テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆゆゆゆ
172
ゆゆゆゆ
381
#Nosferatu
ゆゆゆゆ
951
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……取れた」
セブンが呟く。
その声はいつも通り落ち着いていた。
だが。
モニターに表示された文字は、まったくいつも通りではなかった。
Administrator Access Granted
完全管理者権限。
ゲーム世界の頂点。
ルールを作る側。
いや。
ルールそのものを書き換える側。
Noliは一瞬固まった。
そして次の瞬間。
「――ははっ」
笑う。
「ははははは!」
椅子から転げ落ちる勢いだった。
「取れた!」
机を叩く。
「本当に取れた!」
「静かにしろ」
「無理だよ!」
Noliは勢いよく立ち上がる。
画面に飛びつくように身を乗り出した。
「セブン」
「なんだ」
「僕たち今、神だよ」
その言葉に。
セブンは少しだけ笑った。
否定はしなかった。
⸻
ゲームの中では何万人ものプレイヤーが遊んでいた。
平和な昼下がり。
誰も知らない。
世界の支配者が入れ替わったことを。
「まず何する?」
Noliが訊く。
「好きにしろ」
「いいの?」
「責任は取らないぞ」
「最高」
即答だった。
Noliはキーボードへ飛びつく。
数秒後。
世界が変わった。
プレイヤーたちが突然空へ浮き始める。
「!?!?!?」
「重力消えた!!」
「なにこれ!?」
「バグ!?」
街中の人間がふわふわと空へ流される。
建物も。
車も。
オブジェクトも。
全部。
空へ。
Noliは爆笑していた。
「綺麗だ!」
「人が風船みたいだ!」
「最低だな」
「褒め言葉だね」
⸻
次はセブンだった。
数行コードを書く。
エンター。
世界が暗転する。
そして。
空の色が反転した。
黒かった夜空が白く染まる。
青空は深紅になる。
太陽は真っ黒。
雲は紫。
世界そのものが狂い始める。
チャット欄が爆発する。
「怖い!!」
「なんだこれ!?」
「終末イベント!?」
「運営助けて!!」
「目がおかしくなる!」
Noliは涙を流して笑っていた。
「セブン!」
「見ろよ!」
「芸術だ!」
「そうか?」
「最高だよ!」
⸻
さらに一時間後。
二人は完全に遊んでいた。
巨大なプレイヤー。
豆粒みたいなプレイヤー。
空から魚が降る。
木が歩く。
地面が波打つ。
もはやゲームですらない。
夢と悪夢の中間だった。
そして最後に。
Noliが言った。
「神ならさ」
「なんだ」
「崇められたいよね」
嫌な予感しかしなかった。
数秒後。
世界中のプレイヤーの画面にメッセージが表示される。
巨大な文字。
空いっぱいに広がる。
⸻
WE ARE WATCHING
⸻
その下には。
二人のシンボル。
007n7。
Noli。
チャット欄は地獄になった。
「誰!?」
「運営じゃないの!?」
「怖い怖い怖い!」
「神!?」
「助けて!」
「降参します!」
「許してください!」
Noliは腹を抱えて笑っていた。
「見ろ!」
「崇めてる!」
「誰も崇めてない」
「雰囲気だよ」
「便利な言葉だな」
⸻
数万人が混乱する中。
Noliは突然立ち上がった。
そして。
セブンへ手を差し出す。
「ん?」
「踊ろう」
「は?」
「神様らしく」
意味が分からない。
いつものことだった。
Noliは待たない。
強引にセブンの手首を掴む。
「おい」
「世界を見ろよ」
窓の外ではなく。
モニターの中。
空は赤い。
重力はない。
世界は壊れている。
数万人が右往左往している。
その全てを。
二人が操っている。
Noliは笑う。
心の底から楽しそうに。
「世界は僕たちの劇場だ」
その言葉は冗談じゃなかった。
本気だった。
狂気だった。
そして。
少しだけ眩しかった。
「さあ、踊ろう」
Noliはセブンの手を引く。
「僕たちが主役だ」
狭い部屋の中。
音楽なんてない。
あるのはPCのファンの音だけ。
それでも。
二人は即興で踊っていた。
世界を壊しながら。
神を演じながら。
まるで子供が夢を叶えたみたいに。
セブンは呆れながらも手を振り払わなかった。
その夜。
二人は確かに神だった。
もちろん本物じゃない。
ただの不正アクセスと悪ふざけだ。
明日になれば終わる。
消える。
忘れられる。
それでも。
モニターの光の中で笑うNoliを見ていると。
ほんの少しだけ。
本当に世界を手に入れたような気がしたのだった。