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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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「す、凄いです! 今日も555とoctopus8を倒したんですよね!? ナンバーズキラーの名前も、嘘や冗談じゃないって、ネットで他の人も凄く盛り上がっていて!」
『ハハ……その名前は、自分でもどうかなって思ったりはするけど。出っ歯には困ったもんだよ、勝手に登録しちゃうんだから』
「アハハ……確かに。思いっ切りパーティ名に出ちゃってますからね、目立ってます」
とか何とか、黒沢君と普通の雑談を繰り広げていた。
話していないのなんて、それこそ実際には数日程度だったんだけど。
それでも懐かしく感じてしまって、あっちもこっちもと話題を振って、いっぱい喋った。
本当に凄いって思うし、それを褒め称える意味でもあったのだが。
何となく……本当に、何となくだけど。
いつもみたいに笑いながら、黒沢君が無理してるんじゃないかなって、思ってしまって。
録画やスコアだけ見れば、それだけ強いんだ、余裕で勝ち進んでいる……みたいに見えてしまうけど。
でも、私は知っているのだ。
賞金首の皆が、物凄く強い事を。
これに対して、一発勝負で勝ち進めている彼等に。
物凄い緊張と重圧が掛かっているんじゃないかって、思ってしまった。
だって、私にはそんな事出来ない。
ナンバーズの誰かと戦った後は、一人相手するだけでも物凄く疲れるし。
私なんて練習試合の様なものなのに、精神力をゴッソリ持って行かれたと感じる程の疲労感を感じるのだ。
だというのに、皆の場合は本番も本番。
そこで成果を残し続けている人は……その準備も含めて、凄く疲れているんじゃないかって。
「本当に、本当凄いなって。私も参加出来ないながら、スコアを見ながらキャーキャー騒いじゃいまして。それで、えっと……それで……」
『白川さん?』
今、こんな事を言うべきじゃないって、分かるんだけど。
もしも語るのなら、それこそシックスに関わる内容とか。
貴方は私の正体に気が付いているんですかって、そんな話題の方が相応しいのかもしれないけど。
「黒沢君……大丈夫、ですか? 疲れたり、していませんか?」
『……大丈夫だよ。俺は、大丈夫だから』
嘘だ。
声だけで、それが分かった。
凄く、疲れている。
本当は凄く大変なんだって、逃げ出したいんだって思っているのかもしれない。
それでも気持ちを隠して、大丈夫だって笑う。
彼はそれくらい強い人だって知っているし、いつだって私に微笑みかけてくれる人だから。
でもその優しさに、強さに。
甘えて気付かないフリをしてしまったら……何となく、取り返しがつかない事になる気がして。
「本当は、大変……ですよね? 疲れて、ますよね? 皆さんの動きを見ていれば分かります、色んな状況を考えて作戦を立てているんですよね? そして考えたソレを現実にする為に、皆は一ミリも気を抜かないまま戦っているんですよね?」
『…………』
「私は、全然駄目なので。そういう時、ヤダーって、逃げたくなっちゃいますけど。黒沢君は、笑って平気だって言っちゃいそうだなって考えたら。ちょっと、心配になっちゃいまして。だから、ご迷惑かもって思いましたけど……電話、しちゃいました」
色々と考える事は多いし、彼からも聞きたい事は多い。
此方だって語れない事が多過ぎるからこそ、相手だけに全部話せなんて言うつもりは無いけど。
じゃぁ全部聞いちゃ駄目なのかって言われたら、そうじゃない部分だって絶対あるはずなのだ。
いくら強い人だって知っていても、それは心配しちゃいけない理由にはならないから。
「私の勘違いだったら、すみません。でも少しでもあっているのなら……私は、弱音も聞きたいです。少しでも、助けになりたいって思っちゃいました。皆さんのスコアを見る度に、凄いって思うと同時に……大丈夫かなって、無理してないかなって、心配になっちゃって。賞金首は……皆、強いですから」
だからって、自分に何が出来るのかって話なんだけど。
それでも、少しでも楽になれるのなら。
ホッと息を零せる様な環境が作れるのなら、それくらいは協力したいのだ。
私が、黒沢君の傍に置いて貰っている時。
無条件で安心出来る様な、楽しいって思えるような環境。
そういうのを、少しでも恩返しとして返せたらって。
