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りんご
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クッキー
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#御本人様とは一切関係ありません
# 一生 そばにいて .
302
あの日、俺は社会の闇を知った
まだ小さい子役だった頃、俺がもらった役はセリフが一つだけの、ただの友人A
主人公の過去を描く回想シーン、あの公園でたった一言だけ喋る役だった
それでも俺は、手を抜きたくなかった
たった一言だからこそ、その言葉に全部を込めようと思った
監督に言われた通りにするだけじゃなくて、この子はどんな気持ちで笑うんだろう、この言葉を誰に向けて言うんだろうって、当時の小さな頭で必死に考えた。
そしてカメラの前に立った。
眩しい照明
大勢の大人たち
俺を見つめるカメラ
緊張で手が少し震えていたけど、それでも精一杯笑った。 あの公園で たった一言、 精一杯の感情を込めて言った
「っ、_みんな、大好きだよ!⸝⸝」
その一言が、 俺の人生を変えた
放送されたあと、大人たちはみんな俺を賞賛し。
可愛い
愛らしい
愛おしい
テレビでも、ネットでも、現場でも
俺はたくさん褒められ、 すべてに、愛があった。 少なくとも、 当時の俺にはそう見えていた。 もちろん嬉しかったし、 誰かに褒められるのは嬉しい。 自分の演技を見て、
すごいと言ってもらえるのも嬉しかった。
でも、 少しだけ、 本当に少しだけ…
違うところを見てほしい気持ちもあった。 俺が頑張って考えたこと、 何度も練習したこと。
あの一言に込めた感情。
可愛いって言われるだけじゃなくて 演技を見てほしかった。 だけど、 当時の俺は何も言えなかった。 だって、 みんな笑っていたから
俺を見て嬉しそうに笑って、 可愛いねって言ってくれていたから。
だから俺も、 笑っていた。
ある撮影日のこと
俺は、住宅街でドラマの撮影をしていた
住宅街の一角を借りて、スタッフたちが慌ただしく動いている。
カメラの位置を確認する人、 照明を調整する人 大人たちが忙しそうに俺の周りを行き来していた。
「次、五分休憩入りまーす」
その声が聞こえて、俺は近くに置かれていた椅子へ座った
(……ひま)
子役だった俺にとって、撮影の待ち時間はとにかく長かった。
台本はもう覚えた。 スタッフさんたちは忙しそう。 一緒に遊ぶ子もいない。
俺は足をぶらぶらさせながら、ぼんやりと住宅街を眺めていた
その時
ふと、さっきのことを思い出した
撮影現場へ向かう車の中、 窓の外を見ていた俺は、道路の向こうに変なものを見つけた
くまの着ぐるみ
そのくまは、道行く人たちに風船を配っていた
(……風船)
当時9歳だった俺は
欲望に負けた
「……ちょっとだけ なら」
誰に言うでもなく呟いて
俺は周りを見回す。
スタッフさんたちは、みんな別の方向を向いていた。 今なら 気づかれないかもしれない
そう思った 俺は、椅子から降りた
そして、 こっそりと 撮影現場を抜け出した
住宅街を歩く。
さっき車から見えた景色を思い出しながら、 角を曲がって、 真っ直ぐ進んで、 さらに少し歩く。
数分後
「あ」
俺は目的の場所へたどり着いた
確かに ここだった
「……」
だけど そこには、 くまの着ぐるみはいなかった
(あれ?)
