テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#創作
2,263
荷車を引いてやって来たのはノアだった。彼のことは信用できる。フィル様が唯一友と呼べる人物だし、実際良い少年だ。 ゼノが椅子から立ち上がり階段を降りてノアに近づく。
俺も階段を降り、門の手前で二人を待った。
遠慮して手を横に振るノアを押し切って、ゼノが荷車を後ろから押している。俺も手伝うべきかと迷ったが、ノアが困った顔をしていたので、二人が門の中に着くまで待っていた。
テラスの前で荷車を止めると、ノアが俺に向かって頭を下げた。
「お久しぶりです。これからはよろしくお願いします」
「ああ。元気そうだな」
「はい!俺、病気したことないんで」
「そうか。だがこれからは、もし困ったことがあれば俺を頼ってくれ」
「ええっ?いいのかな…」
「きっとフィル様も、そう仰る」
「…わかりました。じゃ、遠慮なく。ラズールさんも困ったことがあれば、すぐに言ってくださいね。俺ができることなら手伝いますんで」
「わかった。ところでこの荷物は?」
「ゼノさんに頼まれてた、生活用品です。足りなくなったら俺に言ってくれれば、すぐに用意します」
「そうか。重かっただろうに。ありがとう」
「いえいえ。これが俺の仕事ですから。ところでフィルは、まだ帰って来てないんですか?」
暑かったのか、ノアの額に汗が浮かんでいる。荷物の片付けは後でいいから、とりあえず座れと、先ほどまで座っていた椅子を指し示した。だがノアは「ここでいいです」とテラスに直接座ってしまう。
ゼノが「遠慮することないのに」と苦笑して、部屋の中に入っていった。しかしすぐにコップを手に戻ってきた。
「ノア、疲れただろう。柑橘系の果汁を入れた水だ。疲労回復にいいぞ」
「ありがとうございます」
ぺこりと小さく頭を下げて、ノアがコップを受け取り水を飲む。「ほんとだ!おいしい!」と目を輝かせると、一気に飲み干した。
「もう一杯いるか?」
「大丈夫です。俺、こんなふうに水を飲んだことなかったんだけど、ちょっとした工夫ですごくおいしくなるんですね!大発見!ふふっ」
「それは良かったな」
満面の笑みのノアにつられたのか、ゼノも楽しそうに笑う。
この子の傍にいれば、フィル様も自然と笑顔になるのだろうなと、胸の中が|灯《あかり》が|点《とも》ったように温かくなる気がした。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!