コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
魔女の家は広かった。
家具や小物はどれも外国のもののようで、どこを見てもゆりには目新しかった。
魔女はゆりをリビングのソファに下ろし、棚にしまってあった救急箱で、ひじの手当をしてくれた。
「他に痛いところはない?」
ゆりはお尻をさする。
「だ、大丈夫です。」
だいぶ痛みはひいたみたいだ。
「それは良かったわ。」
と魔女は微笑んだ。
「あなた第1小学校の子?」
「はい、5年生です。春に転校してきました。」
「もしかして、公園の向こうに越してきたお家かしら。」
「そうです。」
ゆりはうなずきながら答える。
飲み物を用意してくれると言って魔女が立つ。リビングから見えるキッチンに立つ魔女は、今日も黒い服を着ている。
「ミルクティーでいいかしら。」
「は、はい。」
カップとスプーンが、混ぜるたびにカランカランと音を立てる。
「はい、お口に合うといいんだけど。」
「い、いただきます。」
口の中に、紅茶の香りと牛乳の甘さが広がる。
「とってもおいしいです。」
「良かったわ。」
魔女が微笑む。
ゆりはあっという間に飲んでしまった。
「ごちそうさまでした。」
ゆりがカップをテーブルに置くと、魔女がスケッチブックを持ってきた。
「あ、、、」
─この前落としたやつだ。
「これ、あなたのかしら。」
「、、あの、、この前は勝手に入ってすみませんでした!!」
ゆりが謝ると魔女は困ったように首を振る。
「いえいえ、こちらこそごめんなさい。この前は驚かせてしまったわ。」
てっきり怒られると思ってたゆりは、目をパチクリさせる。
「これ、とっても素敵な絵ね。」
─あの日描いた茶色の黒猫だ。
「いえ、それは色も間違ってるし、実物はもっとかわいいです。」
「そうかしら。私にはこの絵はとても良く描けてるように思えるわ。だってこの目は間違いなくリリーの目だもの。」
「リリー、、、?」
「そう、さっきあなたが助けてくれた私の大切な家族。あなたの描いたリリーが私はとっても好きよ。」
ゆりは目頭が熱くなった。
初めて自分の絵を好きといってもらえた。
その一言がゆりに自信を与えてくれた。
「ありがとうございます。」
ゆりは涙の滲んだ顔で微笑んだ。