生きる光
・桃青
・長編
#ゆきにゃの初コンテスト!
23時。
いつも通り残業を終え、帰路に着く。
こんな遅い時間だと、いくら都会と言えど人はまばらで。
一分に何度か車が通るくらい。
「……」
こんな生活になったのはいつからだろう。
早朝に起きて、7時半くらいに会社に向かって、
それからずっと仕事で、終わるのは最低でも21時は過ぎてる。
そこから家に帰ってまともに飯も食べずに眠りに落ちる。
最近美味いもの食べてないな…、
こんな生活だし金を使うような趣味も無く、正直稼ぐ意味もない。
辞めてもいいのだけれど、辞めたら俺の唯一の意義がなくなってしまうような気がして。
…いや、そもそも生きなくてもいいのでは?
変わらない日々を送るくらいならいっそ死んだ方がマシかも。
「ぁ…、」
少し先から車の光が見えた。
こちら側にウインカーを出している。
気付いたら吸い込まれるように道路に向かっていた。
何もない人生だったなぁ
『待って、!!』
グイッ
「ッえ…」
誰だ。
振り返って目に映ったのは緊迫した表情の桃髪の男。
初めて見る顔。なんで…
『…よかった、』
「なんで…助け…」
『なんで、って…』
『助けることに理由なんていらなくない?』
そう言って少し笑った貴方は太陽のようだった。
眠れなかったので外に出てみた。
何か面白いものでもあるかと思って来たものの、
当たり前だが23時ともなれば人は少ない。
店もいつも開いている訳ではないし、特に気になるものはなかった。
『今帰ったら寝れるかな~…』
前の生活に完全に慣れてしまって、夜遅くならないと眠れない体質になってしまった。
深夜でも関係なく電話はかかってくるし、
サビ残も当たり前。
流石に耐えきれなくなって辞めた。
『…あ、』
ふと目についたのは高身長のサラリーマン。
この時間に帰っていると言うことは、前俺の居たようなブラック企業…か、どこか寄った帰りか。
普通の会社なら定時に退社して寄り道したとしてもこんな時間には中々ならないはず。
…ブラック勤めかな。
『…え?』
その人が引き寄せられるように道路に向かっている。
いや、道路を渡るのは当たり前なのだが、彼が向かっているのは赤信号。
しかも奥からウインカーを出した車が迫ってきている。
“助けなきゃ”
そう思ったときには既に体が動いていた。
『待って、!!』
グイッ
「ッえ…」
『よかった…っ、』
ひとまず無事だ。俺も彼も。
「なんで…ッ、?」
死ななくて済んだのに問いかけられるなんて。
死にたかったのなら申し訳ないけど、
『助けるのに理由なんかいらないでしょ?』
そこで初めて目が合う。
彼の目は生気がない、希望を失った暗い青の目だった。
『スープ。味見ではまぁまぁ美味かったよ』
コトンッ…
「……ありがとう、」
確かに美味しそう。手料理とかいつぶりだろ。
…俺なんかに優しくしてくれんでええのに。
「これ、ほんまに食べてええん、?」
『いいに決まってるじゃん!』
「…ありがと、いただきます…」
「、!うま…、」
いつもコンビニ弁当しか食べてなかったし、そもそも食べないときも多かったから手料理なんて美味いに決まってる。
『は~、よかった…』
「…?料理不安だったん?」
『まぁそれもあるけどさw』
『やっと笑ってくれたなって』
「あ…」
そういえば最近笑ってなかったな、勿論この人と会ってからも。
『名前、聞いてなかったけどなんて言うの?』
「…蒼瀬…、依符。」
『いふ…うーん…』
ちょっと考え込んだあと口を開く。
『あ!まろ!!』
「…え?」
「ま、まろ…?」
『まろ!俺だけのあだ名~♪』
「……(呆然)」
本当に太陽みたいな人やな…。
「え、えっと…貴方はなんて?」
『俺はないこっ、苗字は~…まぁいいでしょw』
「ないこ……さん、?」
『なんで急に敬語なのwまろの方が多分上でしょ?』
『タメでいこうよ』
「あ…うん…、」
それからしばらく話をした。
