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初恋act

10 - 第10話 はじめてのデート

2024年07月08日

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約束のデートの日。

学校休業日がちょうどあって、この日が一番人が少ないということから、三上さんに頼み込んであけてもらった。


デートだとは言わなかったけど、三上さんは鋭いから何か勘づいているかもしれない。

私たちはパパラッチに狙われないように時間をズラして、目的地の中間駅で合流することになった。


緊張するなぁ……。

今日がくるまで洋服は何を着ていこうとか、どんな髮型にしようとか、悩みに悩んでやっと決めた。デート服は白いワンピースが確実だってスタイリストさんが言ってるのを聞いて、慌てて買ったワンピース。


こういう服は雑誌の撮影でしか着ないから、落ちつかないな。


気に入ってくれるといいんだけど……。


待ち合わせの駅に着くとホームに黒い帽子を深く被った蓮がいた。


顔をうつむかせて待っている。


ふふっ、ゆっくり近づいて驚かせよう。

後ろからひっそり、近づいてひょこっと顔を出す。


「わ!」


私が声を出すと、ー瞬、大きく目を開けてからそっぽを向いて言った。


「早く行くぞ」


えっ?なに、その反応……。


黙って電車に乗る私達。

隣同士に座るけれど、電車は平日ということもあってかガラガラで、沈黙が気まずい。


蓮は私のことを見てくれないし、なんだか機嫌が悪いようにも見えた。


話しかけない方がいいのかな?

もしかして服装が遠の好みじゃなかったのかな?


色々考えてしまった。


なんか最初からわたしだけ浮かれてからまわりしてる気がする。

一生懸命巻いた髪も、勇気を出して買った洋服も、私らしくないって思って恥ずかしくなってきた。


「悪い……」

「私の方こそ……浮かれててごめんね」


「ちがう……俺が悪い。想像以上に可愛くて……何も言えなかった」

「えっ?」


小さな声で伝える蓮の顔が見たくて、私は顔を覗きこむと、そこには顔を赤らめながら必死に目をそらす蓮の姿があった。


「バカ、見んな」

「可愛い……」


「からかうなよ」

「だって私……普段と違う服だし、似合ってないのかなって不安になって」

「そんなわけねえじゃん。めちゃくちゃ似合ってるつーの」


そっか、似合ってないわけじゃ無かったんだ。

頑張ってオシャレして良かった……。


15分ほど電車に乗ると、ようやくテーマパークについた。

人は予想していた通り少ないものの、全くいないわけじゃない。気を付けないとね!


遊園地の入り口のゲートをくぐると、帽子を深くかぶる。


「バレないようにな」

「うん!」


中に入ると様々な乗り物があった。


「すごい……」


よくよく考えたら私、遊園地に来るのって初めてだ。

小さい頃も仕事ばかりしていて、遊びに行くことが出来なかった。


いつか友達と来られたらって思っていたけれど、まさか彼氏と来ることになるとは思わなかった。


「あれ、乗らね?」


蓮がそう言って指を指したのは、コーヒーカップであった。


「いいね!」


しかし、案内板にはこんなことが書かれている。


【このコーヒーカップは遠心力で動いているので、ハンドルは飾りです。密着する事でスピードが早くなります】


み、密着……?


