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-荒れた砂漠の中-
「…!?ぺっ!ぺぇええあっ!」
オレが目覚ましたのは、この世界に来てからはそうは経ってないだろう。
そん時の初めての感触は、口の中の砂のジャリジャリ感で、とにかく最悪だった。
口の中の砂の量が、フツーだったら絶対ありえねぇほど、砂漠の中に頭突っ込んだぐらい 多かった。
「はぁ…何なんだよこれ…」
ようやく口の中の砂を全部吐き出した頃、ふと目を開けてみた。
そこは、オレの予想とは違ってどこかのビルの一室だった。
「あ?ビル?」
よくわかんねぇ。なんでこんなビルの中で、さっきの砂の量が出てくんだ?
胸に込み上げた疑問を一旦は抑え、まずは仲間を探そう。
「おーい、時計ヅラ」
…。
「時計ヅラァー!!」
いくら呼びかけようが、その声は虚しくも宙へ消える。
とりあえずと辺りを眺め回してみたが、
時計ヅラ達はそこにいず、代わりにと部屋から溢れんばかりの砂山がこっちを見ていた。
「あー、もうなんだよ!」
分かりきっていたはずの事なのに怒りをぶつけたい気分でいっぱいだ。
オレの愚痴に砂山は応えるはずもなく、ただ隙間風に身を任せていた。
ひとまず、オレはパラパラと砂の音を奏でながら立ち上がり、外への道を見つけにいった。
砂だらけの廊下を進み、遂には外に出ることが出来た。
「おいおい、なんだこれ」
オレは戦慄に近しい感情をもってるだろう。
だって、ビルが並ぶ街かと思ったら、いや街だが、こんな…。
オレの目に映ったのはビルが沈む砂漠だ。辺りかしこも、砂しかない。
都市ですら見たことがない光景に、オレは不安の嵐がまとわりつく。
こうして砂漠を見ていると、新しい疑問が浮かびあがってくる。
こんな所に、黄金の枝があるのか?
今までの場所は、大体荒れてたりしたが、確か文明が残り続いていた。
だが、ここはどうだ?
別の世界の上、可能性は低いかもしれない。
まあ、そんなんは後でいいか。
まず、生き残ろう。都市で生きていく基本だろう?
オレは、まとわりつく不安と共に、物資を探すため、砂の大地に乗り出した。
「なんでだ…なんでこんなにも砂だらけなんだぁ!?」
店という店を渡り、物資を漁ろうと時間を掛けたが。
どれだけ探しても、状態のいい物資が見つかることがなかった。
自暴自棄に砂だらけのものをブン投げ、店の外に出る。
太陽はいつの間にか真上で昇り、ひしひしと暑さを体感した。
砂が被った坂道を上り、街の大通りらしき場所に着いた。
「砂があんまかかってねぇな」
そこは、確かに今までとは違って見えた。
だが、街の死んだ沈黙がまたオレを現実に叩き落とした。
ここもダメか。
呆れた感想しかでてこない。これで何度目だ?
道の真ん中で、堂々と歩き、眺め回す。
どこもかしこも、閉店だとか、砂だらけだったり、廃れ方のバリエーションが飾られている。
希望をあまり抱かずに、街の中を何キロか歩いてた時。
バババババババ!
「うおっ!?なんだ?」
突然、オレの目の前の地面が、乾いた音と同時に噴き出した。
「おい!そこの野郎!」
「あ?」
反射的にその声の発生源を向く。
そこに、女が5人。
「あぁ?なんだお前ら?」
「こっちの台詞だ!お前こそ何もんだ!」
オレの質問に、集団の先頭に立つ女が逆に質問してきた。
「質問に質問で返すのか?フツーは、ちゃんと答えるのが道理だろ?」
こんな台詞言っておいて、脳裏にそんなことしてたような記憶が疼く。
「うっせーな!勝手に人のテリトリーに入って何だその口は!」
「ん?テリトリー?」
集団のうちの1人がそう言って、ギャングだと理解する。
だが、ギャングにしてはおかしくないか?男とかいねぇし、武装もヘルメットだけだ。
「お前ら、そんな舐めてるようなチーム、ギャングの名が廃れるぞ」
「は?カタカタヘルメット団を舐めてくれたな!?」
「カタカタ…?」
「こいつとこれ以上、話しても時間の無駄だ」
1人が、呆れたように言い放つと、他の人も何か察したのか、
懐を漁り始めた。
「お前、状況理解できてんのか? 」
「ん?どういうことだ?人数差?」
「それもそうだが…」
オレのバットに指差しながら言い放つ。
「お前、それしかないだろ?
