「OKだったね」
「な」
「OKだったね。じゃねーよ!」
告白をした後の放課後。ファミレスで嘘告を仕掛けたフランシス、アントーニョと雑談を交わしていた。
「ぜってー振られると思ってたからネタバラシしにくくなったじゃねぇか……」
「まぁなんとかなるよ」
「そうやってー。あれならあのまま付き合っちゃったらええやん(笑)」
「バカ言うなよ……誰があんな奴…」
嘘だ。本当はめちゃくちゃ嬉しい。こいつらの前だからカッコつけてはいるが、本当はあのまま抱きついてキスしたかったぐらいだった。でもそれは紳士じゃない。だからその気持ちをグッとこらえた。
「まぁでも、付き合ったからにはちゃんと明日から声掛けろよ。それに休み時間会話しな」
「はぁ、?そこまでしなくても……」
「お前に拒否権はないよ」
「……わーったよ、」
俺は心の中でガッツポーズを決めた。
翌日
アーサーside
昨日の夜はあまり眠れなかった。
なぜかって?
そりゃあ、あいつらから休み時間も話せ。なんて言われるから、口下手そうなアイツのために話題を考えていたら、いつの間にか3時間経っていたからだ。
イメトレもバッチリ。今日は本田との共通点でも見つけて仲が深まったら良いな。なんて浮かれてたまま学校へ向かった。
いつものように教室のドアを開ける。群がってくるクラスメイトを避けながら、自分のスクールバッグを机の上に置き、本田がいる方へと向かった。
「お、おはよう、」
なんてぎこち無い挨拶に対しても、本田はしっかり「おはようございます」と返してくれた。好き。
いつもならわちゃわちゃと話している時間も、今日は本田と2人の時間にしようと思い、隣の席に名札がついていないことを確かめ、椅子に座った。
「お前いっつも外見てるよな。楽しいか?」
「……楽しいですよ」
「どんなとこが?」
「………通った車を運転してる人の偏見を考えるとか」
「……ふっ、はは!」
「ちょ、笑わないでくださいよ、」
「Sorry、本田は面白いな(笑)」
初めは堅苦しい奴かと思っていたら、案外面白い奴なんだって分かった。ネタを用意しとかなくてもある程度話が続くし、会話が途切れるなんて心配はするだけ無駄だった。
それに、俺の知らなかった彼を知っていくのは、想像以上に嬉しくて、話を進めた。
「なぁ、本田ってなんか好きなもんとかねぇの?」
「んー、強いて言うならゲームですかね」
「なんのゲームしてんの?」
「いろいろしてますよ。あ、マリモカートとか」
「あ、それ俺もしてる」
「!本当ですか!?」
「あぁ。よかったらフレンドにならないか?ついでにLAINも追加しとこう」
「そうですね。ありがとうございます!」
思ったよりも話が弾み、あっさりと連絡先を手に入れることができた。だが、本田は追加の仕方が分からないようで、
「ん、貸してみろ」
そういって彼のスマホを貸してもらい、LAINのアプリを開いた。ホームを開いて、QRコードを表示する時、友達の数が5と表示されているのが目に入り、微笑ましくなるとついでに、本田らしいと愛おしくなる。
「ほら、追加したぞ」
「あ、ありがとうございます、」
追加が久しぶりなのだろうか、彼の頬が若干赤くなっていた。そんなんに照れてるようじゃ、この先が思いやられるな。
本田side
「起きるあるよー菊ーご飯冷めちゃうあるー」
布団を揺さぶられ、ついには強制的に布団を剥がされ起こされた。
「全く、手のかかる弟あるよ。さっさとご飯食べるよろし」
「……おはようございます、」
「ん、おはようある」
うちの家は、両親が海外に出張中で義兄の耀さんと私2人で生活していた。大変なこともあるが、耀さんとはそれなりに家事を分担しながら上手くやっている。
「鍵かけたあるか?」
「はい。かけました」
「よし」
「じゃあゴミ捨て頼むね。行ってくるある。菊」