「ってことは、俺たちのカップがー番回るようにしなきゃな?」


そんな意地悪を言う蓮。

みんながいるのに、密着なんて出来ないよ……。


しかし、もう並んでしまっていたため、逃げることも出来ず15分くらい並んでいると順番が周ってきてしまった。

カップに乗り込むと、係りの人の陽気な声と共にスタートした。


「おい……何これ?」


私たちのカップはかなり緩回転。

距離はとてもカップルとは思えないほどに遠い。


「もっとこっち」

「だってみんないるし」


「今日はプライベートで来てるんだから。それに誰も俺たちなんか見てねえよ。ほら……隣見てみ?みんな自分たちで楽しんでるだろ」


蓮に言われるがまま、隣のカップルを見る。

視線は他人になんて向いていなかった。


そうだよね、ここは遊園地だし、みんなそれぞれの相手と楽しんでいる。


「ほら」


私をぐいっと引き寄せた蓮。

体がピッタリくっついてそれと同時にカップが高速に回転した。


「きゃあっ!」

「すげぇ」


思わず笑ってしまうほどグルグル回るカップは終了するまで早いスピードでまわり続けていた。


「カップがストップします」

「ずっと、回ってた……」


「確実に俺たちが1番だな」


小さな声で言った蓮に、ふたりで笑い合う。

蓮はいきなり激しい乗り物を乗ってしまったからと、私をベンチで休ませてくれた。


「何か買ってくるから、そこ座ってな」

「ありがとう」


ベンチに腰を下ろして、次は何をしようかななんて考える。

すると突然、背が高い男の子に声をかけられた。


「あの、すみません」

「あ、はい!」


目の前の彼は困ったように眉毛を下げた。


「実は無くしものをしちやったんです、一緒に探してもらえませんか?」

「あ、はい……!いいですよ」


こんな時に無くものをしたら、気分も下がっちゃうよね。


「良かった~実はこっちで落としちゃったんです」

「あ、落とし物って何を落としたんですか?」

「あ~~こっちに来れば分かります」


えっ。

なんで落としたものを教えてくれないんだろう。


変な行動に驚きつつも、彼についていくと聞いてくる。


「なんかさ、すごいスタイルいい子がいるなって思ってたんだよね」

「そんなことより、あの……無くし物って?」


「そんなのどうでもいいよ、キミみたいな子と遊べるなんて最高」

「えっ!無くし物があるって言うから」


距離を取ろうとした時、男は私をグイっと引き寄せた。


「てかさ、あれなんだっけ?芸能人に似てるって言われない?ほら、ドラマに出てた西野……」


マズい。

離れようと、彼の手を引きはがそうとした瞬間、私は誰かに引き寄せられた。


「なに人の彼女連れ去ろうとしてんだよ」


低い声の蓮。

初めて聞いた声に私も思わず身を震わせた。


蓮が鋭い睨みを利かせる。

すると彼は怖くなったのか、言い訳をし始めた。


「いや、出口が分からなくてさ案内してもらおうと……」

「出口はあっち。なんなら一緒に行きましょうか?」


低く、鋭く言い放つ蓮に驚いたのか、男はそそくさと帰っていった。


良かった……。


「蓮、ありが……」


お礼を言おうとした瞬間、デコピンをされた私。


「痛……っ、何するの!?」

「なんでほんの数分でいなくなるかな」


「だって、困ってるって言ってたから」

「あのなあ!男なんてみんなそういう風に言って、近寄ってくんだよ。この業界にいる癖にそんなのも知らねえのかよ」


「な……っ、みんななんて限らないじゃん!」

「もっと警戒しろ、バカ」


助けてくれたのは嬉しかったけど、バカまで言うのはヒドくない?