「?」
オレはあいつの言っていることがよく分からなかった。
「銃すら持ってないくせによくそんなこと口走れるな」
「銃?そりゃ、高いからな」
オレは当然のことを口にする。
「おいおい?あんなものも買えねぇのか?どんだけ金持ってないんだよ!」
1人が嘲笑う。
段々と状況を把握できたような気がする。
こいつら銃を持ってるぞ。
「よぉーし、今からお前のその頭をぶち抜いてやる!」
5人一斉に、銃を構えた瞬間、オレは後ろに振り向き、足を素早く前に出す。
アレを見たオレは、これほどもない恐怖に襲われた。
「まっず…」
バババババババ!
オレの言葉を掻き消さんとばかりの銃声が後ろから鳴り響く。
オレはひたすら逃げることしかできなかった。
「くそっ!なんなんだ、あいつら!」
三下の台詞を吐きながらも、
どこかどこかとうまく隠れられそうな場所を探す。
「なんで当たらないんだ!?」
「でかい図体なのに、すばしっこいぞ! 」
「しっかり狙え!あいつは、有効な攻撃手段を持ってないぞ!」
意外にもあいつらは手こずっているようだ。
今の内に、避難所を見つけねぇと…。
狭い路地に追い詰められると、わかっていたようにシャッターが開いてある店を
見つけることが出来た。
兎も角言わずに、オレはシャッターの隙間から入り込み奥のレジカウンターの陰で体を丸くした。
ひとまずは、命方々隠れられたが、相手はどう出るか?
「ここに逃げたようだな」
「シャッターを上げろ!」
「なんだこれ!?全然びくともしないぞ!?」
「ああ、もう鬱陶しい!手榴弾投げた方が早いだろ!」
手榴弾?その単語を聞いて、少し背中が震える。
ピィン!コロコロ…
一瞬の沈黙の後、シャッターの隙間から何か丸い物が転がってきた。
そしてさらに不気味な沈黙が流れ…。
ドゴォォォォォォ!
「うわぁ!?」
この建物を照らすのに十分な閃光が、静寂を破り拡まる。
次に来るのが、その轟音と大きな衝撃。
オレは吹き飛ばされないように、物にすがりつくので精一杯だった。
衝撃の数秒後、煙幕が現れたと同時に爆発の感覚が小さくなる。
爆発によってか、シャッターで遮られた光が解放され部屋中に染み渡っていた。
「やったか!?」
「おい!そんなこと言うんじゃねぇ!」
「み、見てくるか? 」
「そういえば、あいつ…」
そんな雑談をしながら(足音からして)2人が近寄ってくる。
段々と近づく足音に、まだかまだかと反撃の瞬間を伺っていた。
その瞬間が来たのはそう遅くもなかった。
「跡形もないじゃ…」
女の1人がレジカウンターの物陰を覗いた瞬間。
バキィィン!
奴のドタマにバットを勢いよくぶつけ、鈍い音を響いた。
「ぐっ!?」
ドタマに衝撃が集い、体ごと吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた体は、シャッターのところまで吹き飛び、壁に思いっきりぶつかった。
「!?お前!」
オレから1番近い女が反応し、銃を構える。
バキン!
床スレスレでゴキブリにように素早く接近し、その勢いを使ってバットで銃をはたき落とす。
「いっ…!?」
間一髪いれず、首目掛けて蹴りを入れる。
「撃てっ!撃て!」
残りの奴らもいつでも撃てるように銃を構えている間、さっきの女を引っ張りに肉盾にする。
バババババババ
その間に、銃を掻っ攫う。
「もらうぜ、これ」
「くっそ!?なんなんだアイツ!?」
銃を奴らのように構えてみる。今まで使ってきた銃とはサイズが格段違う。小さすぎる。
バン!
