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ある人は言った。「お前は狂っている」と。
またある人は言った。「お前の愛し方は間違っている」と。
全員口を揃えて言った。「お前の愛は重い」と。
だから俺は、「普通」の恋愛をしようと、色んなことを我慢した。「普通」の人がしない帰り道のストーカーや、盗撮、盗聴もやめた。俺は相手を知ろうとやっていたことなのに、世間ではそれを「異常な愛」だと言うらしい。……こんなに相手を思っているのに?
おっと、これもやめろと言われたんだった。こんなに君を思ってるのに、と言うのは相手に責任を押し付けていることと同じらしい。俺はそんなことしたくないから、これもやめた。
あと、相手と仲良くしている人を(社会的に)消すこともダメだと言われた。……やめてしまったら、俺の入る隙が無くなってしまうというのに。
あぁ、あと監禁も良くないと言われた。実際にしたことはないし、俺自身それはよくわかっている。けれども、「お前はいつかやりそうだ」と言われて念を押された。
…まあ、そんなこんなで俺は”俺の愛し方”を封印したわけだ。
するとどうだろうか。俺の周りにはたくさんの人が集まってきた。そいつらは口々に、「お前がまともになってくれて嬉しい」だの、「あの性格が”治った”んなら、つるんでも良い奴なんだよな、お前は」とか言う。……ナニカにヒビが入ったような気がした。
この生活を始めて数日。少しだけ苦しくなってきた。自分が否定されているような、そんな気がする。
けど周りのヤツらが今の俺を好いているなら、……これで、いいのかもしれない。
「……。」
数ヶ月後。
くるしい。くるしい、けど……やっと、すきなひとにちかづけた。もうすこし、もうすこしなんだ。あとほんのすこしで、むすばれるんだ……
『あと少し、あと少しだから……』
「本当に、そう思ってんのか?」
じぶんよりせのたかいおとこがはなしかけてきた。
……だれ?
「お前の恋が叶っても、今の状態は維持しなきゃいけないんだぜ?」
……え?
『なんでっ!?どうしてっ!』
「はぁ…よく考えてみろよ、相手はお前の綺麗な、”今の性格”が好きなんだよ。そんな奴に、付き合ってから本性を現したらそっこーで別れられるだろ。」
『………そ、んな……じゃあ、おれは今まで、なんのために……』
何のために、がまんしたんだよ。
その後、俺は爆発したかのように元の性格で毎日をめいっぱいに過ごした。
案の定、俺の周りからは人が消えた。でもそれでいいと思う。
俺が我慢しても我慢しても、結局は誰も”俺自身”のことを見てくれてなかったんだ。だったら、最初からこのままで良かった。誰も近づいてこなくて、独りになって、死んでいく。
それでいいじゃないか。
好きなように生きて死ぬ……。
あぁ!なんと幸福で……
虚しいのだろう。
「……前より顔色が良くなった。」
あの時の背の高い男が、俺に話しかけてきた。
『……お前のお陰でな。』
一応感謝を込めて、そう言う。
「はっ、そうかよ。」
「……今のお前の方が、お前らしいよ。」
背の高い男は、そんな捨て台詞を吐いて自分の持ち場へと帰っていった。
『……』
俺はその言葉に、少しだけ、救われた気がした。
『……ありがとう』
終