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放課後の校舎裏、夕日に染まった空の下で、私は彼を待っていた。
風吹くたびに、セーラー服のスカートが揺れて、彼と過ごした時間が思い出のように浮かんでは消える。
「……遅いな、健斗くん」
彼は、いつも約束には送れなかった。
真面目で、不器用で、でも誰よりも優しい人だった。
―「俺、遠くに行くんだ。たぶん、もう会えない」
その言葉を聞いたとき、頭が真っ白になった。
泣かないって決めたのに、あの日、私には泣いてしまった。
「嫌だよ」って必死に縋った。
でも、健斗くんは、そっと私の頭を撫でて、微笑んだ。
―「もしまた会えたら、そんときは、ちゃんと伝えるから」
「何を?」
―「……全部だよ」
それが最後の会話だった。
…そして今日が、あれからちょうど1年目。
会えないってわかってる。
だけど、ここに来ないと、心が張りや裂けそうになる。
ふと、ポケットに入れたままの小さな星のチャームを握る。
彼がくれた、2人だけの「約束」の証。
「健斗くん、私はまだ、あの時の返事を待ってるよ」
空には、あの日と同じ星が輝いていた。
もう会えなくても、忘れられなくても、
私は、ずっと、あなたが好きだった。
―ねえ、あの時、言えなかった言葉を、
今なら、ちゃんと伝えられるのに。