周囲を見回す。 右、 左、 後ろ、 どこにもいない。 少しだけがっかりしていると
ふわり
目の前で何かが揺れた。
赤い風船が 電柱に紐で結ばれている
そして、その電柱には一枚の紙が貼られていた
『おすきにどーぞ』
「……」
俺は赤い風船を見つめた
くまはいなくなってしまったけど
風船は、 まだ残っていた
俺は、赤い風船を手に取った。 紐をしっかり握って、さっき来た道を戻っていく
「♪……」
嬉しくて、自然と鼻歌が出ていた
風船は風に揺れて、俺の少し上をふわふわとついてくる。 撮影を抜け出したことなんて、その時の俺はあまり深く考えていなかった。
早く戻らなきゃとは思っていたけど、 せっかく手に入れた風船が嬉しくて 少しくらいなら大丈夫だと思っていた。
そんなふうに歩いていると
「あ……」
見覚えのある場所が目に入った
小さな公園
古いベンチ
砂場
そして、いくつかの遊具
「……」
俺は足を止めた
そうだ
ここが 俺の人生を大きく変えた場所。 あのドラマの撮影で来た。
あの公園だった
たった一言のセリフ
精一杯の感情を込めて
俺がカメラの前で笑った場所
あの一言が放送されて
俺の名前は少しずつ知られるようになった。
可愛いって言われて、 愛らしいって言われて、 たくさんの人が俺を見てくれるようになった
「……」
公園の入口から、中を眺める
あの時
俺は撮影のためにここへ来た
だから当然 遊ぶことなんてできなかった
スタッフさんに手を引かれて、 遊具の横を通り過ぎて カメラの前に立って、 セリフを言って、 撮影が終わったら、そのまま帰った
あの時
(遊びたかったな)
そう思ったことを、今でも覚えている
9歳の俺は、 赤い風船を握ったまま。
公園の中へ一歩、足を踏み入れた
「……ちょっとだけ」
誰もいない公園。 撮影もない、 カメラもない、 スタッフさんもいない
今なら 普通の子供みたいに 遊べる気がした
その時だった
ぶわっ!
突然、強い風が公園を吹き抜けた
「あっ、!」
俺の手に握られていた風船の紐が、一瞬だけ緩む。 しまった
そう思った時には、もう遅かった。 赤い風船は俺の手から離れ、風に乗って空へ飛んでいく
「あぁ……!」
追いかけようとしたけど、風船はどんどん遠ざかっていった
そして、 近くにあった大きな木の枝へ
ふわっ
と引っかかった
「……」
俺は木を見上げる
赤い風船は高い場所で揺れていて、9歳の俺には到底届きそうになかった
(どうしよう……)
困って立ち尽くしていると
ひらり
何かが俺の足元へ飛んできた
「?」
白い紙。
風に飛ばされてきたらしい
俺はしゃがみ込んで、それを拾い上げた
(なんだろう…)
そう思って紙を見ようとした瞬間
「あ……!」
向かい側から、慌てた声が聞こえた
「すみません!それ、俺の!」
「?」
俺はぱっと顔を上げた
目の前には、 俺と同じくらいの歳に見える男の子が立っていた
息を少し切らしている
どうやら、あの紙を追いかけてきたらしい
けれど 俺の顔を見た瞬間、 その子は ぴたりと止まった
「……」
目が大きく開く
まるで、とんでもないものを見つけてしまったみたいな顔
「……?」
なんだろう… 俺が首を傾げていると
男の子が、小さな声で呟いた
「…いとま、なつ……?」
俺は不思議に思いながら、手に持っていた紙を差し出した。
「これ、お兄ちゃんの?」
「……!」
男の子の動きが止まる
「おにぃちゃっ…!?⸝⸝」
俺は男の子が受け取る前に、紙をちらっと見た
「……ごっと」
紙に書かれていた文字
『GOD』
「……?」
(ごっどって)
俺はもう一度、その文字を見る
GOD
……神様?
俺は純粋な疑問を、そのまま口にした
「……神様になりたいの?」
「ちがっ……!」
男の子が、ものすごい勢いで否定した
「いや、そのっ!」
男の子は慌てたように紙を握りしめた
「ただ書いただけ!す、すぐ消すし!!!!⸝⸝」
「ふふっ、⸝⸝」
思わず笑ってしまった
さっきから顔を真っ赤にして、慌ててばかりいる。 なんだか とても愉快で、 面白いお兄ちゃんだった。 俺が笑うと、お兄ちゃんはまた顔を赤くした
「っ、… ⸝⸝」
(ぁ)
俺はふと、さっきの赤い風船を思い出した
木の高いところ
俺一人じゃ届かない場所
(このおにーちゃんなら……取れるかな?)
