俺たち2人の撮影から始まった。
メイクさんには少し赤くなった目をホラー映画が怖すぎて泣いちゃったと嘘をついて誤魔化した。メイクさんの技術のおかげで赤い目は全然目立たなくなって本当に感謝している。
「ん〜、もうちょっと寄って」
カメラマンの指示に従って順調に撮影していく。
少し遠くで俺たちの撮影を見てる3人の中には勇斗がいる。俺は極力そっちを見ないようにした。
「もっと顔近づけて〜、そうそう!」
舜太と顔が近くなる。
「なんか、顔近くて恥ずかしいわ」
なんて舜太が言うから思わず笑ってしまう。
「何、恥ずかしがってんだよ。笑」
「いいねー!その笑顔。2人ともその調子」
舜太のおかげで自然体で笑顔で撮影を終えることができた。
「おつかれ〜!」
「おつかれ。舜太のおかげで自然体で撮影できたわ」
「ほんまに!嬉しいわ〜!仁ちゃんに褒められるの嬉しいねん」
ニコニコ笑顔でそう言ってくる舜太は犬みたいでかわいい。今日は舜太にずっと救われているな。年上なのに、年下の舜太に助けられている。
次は勇斗たちの撮影の番だ。
舜太と隣同士に座ってその撮影を見る。
勇斗は昨日の俺たちの喧嘩なんて無かったかのようにいつも通りの顔をして撮影に挑んでいる。
気にしているのは俺だけなのかな。
もしかしたら、勇斗はずっと前から俺と別れたくて、昨日の喧嘩で別れる決心がついたとかある?
「仁ちゃん、今日勇ちゃんと話した?」
「………話してない」
目を合わせたら泣いてしまいそうで、勇斗の顔すらまともに見れていないのに、話すなんてもっと無理だ。
「でもさ、このままじゃあかんやろ?仁ちゃんだって分かってるよね」
「うん……」
それは分かっている。このままじゃダメだって。勇斗と話し合わなくてはいけないって。
でも、怖い。これで別れることになったら、おれ、生きていけないかも。
でも、話さないと。
「仁ちゃん、勇ちゃんと話そう。何かあったら俺がいくらでも話聞くから、ね」
「うん……そうだよね。ごめん、舜太。俺の方が年上なのに、こんなことで気使わせて」
「年上とか関係ないよ!俺は仁ちゃんに笑顔でいてもらいたいから、仁ちゃんためならなんでもするよ」
「ありがとう、今日は舜太に助けられてばっかだよ。俺、この後勇斗と話すよ」
「うん。はやく仲直りしてね」
俺は勇斗にメッセージを送った。まだ、直で話す勇気は無かったから。
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