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#追放
西暦二〇X二年六月八日午後。
獅子央孝恵は、オンライン上で開催された冒険者組合臨時総会において――。
四鳴啓介を代表とする〝S・E・I 〟。
一葉朱蘭が中心となった〝J・Y・O〟。
日本国へのクーデターを目論んだ、二つの勇者パーティを除名した。
されど、戦いが終わったわけではない。
「一〇対一。いや一〇対二だったはずが、残るは隊長の俺だけか。ミスターシノビとやら、今は亡き五馬乂様に匹敵する、〝勇者の秘奥・葉隠〟の使い手と戦えるとは光栄だ。ならばこそ、その首をもらってゆく」
冒険者組合本部を襲った〝鋼騎士〟の隊長、志多都十夢は、蒸気鎧のエンジンを全開で回し、オルガンパイプ型排気口から赤黒い煙をたなびかせつつ――。
孝恵の護衛を務めるアルバイター、ミスターシノビの偽名を名乗る五馬乂と、彼の首に巻きつく三毛猫に化けた三縞凛音に対し、身の丈ほどもある巨大斧を叩きつけた。
「かの〝C・H・O〟の〝剣鬼〟鷹舟俊忠を超えるべく鍛えた我が奥義――〝山崩し〟――、お前に見切れるか!」
蒸気鎧が生み出す膨大なパワーと、それを制御しうるベテラン冒険者のテクニックが相乗作用となって、変幻自在の一〇連続攻撃が放たれる。
「はっ。今のオレに見切れない技なんて、なにっ!?」
天狗面をかぶった金髪少年、乂は、首筋にマフラーのように巻き付いた三毛猫姿の凛音から、〝鬼神具・ホルスの目〟の力を借りることで、志多の攻撃を予知できた。
未来をも見通す演算能力が、絶体絶命の窮地にあると告げる。このままでは、志多の必殺技、〝山崩し〟を回避することは不可能だ、と。
「志多。お前の言う通り、以前のオレならダメだったかもな」
「にゃー(乂)」
乂は、相棒たる少年、出雲桃太と一体化し、共に戦う中で理解した。
ただのヒトに過ぎない彼が、どうやって鬼と戦うか?
空気の音から心音までも聞き届け、わずかな隙、わずかな力の強弱すら見抜いて、タイトロープを渡るように生と死の狭間を切り抜けるのだ。
「凛音、二人でやろう。オレ達が力を合わせれば、絶対に勝てる!」
乂ひとりでは、桃太の真似をするのは不可能だろう。
しかし、ここには半年前の騒乱で、彼の腕中に奪い返した幼馴染、三縞凛音がいる。
「にゃー(死ななければ、どんな傷だって癒やしてみせる)」
乂は、椅子やソファを紙切れのように消し飛ばしながら迫ってくる、連続技に対し……。
凛音が灯す治癒の炎で癒しつつ、真っ向勝負で殴り受けた。
特殊合金の正門すら破壊した巨大斧とぶつかって、乂の指が裂け、腕がきしみ、足が悲鳴をあげても、志多を相手に撃ち合うのをやめない。
「うおおおおおっ」
「ふんぬうううっ」
なぜなら乂の首筋には取り戻した大事な幼馴染が巻き付いているし、心臓には、額に十字傷を刻まれた少年と、サメの着ぐるみをかぶった銀髪碧眼の少女がくれた熱が宿っている。
「オレは、相棒とサメ子、凛音に誇れるオレでありたい。だから、勝つっ」
「ふははは。我が好敵手、鷹舟俊忠よ。俺は、遂に――お前を超える戦士と巡り合えたぞっ」
乂は、凛音の助力を得て、炎と風をまとった短剣で、志多の振るう巨大斧と切り結び――。
「やって、乂!」
「変幻抜刀・炎風斬!」
「なんと、まさか、抜かれた!?」
ほのわずかな呼吸、肉体動作のゆらぎを突いて短剣を繰り出し、灰色鎧を破壊して蒸気機関を沈黙させる。
「……二体一だから勝った。タイマンならアンタの勝ちだ」
「謙遜は無用。お前達の勝利、みごと、なり」
コメント
1件
おお、第157話読み終えたわ!乂と凛音の連携、めっちゃ熱かったな。未来予知で「回避不可能」って告げられても、なお真っ向勝負で受け切る覚悟とか、もう最高すぎる。「俺は俺に誇れる自分でいたい」って台詞、心にきたわ…。志多も最後に「好敵手」って認めてくれてて、敵ながら爽やか。決着のカタルシスが気持ちよかった!