「いや……言い過ぎた。今日の花……特に可愛いから連れ去られたらどうしようって焦ったんだよ」

「へっ」


お互いに真っ赤になって、目を逸らす。

なんだか今日の蓮、素直で変な感じだ。


「助けてくれてありがと……カッコよかった」


そんなことされたら私まで、素直になっちゃうよ。


「ま、まぁ……まだ時間もあるし、めいいっぱい楽しむぞ」

「うん!」


それから私たちはお昼を食べたり、アトラクションに乗ったり、ショーを見たりして時間を過ごした。


「すっかり暗くなっちまったな」

「本当だね」


気づけば辺りは薄暗く、遊園地ももうすぐ閉園の時間。

あっという間に時が経ってしまった。


嫌だな、まだ帰りたくないな。

ずっと時間が止まってしまえばいいのに。


「最後はあれ乗って帰ろうぜ」


蓮が指差したのは観覧車だった。


観覧車か……初めて乗るから緊張するな。


係の人に案内されるがまま、ゴンドラに乗り込む。


「すごい……」

「観覧車も初めてなのか?」

「うん」

「なら、花の初めてもらい」


嬉しそうな顔をして笑う蓮。

観覧車はどんどん上へあがっていく。


特別な空間。

今だけは正真正銘のふたりの時間なんだ。


「もちろんさ、俺としては花が有名になってくれるのは嬉しい。でもその分、俺だけの花でいてくれる時間が短くなるのは彼氏としてちょっと寂しいもんなんだよな」


「そんなの、私もだよ」


私にも分かる、その気持ち。

蓮が有名になっていくこと、私も望んでいるけれど時折寂しくなる時がある。


会いたい時には会えなくて、でもテレビ越しに蓮は笑っていて、手を伸ばしても触れられない。

テレビの向こう側にいる女の子に愛を囁いたり、笑いかけたり、テレビの向こうの蓮はみんなの蓮になってしまうから。嬉しく思う反面、時々、寂しさを感じてしまうこともある。


でもそれが私たちの選んだ道だから。この先もずっと向き合って生きていくしかない。


「だからさ、今日この時間だけは花の笑顔も、涙も全部俺のものな?」

「うん……」


観覧車が頂上についた時、蓮はポケットから小さな箱を取り出した。


「誕生日おめでとう」

「えっ……私、誕生日?」


「忘れてたのかよ」

「誕生日イベントはいつも前倒しでやるから、なんか終わった感じがしてて……」


「今日が一番大事な日だろ?」


そうか、蓮が絶対にこの日にしようと言ったのは、私の誕生日だったからなんだ。


ふわりと笑う蓮は箱の中からキラキラ光るペンダントを取り出した。


「こんなものしか渡せねえけど」


そう言って、私の首につけてくれる。

外の光と反射してキラキラと光るペンダントがキレイすぎて思わず涙がこみ上げて来た。


「やっぱ似合うな」

「嬉しい……あり、がと」


こんなに幸せな誕生日、初めてだった。

不安とか、寂しさとか全部蓮が奪いさってくれる。


「大好き」


そしてゆっくり私を引き寄せると蓮は甘いキスを落とした。


「ん……、っ」

「好きだよ、花」

「蓮……っ」


見つめ合ったその瞬間、ふたたび体が蓮の方に引き寄せられる。


いつまでもこうしていたいと思った。


ずっとー緒にいられたらいいのに。

ずっと私だけの蓮でいてくれたらいいのに。


いつのまにか欲張りになってしまう自分がいる。


キラキラ光るペンダントが眩しくて、幸せで。

好きな気持ちがこんなにも人を幸せにさせるものだとは思わなかった。


「花をずっと独占出来たらいいのに」


──ドキン。


私と同じこと考えてる。

一緒にいる時間が幸せならその分もっともっとー緒にいたいって思ってしまう。


私たち、欲張りだね。

観覧車はもう半分を超えた。


もう少しで地上についてしまう。


外に出る前にもうー度。

蓮に好きだってことが伝わったらいいな。


その気持ちをこめて私は彼を抱きしめた。


「お疲れ様でした、出口はあちらになります」


顔に熱を持ったまま、外を歩く。

出たら人がいて、もうふたりきりではないんだと実感した。


いつもは他人でいなくちゃいけない。

でも今日は、私たちもカップルとして過ごすことが出来た。


「今日はありがとう」

「本当、ここ出たくなくなるな……」


静かにつぶやいた蓮は私を抱きしめる。


「蓮、周りにバレちゃうよ」

「暗いから少しなら平気」


彼に体を委ねて胸の音を聞く。

蓮もドキドキしたりするんだ。


「このペンダント、普段はつけられないと思うけど今日だけはつけてて」

「うん」


このペンダントのように1点の曇りもない日々がこれからも続いていくんだと思ってた。


――今日この時、この瞬間までは。

「やっぱり西野花と白羽蓮はクロだったか。見張った甲斐があったな……シャッターチャンス」



──カシャ。


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