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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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「 『一千万!?』」
緑さんと南さんから説明を受けて、俺と千歳は揃ってビビった。
緑さんたちは、千歳の組紐を一個一千万、十個買い取るとのことだ。一つ納品ごとに一千万振り込む形になる。
緑さんは千歳に話した。
「千歳ちゃんの組紐はね、家宝レベルの防御力だから、それくらい払わないと逆にやりがい搾取になっちゃうのよ」
やりがい搾取を避けてくれるのはありがたいが、ご、合計一億!?
驚き冷めやらない俺達を見つつ、緑さんは話を続けた。
「ただ、私がもらったような八玉の組紐じゃなくて、十六玉で作って欲しいの。千歳ちゃん、三十二玉までならできるって話よね?」
『う、うん』
狼狽が消えないながら、千歳は頷いた。
「組み方はこちら指定、でも複雑なものじゃないから千歳ちゃんならできると思う。材料はこちらから全部渡します。道具も渡せるけど、千歳ちゃんは使い慣れた道具の方がいい?」
『う、うん。うちの、三十二玉までならできるやつだから』
千歳はこくこく頷いた。
俺も驚きが消えてなかったが、大事なことを聞いた。
「納期についてお聞きしたいんですが、ひとつにつきどれくらい時間を取っていただけますか?」
緑さんはすぐ答えた。
「来年までに十本納めてもらえれば大丈夫にしてあります。事前に千歳ちゃんから聞いて、時間的には余裕もたせてるつもりです」
『うん、時間的には大丈夫だけどさ』
千歳は頷いた。俺は重ねて聞いた。
「じゃあ、一本ずつ納めるとして、一本一ヶ月強で納めればいい計算ですね?」
「そうですね、最初の一本を2月中旬にもらえれば」
俺は千歳の方を向いた。
「千歳、できる? 時間ないなら、俺もっと家事やるようにするし」
『い、いや、今の感じでできる』
千歳はため息を付き、汗をふくような仕草をした。
『で、でも、一個一千万とか、そんなの、関わっていいのかなあ』
緑さんが柔らかく言った。
「十分適正価格よ、それだけの質があるから」
『そうなのかもしれないけど……』
千歳は視線を落とし、それからすがるように俺の方を見た。
『お前、なんでそんなに普通に仕事の話にできるんだよお』
「いや、俺だって十分びっくりしてるけどさ、やることやって成果物渡さないともらえないお金なわけだから。まずやることちゃんとやるのを考えなきゃ、お金出してくれる人に失礼だろ?」
一応、俺はWebライターとして成果物を納品してお金もらってる身なので、お金に見合う責任を持って仕事をする、というのは身に染み付いているのだ。
『……うーん、それもそうか……』
千歳は腕組みした。
「成果物納めてからお金もらう方式だから、作ってからじゃないとお金は取らぬ狸の皮算用なわけだしね」
『うん……まあ、そう……そうだな』
千歳は、気持ちが決まったらしくて、キリッとした顔になった。
『じゃ、緑さん、ワシ頑張る! とりあえず2月15日までに一本目作る!』
「ありがとうね」
緑さんは、優しく微笑んだ。南さんが口を開いた。
「貴重品なので、組紐が口を出来たら一本ずつ私が受け取りに参ります。その時、千歳さんと和泉さまの近況も軽く聞かせていただけますとありがたいです」
「あ、はい、了解しました」
俺は返事した。なるほど、俺達の相談役である南さん的には、受け取るついでに俺達の最近を知っておきたいわけね。
『近況? 特に何もないけど、最近』
千歳が首を傾げた。南さんは微笑んだ。
「そういう時は、特に何も問題ない、ということを教えていただけますとありがたいですね」
『そういうもんなのか?』
俺は千歳に話しかけた。
「そういうもんだよ。特に何も問題なくて順調、っていうのも、伝えなきゃ相手に伝わらないし、伝わってないと要らない心配させちゃうかもだし」
『それもそうか』
南さんがまた言った。
「もちろん、なにか困ったことが起きた時はいつでもご相談いただけるとありがたいです」
『じゃあ、その時はよろしく。困らないほうがいいけど』
そういうわけで話がまとまり、契約書を二人でチェックしてから千歳はサインして捺印した。材料はすぐ送ってくれるそうだ。
緑さんが契約書を受け取ってバッグにしまい、南さんが口を開いた。
「それで、ですね……和泉さまへのお話もあるのですが」
あ、そうだった、一千万円の衝撃で頭から飛んでた。
「承ります、どういうお話でしょうか?」
「あの……峰家についてはご存知ですよね?」
「はい、千歳に仕込まれてたものを解析してくれた家と伺っておりますが」
「はい、そうでして」
南さんはなぜか言い淀み、少し逡巡してから言った。
「峰家が、千歳さんと和泉さんと結び付きを強めたがっていてですね」
「はい」
峰家、話には聞くけどそこんちの人とは会ったことないな。
「ひとまず、和泉さんの結婚相手を探させてもらえないかと言っていまして」
は!?
