チュン…チュチュン
「んん”…今何時…」
鳥のちっこい声で目が少しずつ開く。時計を見ると11時、みんなは授業を受けている時間帯だ。私も昨日は真面目に授業に参加していた。
私はいわゆる、いじめられっ子というものだ。いつからか分からない。でも、きっと他のいじめられてきた子よりも軽いもののはず。私は学校に来たくないとか、辞めたいとか思ったことないし。ただ、落書きをされて、ゴミを靴に入れられて、消しゴムとか投げられて…無視されて。ただ、そんだけ。大丈夫。大丈夫。
とにかくご飯だ。クラスメイトからは無視されるから、最近はずっとトイレで食べてる。漫画みたいに屋上とか開いてないし、一緒に食べる人もいないから。
キィッ、ガチャッ…
お弁当の袋を手に持って個室に入る。便器に座り、膝の上に弁当を広げる。中にはお兄が作ってくれた弁当が入ってる。学校で楽しみなのはこの時間だけ。私は部活にも入ってないから友達もいないし、特に趣味もない。この時間のこのスペースだけが私の居場所だ。
「んでさーさっきあいつがさぁー笑笑」
「んえぇー?まじぃ?きっしょーい笑まじないわー笑」
この声…クラスの人たちだ。私が机の落書きを消してる時とか後ろでずっと笑ってる。多分…そういうのはこの人たちがしてるんだと思う。
「にしてもあいつきもいよなー笑毎日落書きとかしてやってるのに学校来続けるしさぁ?まじ空気とか読めねーんだろなー笑」
「えそれなぁー笑消しゴムとかカスとか投げてるけどおもろい反応しねーしほんとつまんねー笑」
え、…私のこと。だよね。バレてないかな。ここにいることバレたらきっと酷いことをされる。悪口聞いてるし、何より便所飯だ。馬鹿にされる。
そう思うと足が震えてきた。怖い。お願い、私に気づかないで。早く…どこかに行ってほしい。
そう願ってるうちに、話し声は遠くに行った。安心した。けど、膝の震えは止まらない。おかしい。私はここまでつらくない。つらがってない。止まって。震えないで。そう思って膝を抑えようと手を伸ばした。その時、手に弁当が当たった。
…落としてしまった。
便器の下の方まで散らばったご飯粒。ドアのすぐそばまで転がるトマト。上履きについてしまったハンバーグの甘ったるいソース。…お兄が作ってくれたお弁当なのに。
あぁ…もう。なんかどうでもいいや。
お弁当を拾い上げる。そんな些細な動作ができなくなる。体が動かない。重い。頭が重い。どんどん背中が曲がっていって、トイレの壁によりかかってしまう。
目をはっきりと開けられない。薄目でご飯だったはずのものを見る。くそ。なんで私がこんな。なんで、なんで。そう思って涙が溢れる。
…もう。学校に来る意味ないな。
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