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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第114話 〚理由のない優しさ〛
― 澪視点 ―
教室に入った瞬間、
空気が違った。
ざわざわしてるのに、
うるさくない。
視線は感じるのに、
痛くない。
(……あれ?)
席に着くと、
えまが自然に隣に来る。
「おはよ」
声が、
やけに柔らかい。
しおりは、
筆箱を落とした私に
すぐ反応する。
「大丈夫?」
いつもより、
近い。
みさとは、
何も言わずに
プリントを回してくれた。
りあは――
一瞬だけ目が合って、
にこっと笑った。
意味深。
(……なに?)
誰も、
何も聞いてこない。
昨日のことも。
帰り道のことも。
階段のことも。
なのに。
どこか、
包まれてる感じ。
授業中。
後ろから、
小さな声。
「尊……」
聞こえた気がした。
気のせい、
だと思う。
休み時間。
女子たちが
ひそひそ話してる。
でも、
私を見ると
話題が変わる。
視線は、
やさしい。
(……優しすぎない?)
居心地が、
悪くない。
むしろ、
落ち着く。
何かあったのかな。
私、
何かしたかな。
考えても、
分からない。
でも。
責められてない。
探られてない。
ただ、
そっとされてる。
それが、
ありがたかった。
昼休み。
私は、
少しだけ思う。
(……昨日の帰り道、
何か、あったっけ)
思い出す。
階段。
夕方。
手首。
顔が、
少し熱くなる。
(……関係ないか)
私は、
深く考えるのをやめた。
理由がなくても、
優しい空気は
受け取っていい。
今日は、
そんな日。
私は、
女子たちの中で
静かに呼吸する。
知らないところで。
たくさんの“尊い”が、
私を守っているなんて――
まだ、知らないまま。
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