少しだけ考えてから 俺は彼を見上げた
「……おにーちゃん」
「ん?」
「……あれ、取って?」
そう言って
俺は木の方を指さした
「……あれ?」
お兄ちゃんも、俺の指の先を追う
そして
木の枝に引っかかっている赤い風船を見つけると、目を丸くした
「さっき風が吹いた時に、ひっかかったの」
俺は風船を見上げながら言った
「取って?」
「…………」
お兄ちゃんは黙った
「?」
返事がない
(……やっぱり、 だめなのかな)
木は結構高い
お兄ちゃんでも難しいのかもしれない
俺は少しだけしょんぼりした
でも
諦めきれなかった
「あのね、あのね?」
俺はもう一度、お兄ちゃんを見る
「あれ、もらったやつなの」
赤い風船が、風に揺れている
「だから、取って?」
少しだけ首を傾げる
「お願いっ」
「……っ!」
お兄ちゃんの肩がびくっと跳ねた
「……?」
「わ、わかった……!⸝⸝」
なぜか さっきよりも顔を赤くしながら、お兄ちゃんは勢いよく頷いた
「!」
俺の顔がぱっと明るくなる
「ありがとう、お兄ちゃん!」
お兄ちゃんは、覚悟を決めたように木を見上げた
「……よし」
小さく呟いて、 木の幹に足をかける
お兄ちゃんは枝を掴み、ぐっと体を持ち上げた
足を上げて、 もう一つ上の枝へ
少しずつ、 少しずつ
赤い風船へ近づいていく
枝の先では、風船が風に揺られていた
ゆらゆら、 ふわふわ
もう少し風が強くなれば、またどこかへ飛んでいってしまいそうだった
「あと、もーちょっと…」
お兄ちゃんが必死そうに手を伸ばす
「おにぃちゃん……!」
俺が呼ぶと お兄ちゃんは一度、下を見た
俺は両手をぎゅっと握りしめる
「がんばって!がんばって!」
「っ、よし!⸝⸝」
その声に元気をもらったみたいに、 お兄ちゃんはもう一度、枝に体重をかけた。
そして、 ぐっと 手を伸ばす
パシッ!
「!」
風船の紐を掴んだ
「取った!」
「!!」
お兄ちゃんがこちらを振り返る。 その顔には、 とても嬉しそうな笑顔が浮かんでいた
「……⸝⸝」
俺は、思わず見上げる
その時の笑顔が
とっても、 とっても
かっこよくて
俺には
「かっこいぃ… ⸝⸝」
まるで
キラキラしたヒーローみたいに見えた
風に揺れる木の葉、 太陽の光
高い木の上で笑っているお兄ちゃん
9歳だった俺には、 本当に 王子様に見えたんだ
でも その次の瞬間
ぐらっ
「ぁ……」
お兄ちゃんの体が傾いた
「あ……!」
俺の顔から、一瞬で笑顔が消える。 枝を掴んでいた手が離れ、 お兄ちゃんの体が下へ落ちていく
「おにぃちゃん!」
怖くなった
何が起きるのか分からなくて
俺は思わず ぎゅっと目を閉じた
ドサッ!
大きな音
「っ……」
恐る恐る 目を開けあ
「……?」
そこには
「いたたた……」
地面に倒れているお兄ちゃんがいた
よく見ると 誰かが集めたらしい大量の枯葉の上
まるで、 偶然できたクッションみたいだった
「……」
「ぃ、いきてる……」
その手には ちゃんと赤い風船が握られていた
「……!」
俺の顔がぱっと明るくなる
「お兄ちゃん、ありがとう!⸝⸝」
俺は勢いよく駆け寄った。
そのまま ぎゅっと お兄ちゃんに抱きついた
「……っ!?⸝⸝」
お兄ちゃんの体が、一瞬固まった
「ほんとにありがとう!⸝⸝」
俺は嬉しくて 何度もそう言った
「風船、取ってくれてありがとう!」
「……」
お兄ちゃんは何も言わない
「……お兄ちゃん?」
俺が顔を上げると、 お兄ちゃんは 耳まで真っ赤になっていた。
「…… ⸝⸝」
「?」
「……ど、どういたしまして……⸝⸝」
小さな声で そう答えた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
俺はぎゅっと抱きついたまま、嬉しくて何度も言った
「ありがとうお兄ちゃん、だいすき⸝⸝」
「え、!⸝⸝」
お兄ちゃんの体が、またぴたりと固まった
「……?」
俺は不思議に思って顔を上げる
さっきからこのお兄ちゃんは、俺が何か言うたびに顔を赤くして固まってしまう
でも、面白いから嫌いじゃなかった
むしろ
なんだか好きだった
「お兄ちゃん」
「は、はい!」
「名前、なんて言うの?」