俺が死のうとした理由とか、ないこの詳しいこととか。
会ってから数時間しか経っていない人にこんな話をするのは正直憚られたが、
圧に負けて全て話してしまった。
『やっぱりそうだったんだ…』
「…やっぱり?」
『俺もブラック勤めでさ~wといっても、もう辞めちゃったんだけどね』
「辞める…」
同じブラック経験のある者としても、思考はだいぶ違うらしい。
ないこはもっと自分のやりたいことをやりたくて仕事を辞めたけど、
俺は自分のやりたいことなんてないし、会社に異論はあっても辞める選択はできないでいる。
『まろも辞めたら?』
「…ぇ…、うーん…」
『俺、まろにもちゃんと生きてほしいな』
「…、?仕事してても生きてるやん、」
『まぁそうなんだけどさ~…、心が死んでるって言うか、?』
「心…?」
『そうそう。仕事だけで休みもそんなにないし、奴隷みたいな生活じゃん』
それはある。
いつも仕事しかない人にキラキラした気持ちなんか生まれる訳もなく。
希望とか、夢とか、趣味もない人間だ。
「……もう死んでるかもな」
『こら、自分でそんなこと言わないの!』
「そういう話してきたんはそっちやろ…」
『そうだけど…!!』
やっぱり、不思議なやつだな。
「…じゃ、そろそろ帰るわ…、」
流石にそろそろ眠い。
明日も仕事だし。
『えっ、帰るの?』
帰らないとでも思っていたのだろうか。
「帰るに決まっとるやん…。会って1日も経ってない人に泊めさせてもらおうとは思っとらんよ」
『俺は全然いいんだけどな~…』
『あ、じゃあ見送りだけさせてよ』
「え、?ええけど…気ぃ使わんでええんよ?」
『気遣いとかじゃないよ、目離したらまた飛び込みそうだし』
「……」
否定はしないでおこう。
「じゃ…、色々ありがとう、」
『いえいえ~。死ななくてよかったよ』
『…あ、そういえば』
そう言って何か渡してくる。
「ん、?連絡先…?」
『また話したかったら連絡してよ、相談くらいは乗れるからさ』
「…ありがとう、」
あれから数日。
相変わらずつまらない日々だけど、
少しだけ、変わったことがある。
『まろ~!』
「ないこ…、おはよ」
『おはよっ!』
休みの日にないこと会うようになった。
長い時間一緒にいるわけでもないし、
特にどこかに行くわけでもないけれど。
その時間が少しの息抜きになっている気がする。
『まろ、前より明るくなった?』
「え、そう、?」
『うん!初めて見たときと違うよ』
「そっか…」
「…ないこのお陰やね、w」
『えっ?』
「ないこに会ってから、ちょっとは楽しく生きれてる気がするから、」
「あの時…止めてくれてありがとう、」
『……』
思っても無かった言葉。
もちろんめちゃくちゃ嬉しい。
『…よかった…、』
『よかったぁぁ…(泣)』
ギューッ
「おわッ…!?」
「ちょ、ないこ…っ、w」
『あ、ごめん……』
『嬉しくてさぁ…っ、』
「別にええんやけどな…?」
『まろ~~…(泣)』
「なんでそんな泣いてんねんw」
俺は、
貴方の生きる希望になれましたか?
ほわ~~~っっっっ!!!!
長かった…ここまで読んでくれてありがとうございます…✨️
なんか途中から自分でも「ん?んん??」ってなったんで拙い文だと思いますがそこは優しい目で見てください…
そしてゆきちゃ、出すって言ってから一ヶ月ぐらい経っちゃって大変申し訳ございませんでした…
感動系部門作れたらそこで、無理だったら恋愛に入れといてくださいm(_ _)m
何回か二人の視点が入れ替わってるのわかりましたか?
罫線とか入れてないので分かりづらいかもですが確認してみてください👐🏻
あと2/1は去年5月ぶりのないふ配信なので皆さん見ましょう🔪🔪🔪🔪🔪
ありがとうございました!!w
コメント
3件
うぁー!!すきなんだが! なんかめっちゃ恋愛感情ある!! って感じじゃなくて 友達!みたいなの好き👊🏻💗 無事刺さりました💘💘💘 参加ありがとー!!!