其は、何時のことだろうか……。
私が永いようで短い闇から目醒めた時だ。
「……ん?此処は……?」
瞼を開けると、其処は、賑わう街だった。
数多の声、道路を通る自動車や人等。
私は、机に伏せる様にして其らを見ている。
此の景色を見た時には、疑問が思い浮かんだ。
如何して、図書館では無い場所に居るのか。
如何して、私は眠っていたのか。
如何して、私の肉体は崩壊せずに此処に在り続けているのか。
其らの疑問は、何れも即座には解決出来ない。考えるだけでは、何も出来ない。
「……さて」
私の身体を動かす。……確かに正常に動く。
机から離れ、道路沿いに出る。
「ふむ……都市では見れないほど澄んでいるな」
空を見上げ、底が見えそうなほど澄んだ青さに、ふと漏らしてしまった。
さて、何処へ向かおうか。
そういえば、数多くいる人々には姿形違えど、共通点が在る。
皆揃って頭上に“光輪”が浮かんでいるのだ。
此処の住民は、何か特殊な手術を受けたのだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
暫く歩いていた頃だった。
(ダダダダダッ)
銃声が鳴り響く。場所は、前方からだな。
……そういえば、かなり銃弾を消費しているな。
都市では、銃関連に厳しく、特に弾丸は金を相当持ってないと十分な量ほど買えるかどうか。
考えていると、銃声が鳴り響く方向から1人の少女が此方に走ってきた。
「うわーーっ!つ、ついてこないでくださーい!」
銃弾の矛先は彼女であったか。
正直云って、あまり巻き込まれたく無いのだがね。
私は進む方向を変え、此の場から離れようとしたが……。
(ドサッ)
「ひゃあっ!?」
先程の少女がぶつかってきた。
本来避けれる筈だっただろうに、余程焦っていたのだろう。
「あわわ、ご、ごめんなさ、えぇ!?」
「どうしたんだ?」
彼女が謝罪を述べようとした瞬間、彼女の表情は驚いた様な表情を見せた。
「へ、へいーーー」
「おい!そこどけ!」
彼女が何か云おうとした時、怒りが乗せられた声に遮られた。
「やばいです!来てしまいました!」
「おい!おまえ!そこをどけって言ってんだろ!アタシらはトリニティの生徒に用があるんだ!」
「に、逃げましょう!」
少女は逃げようと云っている。確かに追っ手は、2人で何方も銃を所持している。
戦闘になるとしら、相当危険だろう。然し。
「興味が湧いた。少し手合わせでもしてやろう」
「はぁ?何言ってんだ?おまえ銃すら持ってないのに、どうやって戦うんだ?」
「そ、そうですよ!とても危険です!」
「何も支障は無い。お前は後ろにでも下がっておくれ」
「で、ですが…… 」
そう云っていたが、素直に後方に退がる。
「さて、始めようか?」
「はっ!勝負にならないぞ!」
(ドン)
敵の1人が撃ってみせた。彼女は、自信に満ち溢れた様に顔を見せた。
撃たれただ弾丸が、私を即座に貫くことが出来る距離までに達した。
「次からは相手を測量出来る様にしておきな」
そう云った。
(ギャキン)
「「……は?」」
「えっ」
私は弾丸を手で薙ぎ払う様に跳ね返す、否、切り裂いた。
其の異様な光景を目の当たりにした人々は皆揃って、困惑した。
手に力を込める。すると、次第に手に黒く輝く物が収束する。
そして、放つ。
(ギシャン!)
解き放たれた其は、異様な音と共に先程撃った子を貫く。
【妖精】
と、都市ではそう云われている。
F社によって創造された全てを開く力。
其の力は、強大で人間ですら、開く様に切り裂かれてしまう。
「ぐあっ……!?」
妖精に切り裂かれた子は、情け無い声を漏らし、崩れ落ちた。
本来、肉を切り裂かれ、鮮血を吹き出す筈の肉体は何故か其様な状態には見えなかった。
如何にして其の肉体を維持したのだろうか。
「は、はぁ?な、な、なんだその魔法!?」
「もし恐怖に怯えてしまったのならば、其の子と共に退くと良い。其は己の身の為にもなる」
今ので戦意を失った様だな。
私の言葉を聞いたもう一方の敵は素直に、倒れた子を抱き抱え何処かへと逃げた。
……私は其を見守った後、1つ確信した事があった。
此処は都市の何処にも属さない別の場所だ。
何故なら調律者の様な技術に誰も反応しないからだ。
「えっと……」
私が考えていると、何者かに声を掛けられた。
先程の少女の様だ。何か云いたげだ。
「なんだ?」
「助けてくれて、ありがとうございます」
「いいや、問題無いよ」
少女を再度確認してみると、白い制服を身を包み、何かを模した鞄を肩に掛けていた。
其に、銃を所持している。銃……か。
此処に住む人々の殆ども、多種多様の銃を持っていたな。
どうやら、銃が普及しているらしいな。
そして、少女にも光輪が浮かんでいるだが、他と比べ一際違う形と色を持っていた。
「それと、ちょっといいですか?」
「?」
「多分ですが、キヴォトスの外から来た人ですよね?」
「まあ、そうだな」
「これから、どちらに行くんですか?」
「何処へ向かう……か。そうだな、生憎、私は何処へ行けばいいか、未だ分からない状態にある。」
「あはは……そうですか……」
「……トリニティ」
「……え?」
「先程の追っ手の子が云っていたトリニティと云う場に向かいたいが……」
「……」
少女は暫く悩んでいた。そして、こう答えた。
「わかりました。今から案内します……ただ、入れるかどうか分からないですけどね」
「お前がそう云うのでは良かろう」
「ありがとうございます!」
「あ、後せっかくですし、自己紹介でも。私は阿慈谷ヒフミといいます!」
「……ビナーと云う」
「では、ついてきてください」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!