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相変わらずゆりは1人で下校する。
まだ高くて強い日差しを避けるように、新緑の陰を選んで歩く。
家に帰るといつものようにすぐ、スケッチブックを持って公園に行く。
ゆりはあの日以来、魔女の家には行ってない。
“魔女につかまる”のが怖いというより、勝手に庭に入って逃げていったことへの罪悪感の方が大きいのかもしれない。
でも本当は、あの魔女の家や庭をもう一度見て絵に描いてみたかった。
ゆりが公園に着くと、イチョウの木の上から猫の鳴き声がするのに気づいた。
急いで木を見上げると、いつかの黒猫が下りられなくなっていた。
ゆりはどうしようかと悩んだが、周りに大人もいないし、自分で助けることにした。
木登りが得意ではないゆりだったが、なんとか黒猫の近くまで登ることができた。
「もう大丈夫だよ。」
ゆりが手を伸ばすと、黒猫はおそるおそるこっちにやってきた。
あと少しで届くと思ったその時、
“、、バキッ”
黒猫が乗っていた枝が折れて、下に落ちていく。
「あぶないっ!!」
とっさに黒猫を引き寄せたゆりは、そのまま一緒に落ちてしまった。
「痛っ、、、、」
ゆりは大きく尻もちをついた。
いつの間にか手から離れていた黒猫はどうやら無事のようで、心配そうにこっちを見ている。
お尻の痛みと、落っこちた恐怖でゆりは泣きだした。
すると誰かが慌ててゆりに近づく。
「どうしたの!?」
─ま、魔女だ、、
「ね、ねこが、、木の上にいて、、、それで助けようとしたら、、木が折れて、、」
イチョウの木を指差して、泣きながらゆりが答える。
「そうだったのね。どこかケガをしてない?」
ゆりはよく分からず泣きじゃくる。
すると、魔女が歌いだした。
聞いたことのない外国の歌だった。
魔女はゆりの頭をなでながら、優しい声で歌ってくれた。
聞いてるうちにゆりの涙は止まっていた。
「私の娘も、この歌を歌うといつも泣きやんでくれたわ。」
魔女はそう言って微笑んだ。
「今お家の人は家にいらっしゃるかしら。」
「まだ帰ってないと思います。」
いつもあと1時間くらいは帰ってこない。
「じゃあ帰ってくるまでは、私の家にいるといいわ。」
「えっ、、」
「その傷の手当をしないと。」
魔女が指差したところを見るとゆりのひじが擦りむけていた。
「背中に乗って。」
ゆりは魔女におぶってもらう。
魔女の背中はあったかかった。