都市では、こんな感じにいっぱい撃てはしなかった。
銃弾にかけられてるバカたけぇ税金も払わないといけないからな。
その癖で一発だけ撃ってみたが、運良く1人のドタマに当たったみたいだ。
バババババババ!
奴らも負けじと、数うっちゃ当たる戦法で弾の一つがオレの左肩を掠め取った。
オレはその痛みに怯み、さっきのカウンターの物陰に隠れる。
さっきまで5対1の劣勢だったのが、一連で一気に2対1と有利な状況までに近づけることが出来た。
(いっっっっった!?)
落ち着いてから、急に利き足に痛みが走る。さっき蹴りを入れた方の足だ。
オレが蹴ってたのは人間だよな?なのに、なんで鉄の壁蹴ったような感じみたいになるんだ?
そうだな、よくよく考えてみるとこいつらは何かおかしいところがいくつかあった。
特にあの上に浮かんでる輪っか。 なんだあれ!?
「どうすんだこれ?人呼ぶか?」
「バカ言え!これ以上騒いだら、アイツらが来るだろ!」
奴らがああだこうだ言ってる内に決めるか。
カウンターから体を見せ今すぐにも撃とうとしたその時。
ダダダダダダダダダダ!
「ぐおっ!?」
突然、シャッター外の右の女が倒れた。
「なんだ?何が…」
「なんでアビドスの生徒が、ここにいる…ぎゃあ!?」
最後の弾が撃たれ、騒がしく鳴らす物が消え、残った静寂は嫌なほど続いた。
オレはなんだか不気味な気分にされるがままに浸けられるだけだった。
いくら待っても進展が無かったので、外へ出て様子を見に行こうとした。
穴が空いたシャッターを潜り抜け、左右にそれらしきがないかを確認…。
「ん。やっと出てきた」
突然そんな声が聞こえたかと思ったら、強く蹴り飛ばされた。
オレは思ってたよりも勢いよく吹っ飛び、野垂れ死ぬような姿勢をとっていた。
立ちあがろうをしたが、誰かに胸を踏まれ、倒れざる得ないかった。
「な、なにも、んだ…おまえ…」
声が上手く出せず、途切れ途切れになっている。いつのまにか首を…。
「知らないの?いつも私たちの学校襲ってたのに?」
「ンなんだよそれ…知らん事を押し付けん…」
「ん。ごまかさないで」
眉をひそめ、鬱陶しそうな顔をして口をはさんだ。
「なんかアイツらの仲間だと勘違いしてんだかわかんねぇが…オレはホントに…!」
「いろいろ誤魔化してるけど、じゃあヘルメット団の真ん中で騒いでたのは?」
「はぁ…」
やはり勘違いしてるような言動だ。オレの顔が見えてないのか?ヘルメットなんか被ってないだろ。
「おーい、オレの顔が見えてるか?」
「顔…?……あ」
目の前の女…青いオッドアイの目と銀色の髪と狼の耳?をつけているそいつは、
オレの顔をまじまじと眺め、ハッとする。
「あ、確かに組織のじゃない…それに…?」
今度はオレの頭のてっぺんを眺め、少し困惑の顔を見せたが…。
…今までのここの人たちの反応を見てみるに、オレはおかしいらしい。
そうだ、奴らはあんなに硬いのに、オレは比べてみりゃ、ペラペラの紙みてぇな丈夫さだ…。
ん?もしそうなら、殺した経験がないのか?
銃を使ってても見た感じ気絶ぐらいまでしか出来なかったからな…。
「だろ?分かったんならさっさと離せ…」
「逃げろ…!」
「あ?」
ビルの陰から出てきたヘルメット頭の女が叫んだ…オレを見て。
「さっさと…他の奴に伝えろ…!」
「おま…ふざけんじゃねぇ!」
オレが反論しようとしたが、そのやり取りを見た銀色の女が血相変えて武器を突きつける。
「やっぱり…仲間なのね」
「だから、違げぇって!」
こっちのなんとか理由を述べたいが、それっぽい理由が思いつかない。
ここは…武力でか…!?