「ん、私も行ってきますね」
「……」
「………どうしたんですか?」
「今日嫌いな奴とペアワークある。にーにが頑張れるためにハグするよろし」
「はぁ、貴方も人の事言えませんね。」
耀さんの我儘を聞き、私達の登校は始まる。
いつもと同じように、教室に入り荷物を出しスマホを取り出した。
コミケの新情報やフィギュアの発売日、朝からオタ活に励む。家事をする必要がある私の生活では、こんな時ぐらいしかスマホをなぶれないのだ。
少し経ったとき、アーサーさんが教室に入ってきた。が、今回は様子が変わっていた。いつもなら、群がってくる女子や男子とわちゃわちゃ喋っているのに、今日はそれをかき分けて私の前に来たのだ。
あ、そういえば、私達付き合ったんでしたね。
あり得ない事すぎて忘れていた。嘘告なはずなのに、しっかりと私と距離を近づけてきて、何が目的なのか分からなかった。
「お、おはよう、」
ぎこち無い挨拶だが、友達からの挨拶なんて、アルフレッドさんしかされたことがなかった私からすれば、胸が躍る経験で、「おはようございます」と挨拶を返した。
と、そのまま自分の席に戻るかと思った否か、なんと無人の隣の席に座り、雑談をしようとしていたのだ。やっぱり彼の心境は読めない。
さっきから、私に向けられた女子の視線が痛いし、こんなめんどくさいことになるなら告白なんて断っとけば良かった。
なんて後悔したしている私の気も知らず、彼は呑気に私とお喋りを始めた。
「お前いっつも外見てるよな。楽しいか?」
楽しい訳無いじゃないですか。え?煽りに来たんですか?と言いたかったが、そんな勇気は私にはなく「……楽しいですよ」と答える。
「どんなとこが?」
えぇ、深堀りしてくるんですかこれ、そんなの何も思い浮かびませんよ……空見ながら侵入者が教室に入って来た時、倒す妄想してるだけなんですから、!
「………通った車を運転してる人の偏見を考えるとか」
そんな意味が分からないことを口にしたら、どうやら彼にはウケたようで、
「……ふっ、はは!」
「ちょ、笑わないでくださいよ、」
「Sorry、本田は面白いな(笑)」
なんて、イケメンスマイルで言われ、そりゃあファンクラブもできる訳だ。と納得した。それぐらい素敵な笑顔だった。きっと私が女に生まれていたなら惚れていただろう。まぁ、嘘告するようなクズとは真面目に付き合えませんけど。
だけど彼は、私とは逆に自分に興味を持ってくれた。
「なぁ、本田ってなんか好きなもんとかねぇの?」
そんな純粋に私に興味を持ってくれたことが不覚にも嬉しく、今度は嘘なんてつけなかった。
「んー、強いて言うならゲームですかね」
「なんのゲームしてんの?」
「いろいろしてますよ。あ、マリモカートとか」
「あ、それ俺もしてる」
「!本当ですか!?」
「あぁ。よかったらフレンドになるか?ついでにLAINも追加したい」
「そうですね。ありがとうございます!」
だが、LAINの画面を開いたはいいものの、今登録している連絡先は相手に登録してもらったものだけだったから、やり方が分からなかった。
その様子を察してくれたのか、彼は「ん、貸してみろ」と言ってくれて、私はそのままスマホを渡し、連絡先を交換してもらった。
「ほら、追加したぞ」
「あ、ありがとうございます、」
LAINの画面、長年5だった数字が6に変わっていて、テンションが上がる。久しぶりに友達が出来たみたいだったから。
でも、嘘告のことを考えると、素直には喜べなかった。きっとネタバラシされた時には今から登録する連絡先も無かったことにされるのだろう。
だけど嬉しいものは嬉しいから、少し照れくさい気持ちと虚しさが混ざり、朝が終わった。
コメント
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とても素敵な小説ですね(*^^*)