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千紘の指が動くと、それに合わせるかのように凪の声も高く漏れる。吐息を激しくつきながら、時折大きく息を吸い込む。乱れた呼吸が一層興奮を駆り立てた。
ずっと快感がまとわりついて、それでもそれ以上の気持ちよさがあるのなら、この程度の快感で終わりたくない。そんなふうに思った凪は、無意識の内に腕を伸ばし、指先で空を切る。
「凪、どうした?」
余裕のなさそうな凪に、千紘は顔を覗き込むようにして尋ねた。必死に喘ぐ凪の唇の間から、チロリと赤い舌が見えて思わず喉を鳴らした。
どうしたのかと聞いておきながら、欲に負けた千紘は、かぷりと唇ごと頬張るようにして唇を重ねた。
唇を舌でなぞり、舌を絡める。唾液同士が混ざりあって、官能的な音がした。一方的に千紘から口内を攻めていたはずが、向こう側から押し返される感覚を抱き、千紘は一瞬眉を上げた。
凪の唇が上下に動き、千紘の舌先を挟み込んだ。凪からも積極的な絡みを感じて、千紘は体中がぶわっと熱くなる。奥底から何かが沸き上がってくる。
興奮を超えて、本能が勝る。初めて凪を抱いた時のように、もう制御ができないほどに凪を求めた。
ただ、頭の片隅には凪の嫌がることはしない。その約束が残っている。しかし、そんな時に限って凪の両腕が千紘の首の後ろに回って、凪の方に引き寄せられるものだから、嫌がってるなどという都合の悪い解釈はどこかに追いやられてしまった。
千紘の中に残ったのは、凪を欲する黒い感情と、純粋に好きだという愛情だけ。
凪のことが好きだと感じるほどに、その彼が自分を求めていることが伝わってきて、それだけで射精してしまいそうなほどに歓喜した。
「はっ、はっ……」
少し離れた唇から、凪の息遣いを感じる。唇に熱が触れるだけで千紘はゾワゾワと快感に震えた。
虚ろな凪の瞳が千紘の視線を独占した。凪も興奮しているのか、目が充血していた。それでいて潤んだ角膜を隠すように軽く瞬きをする。
そんな些細なアクションでさえ妖艶に見えた。
「……もっと」
凪の腕の力が強まり、千紘の耳に届く微かな声で呟いた。その声は、喉を駆使して少し枯れていた。
千紘は一瞬自分の耳を疑った。あんなにも嫌われ、拒絶されていたはず。一度抱いてしまえば、あとは心を手に入れるだけ。そんな安易なことも考えた。けれど、いざ凪から千紘を求める言葉をもらったら、とてもそれが現実だとは思えなかった。
「……もっと?」
確認するように、千紘は聞き返す。もしかしたら聞き間違いかもしれない。そうであってほしくないと願いながら待てば「ん……もっと、気持ちよくなりたい……」と今度はしっかりと聞こえる声音で、凪の口が動いた。
それを確認すると、千紘の胸の中がぎゅーっと締め付けられるように痛くなって、愛しさが倍増した。同時に凪の期待に応えたくて、集中力が高まった。
「いいよ。いっぱい気持ちよくしてあげるから、俺に任せて」
甘く囁く千紘の唇は、凪が好む耳へと迫り、中で蠢く指先はコリコリと繊細な凪の神経を刺激した。
千紘の下で乱れる凪は、今まで見た姿とは違って見えた。より淫らでそれでいて美しく、まるで絵画のように一場面ごとを目に焼き付けた。
凪は既に恥もプライドも忘れていた。欲望が先走って、快感以外なにも考えられなかった。千紘に任せておけば、もっと気持ちよくなれる。そんなふうに考えてしまうほど、麻薬に侵されていくかのように蕩けて堕ちていく。
千紘の指だけでは満足できなくなってきた凪は、指先を滑らせて千紘の鎖骨に触れた。
「もっと?」
何かの合図かと感じ取った千紘は、眉を上げた。
「んっ……はっ、もっとっ……」
自ら腰を揺らす凪が欲するものがなんなのか想像するだけで、千紘の下半身は何度か跳ね上がった。パンパンに膨れ上がり、筋が浮き出している。
「凪、どうしてほしいか言って? じゃなきゃ、あげない」
千紘は今なら欲しい言葉をくれるような気がして、自分の欲望をぐっと堪えて一度唾を飲み込んでから凪を煽った。
「もっと、気持ちくっ……」
凪の両手が千紘の両腕を掴む。上腕二頭筋が綺麗に浮き出て、凪はその形に沿わせるように角度を変えた。
「気持ちくってここ? 指、気持ちい?」
「ん、ぁっ……気持ちっ……指、足りな……」
少しずつ凪の欲が近付くのを感じて、千紘の全身に鳥肌が立った。誘導すれば、あと少しで聞ける。凪の口から聞きたかった言葉が。
千紘は、ウズウズと逸る気持ちを抱きながら、なんとか落ち着こうとギュッと一旦口を結ぶ。一呼吸置いてから「指足りないの? もう2本入ってるよ」とわからないふりをしながら首を傾げた。
本当なら、今すぐにでも熱くなった肉棒をねじ込んでしまいたかった。それを我慢したのは、最高の一瞬を手に入れるためだ。
早まるな、と自分に言い聞かせた千紘は、付き纏う煩悩と戦う。
「あっ、あぁっ……んぅ、足りないっ、もっと」
はあはあと息を乱しながら求める凪だが、肝心なことは言わないものだから、千紘の中にももどかしさが募る。
2人の異なる欲望は、満たされないまま、お互いに苦しい時間が流れていく。
「足りないの? じゃ、何が欲しい?」
千紘は、わざわざ硬くなった下半身を、同じようにビクビクと求めている凪の竿に擦り合わせた。
滴り落ちる凪の液体が、ヌチャッと千紘の熱を引き寄せる。ヌルヌルと2つの固体が触れ合うと、双方に電流が走るかのように予想していなかった快感が駆け抜け、大きく体を反応させた。
「はっ……」
千紘でさえ、一瞬射精してしまいそうになり、大きく息を吐いてキツくシーツを握った。見下ろした先に見える凪の反応を見れば、自分と同じような状況で、お互いにもう無理かもしれない、と強く目を瞑った。
次に目を開けた時には、ほぼ同士に2人の距離が近付いた。