「タダでやられるかよ!」
その掛け声で試合のコングが鳴らされた。
「ん!?」
体を思いっきり押し退け、バットを構え直す。
そいつは手際良く、受け身を取りトリガーを引いた。
「なっ!?」
思った以上の強さで動揺してしまい、避けきれず弾がいくつか掠めた。
「やっぱり…」
何かを確信したのか、そいつは手を止めた。
「…なんだ?情けでもかけてんのか? 」
「大体そう…もう投降した方が楽じゃない?」
「はっ、無差別に優しさ撒きまくって、空っぽの心を満たしたいだけだろ?」
「そんなに煽って…何が面白いの?」
実際、煽ってる暇なんか、そんな余裕はない。
オレの体は癒されることなく、段々と傷を刻まれるだけだ。
「…そんなオレに構うなら、ドタマにぶっ放せばいいだろ?」
「…」
あぁ。なるほど?
「そうか、お前、人殺したことないんだな?」
「!?」
この街、こんな物騒な武器を持ってながら、死体どころか血生臭い匂いすらしない。
体の構造か、倫理観で出来ないだけかもしないが、この事実だけは確かだ。
そうだ、アイツが一瞬動揺したぞ。
ここは、近接戦ですぐに終わらせる!
そう意気込んで、一気に近づきドタマに向かって振るうったが…。
「…隙を狙ってくるなんて性格悪いね…」
意図も容易く体を捻らせ、間一髪で避けてしまった。
「なんだよそれ!?」
避ける勢いで体を回転させ、足を一気に回す。回し蹴りだ。
ダン!
「ぐっ!?」
オレはなんとか蹴りを腕で止めることが出来たが、それと同時に腕から嫌な音がした。
「ぐおぉぉぉぉ!?」
「…何やってるの?」
なんか、一瞬呆れた目で見られたような…。
確実に手骨が折れてる。
「ストイックすぎじゃねか…?」
「たまにあなたみたいな人がいるから、念には念を入れてるの」
「それより…」
カチッと銃を向けられる。
「まあ、これで終わりね」
「いや、まだだ」
まだ終わっていない、足はまだ動く。ここは一旦。
ダッダッダ!
「あ、逃げた」
「やってられるっか!ここは逃げるぜ!」
わざと逃げ、相手にボロを出してもらおう。
「ん。逃がさない」
アイツが何か呟き、聞き覚えのある音を鳴らした。
手榴弾だ。
ここは賭けだ。前から、あの爆弾をどうにか出来ぬか考えてたんだ。
オレはすぐさま振り向き、手榴弾に面と向かう。
「何して…」
忌々しいアイツのドタマをもいで飛ばす感覚で…。
ベースボールでホームランを打つ感じでバットを構える。
タイミングを見極め、バットを握る力を一層強くする。
「まさか…!?」
アイツも察したか、次に起きる事に備えて身を構え出したが。
カキン!
小気味いい打音鳴らし、手榴弾が投げた飼い主に素早く戻る。
「まずー!」
ドカァァン
爆発音が声を掻き消し、閉じ込められた衝撃は一気に解放される。
それは、さっき以上の威力を持っていた。
しばらくして爆発が止み、視界も晴れてきた。
「お前も随分しぶといな」
驚いた。あんな爆発を耐え、その中央でへばりついている人影が1人いた。
「まだ、終わってない…」
「もうダメだ。そんな傷でどうやって戦えるんだ?」
「まだ戦える…ぐっ!?」
無駄に吠える犬の足をバットで折ろうとしたが、こんな傷だらけなのに折れる感覚がしないかった。
「硬すぎじゃないか?これじゃあ死にきれないんじゃないか?」
「な、何をするつもりなの?」
「大丈夫だ、楽に死なせてやる」
「…!?」
死ぬ覚悟をしてないくせに、よくもこんな事できたな。
「じゃー」
ドタマに向かってバットを下ろそうとした瞬間。
ガン!
「あっ…」
バットのような、それ以上の鉄塊で殴られたような音を最後にオレの意識はプツンを途絶えた。