テラーノベル
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成立済み、?
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🐱side
合鍵は昔からここにあった。
少なくとも俺の記憶では。
玄関のドアを開けると見慣れた匂いがした。
洗剤と、コーヒーと、
愁斗の生活の匂い。
ーー帰ってきた、って思った。
愁 )おかえり
キッチンから声がする。
勇 )……ただいま
何の違和感もない。
声の距離も、空気も。
だから俺は、このあと地獄が始まるなんて想像もしなかった。
勇 )ねえ、愁斗
愁 )なに?
勇 )昨日さ……
言葉を探していると、愁斗は自然にカップを差し出してきた。
愁 )ブラックでいい?
勇 )……うん
知ってる。
俺の好み。
——それなのに。
愁 )勇馬さ
愁斗が何でもない声で言った。
愁 )前から言ってるけどさ
胸が、少しだけざわつく。
愁 )俺たち、付き合ってないよね
……は?
勇 )なに言ってんの
笑って返そうとした。
冗談だと思ったから。
でもしゅうとは笑わなかった。
愁 )付き合ってた事実、ないよ
淡々と。
確認するみたいに。
愁 )同意の上で近い関係だっただけ
言葉が、理解に追いつかない。
勇 )……は?
愁 )勇馬がそう思いたいなら止めないけど
止めない、って何だ。
頭がぐらっとする。
勇 )待って。だって、ここ——
合鍵のことを言おうとして言葉が詰まる。
愁 )これ?
愁斗は俺の鍵を指でつまんだ。
愁 )貸してただけだよ
あまりにも自然に。
息が浅くなる。
勇 )じゃあ…… 俺の服があるのは?
愁 )置いてただけ
勇 )同じベッドで寝てたのは?
愁 )それも、合意の上
勇 )名前で呼んでたのは?
愁 )友達でも呼ぶでしょ
ひとつずつ思い出が否定されていく。
壊されるというより存在しなかったことにされる感覚。
勇 )……俺がおかしいって言いたい?
震える声で聞くと、
愁斗は少しだけ眉を下げた。
愁 )そうは言ってない
その言い方が一番残酷だった。
愁 )勇馬が勘違いしやすいだけかもよ?
優しい声。
慰めるみたいに肩に手を置かれる。
触れられているのに、
拒めない。
愁 )でも安心して
耳元で囁かれる。
愁 )今も俺は勇馬のそばにいる
—それが何を意味するのか分からない。
恋人じゃない。
でも離れない。
その日から俺は自分の記憶を信用できなくなった。
キスをした夜も、
抱き合った温度も、
「好きだよ」って言葉も。
全部、
俺の勘違いかもしれない。
勇 )……俺たち、本当に何でもなかった?
夜、
布団の中で聞いた。
愁斗はしばらく黙ってから答えた。
愁 )何でもない、は嘘
心臓が跳ねる。
愁 )でも名前をつける必要はない
背中に腕が回る。
愁 )勇馬が壊れない距離で 一緒にいられればいい
俺はしゅうとの腕の中で息を整えながら考える。
もし、 付き合ってなかったなら。
今ここにいる俺は何なんだ。
愁 )ねえ、勇馬
勇 )……なに
愁 )俺のそばにいるの、 嫌?
答えはもう決まっている。
だってここ以外に確かな場所がない。
勇 )……嫌じゃない
そう言った瞬間、
しゅうとの指が 満足そうに絡んだ。
——ああ。
これが答えなんだ。
恋人じゃない。
でも離れられない。
記憶が嘘でも今の温度は本物だから。
俺は今日も 「なかったこと」にされた過去を抱えてここにいる。
コメント
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まじで天才ですやばい好きすぎる😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