なんて考えて、電話したのだが。
黒沢君は少しだけ沈黙した後。
『正直に言うと……少しだけ、疲れたなって。でも、これくらいでヘバってたら、俺が望んだ物が手に入らない気がして』
「欲しいって本気で思う物があるなら、止めろなんて絶対言いません。でも、お休みは必要だと思います」
『でも……白川さんだって、ずっと頑張ってるよね? そういう位置に行く為には、やっぱり“この程度”――』
「“この程度”なんて事、全然無いです。今黒沢君がやっている事は、物凄く“大変”な事です。私は頑張っているつもりでも、いつも周りに助けてもらってます。でも皆は、自分達だけで頑張ってます。だから黒沢君自身が疲れたなって思う時は……私が、“助けられる人”になれたらなって。そう、思いまして……」
直接顔を合わせていないからか、電話だからなのかは分からないけど。
今だけは、スラスラと言葉が出て来た。
彼の対戦結果を見る度に、心配になったのだ。
凄いって思うのと同時に、どれくらい大変だったんだろうって、思わず思考まで想像してしまって。
だからもしも疲れたって、息抜きがしたいって言われればいつだって付き合うし。
求めてくれるのなら、今からだって相手の元へと向かいたいとさえ思ってしまっている。
賞金首のお仕事をしている時は、まだ良いのだ。
目の前の事に集中しているから。
けど気を抜いた瞬間、ソワソワしてしまう。
ゲーム内だったら、黒沢君達が対戦を挑んで来るかもって。
リアルだったら、黒沢君は大丈夫かなって。
何度でも言うけど、たった数日だ。
その間お喋りしていないだけで、ずっと彼の事ばかり考えている気がする。
私はコミュ障だし、情けない性格しているし、何の役にも立てないけど。
ちゃんと頑張っているよって言ってあげて、少しでも気持ちが和らげる状況を作ってあげたいと感じてしまっているのだ。
『滅茶苦茶、情けない事言って良い……?』
「はい、もちろんです」
相手の言葉に、すぐに答えてみれば。
黒沢君は、また暫く黙ってから。
『自分では結構、頑張ってるつもりなんだ。色々教わって、全部活かそうって頑張って。その上で、“凄い人”ってのを目指して。弱音吐いてる暇なんて無いって分かってるんだけど』
「貴方は凄い人です、いっつも頑張ってます。それに、いつだって優しく笑います。だったらその分求めても、良いと思います」
『でもそれじゃ認めてもらえないって分かってるから、もっともっと頑張らなくちゃって。どんどん頭に詰め込んで、どうにか答えばっかり求めて。それでここ最近はちゃんと成果が残せたんだけど……何か、すんごい疲労感を覚えてて。マジで情けないんだけど……あの、ね?』
「はい、何でしょうか?」
また暫く沈黙が始まり、その後息を吞んだような音が聞こえてから。
『……今、滅茶苦茶白川さんに会いたい』
この言葉を聞いた瞬間に、胸の中が温かくなった気がした。
普段だったら絶対慌てたり、変な反応をしてしまっていたのだろうけど。
でも、今だけは……“やっと言葉にしてくれた”って気持ちが強い。
やっと、弱い所を見せてくれたって。
ちょっとだけ、安心してしまった。
「分かりました、すぐ行きます」
『へ? あの、え?』
「お兄ちゃんはまだ帰って来てないので……電車だと、少し掛かりますけど。ちょっと待ってて下さい!」
『待って待って! もう夜! 一人で出たら危ないって!』
「大丈夫です! 何とかします!」
『何とかって何!? 本当に待って! 白川さんストップ!』
色々叫ばれてしまったけども、外出の準備を進めて行くのであった。
夏休みに、日が落ちてから一人でお出かけとか。
ちょっと悪い事をしているみたいで、変な所でテンションが上がってしまいそうだけど。
そういうのとは別に、心の中で“早く早く”と自分で自分を急かしているのが分かった。
私も……黒沢君に会いたい。
コメント
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おお……第171話、めちゃくちゃ良かった。白川さんが黒沢くんの“大丈夫”の裏にある疲れを見抜いて、それでも「弱音も聞きたい」って伝えるところ、胸に来たわ。特に「今、滅茶苦茶白川さんに会いたい」って黒沢くんが素直にこぼした瞬間、もうこっちも「やっと言えたね!」って思わずニヤけた。普段は頼れる賞金首側の彼が、ここで初めて弱さを見せたのが凄く効いてる。夜の電話、すぐ行こうとする白川さんの行動力も可愛くて、お互いの“会いたい”が重なる終盤、本当に温かい気持ちになった。更新お疲れさま!