顔色のすぐれない南さんは、言葉を続けた。
「もうすでに、一人二人あてがあるとのことで」
は!?
あまりに突然のことに、俺は固まった。
『え、じゃあ、こいつと見合いかなにかさせたいってことか!?』
千歳が色めき立った。
「まあ、その、一言で言えばそうです。でも、千歳さんともお話したいらしくて、見合いのことをかためるためにも、一度お二人で峰家と会う場を設けさせてほしいと」
『おい、お前いつなら大丈夫だ!?』
千歳が俺の肩をどーんと叩いた。そ、そりゃ、千歳的には大歓迎なのはわかるんだけど、でも心の準備が出来てないよ!
「ちょ、ちょっと待ってください、いきなり過ぎて、気持ちが追いつかなくて」
俺は手のひらで話を遮る仕草をした。
『気持ち作っとけよ! お前もうすぐ三十だろ!』
「それはそうなんだけど!」
このところ生活が落ち着いて、千歳と過ごす何でもない日々がとても幸せだった。そんな日々が続けばいいと思っていた。
結婚なんて、ずっと先だと思ってた。
緑さんが言った。
「結婚なんて人生に関わりますから、嫌な相手なら結婚は断ってくださって全然いいんですけど、正直、峰家を抑えきれなくて……千歳ちゃんと直接のつながりを作りたがってるんです、すごく」
あ、やっぱりメインは千歳なのか。
「ええと、結婚の話はとりあえず置いといて、そういうことでしたら峰家の方とお会いするのは、私の方は全然かまいません」
結婚のことは全力で脇に置かせてもらおう。ちゃんとした相手なら、千歳の直接のつながりが増えるのは、多分いいことだし。
『置くな! あ、ワシも峰家に会うのは全然いい』
南さんが、なぜか安心したように笑った。
「じゃあ、峰家にお二人の連絡先を伝えますね。そのうち連絡が行くと思います」
「はい、わかりました」
一応話はまとまったと思って、俺は大きく息をついた。でも、千歳があんまりおさまってなかった。
『峰家は結構でかい家だから、お前の稼ぎがよくなくても援助してくれると思うぞ、だから見合いして結婚しろ』
「いや、たしかに稼ぎよくないけど、相手との相性もあるから! 本当に心の準備できてないから!」
ていうか、俺が千歳に抗弁するたびに南さんの顔色が明らかによくなってるんだけど何!? 調子よくなる要因ある!?
とりあえず、俺は千歳を落ち着かせようと思った。
「あの、一応、一生のことだからね、ちゃんと話し合って、相手も見て、それからちゃんと考えさせてよ」
『うん、お前、一緒にいて楽しくて安心できて明るくて元気な人にかまってもらえると嬉しいんだろ? あんまり当てはまらない相手だったら、ワシがちゃんと断ってやるから』
なんで俺の好みをバッチリ覚えてるんだよ!
そういうわけで、千歳は大金の仕事を得て、俺はかなりの確率で見合いに臨まなければならなくなってしまった。
でも、まず峰家の人とちゃんと会って話してからだな。連絡を待とう。
コメント
1件
/読了〜!😭💕 もうね、一千万の組紐ってどゆこと!?って思ったら、お仕事の話がサクサク進んでいく和泉くんの冷静さに逆に感動したよ…!しっかりしてるなあ〜。でもって緑さんの「やりがい搾取になっちゃう」発言、そういう配慮大好きすぎる🥺✨ そしてなにより、見合い話の急展開!!!千歳が和泉くんの好み覚えてて「ちゃんと断ってやる」って言うシーン、何それ尊すぎるでしょ…!お互いを大事に思ってるのがにじみ出てるよぉ〜😭💖 南さんの顔色が良くなってるのも気になるし、続きが待ちきれん!次回も楽しみにしてるね!