すると、お兄ちゃんは少しだけ慌てたように視線を泳がせた
「い、いるま……」
「いるま」
俺がその名前を繰り返すと
お兄ちゃんはまた顔を赤くした
「む、叢雲……入間」
「むらくも……いるま」
少し難しい名前
でも
俺は忘れないように、心の中でもう一度繰り返した
「いるま ……うん、 覚えとくね!」
俺はにこっと笑う
「いるまお兄ちゃん!⸝⸝」
「っ、!⸝⸝」
「ねぇ、お兄ちゃん!あのさ_
俺が何かを言いかけた、その時だった
「なつくーん!いたいた!」
公園の入口から、聞き覚えのある男の声が聞こえた
「!」
俺はぱっと振り返る。
そこに立っていたのは 俺のマネージャーだった
「あ……」
「もう、探したよ〜」
マネージャーは少し息を切らしながら、こちらへ近づいてくる
「撮影中に勝手に移動しちゃダメだよ?」
「だ、だって…」
俺は手に持った赤い風船を見る
「風船、売ってたから」
「それでもだーめ」
「むぅ…」
マネージャーは、怒っているわけじゃなかった。 困ったように笑いながら、俺の頭を優しく撫でる。
「なつくんがいなくなったから、みんな心配してたんだよ?」
「…ごめんなさい」
「うん、次から気をつけようね」
「はーい…」
少しだけしょんぼりしながら返事をする
「ほら、行くよ?」
「うん…」
俺はマネージャーの後ろについて歩き始めた
数歩進んで
ふと
思い出す
「あっ」
俺はくるっと振り返った
公園の中には まだ、いるまお兄ちゃんが立っていた。 風船を取ってくれたお兄ちゃん。
そして俺のヒーロー
俺はぱっと笑顔になる
そして
大きく手を振った
「お兄ちゃん!」
「!」
「ばいばーい!⸝⸝」
「……!」
「つぎ会ったら、あそぼ!⸝⸝」
いるまお兄ちゃんは一瞬、目を丸くした。 それから、 俺に負けないくらい大きく手を振った
「っ、うん!⸝⸝」
俺は何度も手を振る
赤い風船も一緒に、ふわふわと揺れる
「じゃーね、いるまお兄ちゃん!」
「……またね!」
その言葉を最後に、 俺は公園を後にした。 撮影現場へ戻るために マネージャーの隣を歩きながら、 俺は何度も振り返った。
けれど、 角を曲がれば もう公園は見えなくなる
「……」
俺は赤い風船の紐をぎゅっと握った
(また会えるかな)
いるまお兄ちゃん。
木に登って、 風船を取ってくれて すごくかっこよかったお兄ちゃん。
「……つぎ会ったら」
俺は小さく呟く
「ほんとに遊ぼうね」
「いるま、おにぃちゃん……」
遠い意識の中で 俺は、何かに手を伸ばしていた
すべすべした あたたかい何か
「ん、ぅ……?」
重かった瞼をゆっくり開ける。 ぼやけていた視界が 少しずつ 少しずつ、 はっきりしていった。
「……ぇ」
目の前にあったのは 見覚えのある顔
「……?」
俺は一瞬、状況を理解できなかった
なんで いるまがいるんだろう?
なんで こんなに近いんだろう?
そして 自分の手を見る
俺の手は いるまの頬に触れていた
「……」
さらに視線を下へ向ける
「……え」
俺は いるまの膝の上にいた
「……ぇ?」
頭の中が一瞬で真っ白になった
しかも、 今、 さっき、 俺は
『いるまおにぃちゃん…』
言った
「ぁ……」
全部
思い出した
「あ、……お、おはようございます……」
「っ、!⸝⸝⸝」
「な、なつ?」
「……」
(終わった、 聞かれた、 最悪、 すっごい恥ずい)
次の瞬間
パァンッ!
「痛ぁ!?」
思わず 俺はいるまの頬をビンタしていた
「忘れろ!ばか!」
「え、ぁ、は、はい!」
「絶対忘れろ!」
「はい!!」
「今すぐ!」
「はい!!!」
「……っ、⸝⸝」
俺は顔を逸らした 耳まで熱い
心臓もうるさい
(なんで、 なんであんな昔の夢を… よりによって、 本人の前で… 思い出すんだよぉ⸝⸝)
コメント
3件
これ、あったかもしれない世界線の続きですか!? しょた可愛い💕 ❤️くん、いきなりビンタはもしや照れ隠しですかぁ??( •´∀•` )ニヤニヤ可愛いねぇ💕((((((
更新ありがとうございますっ!! そういうことかぁっ…!!✨ 2人がお互いのことを意識し始めるのでは!?✨ 続きも楽しみにしています!
なっつ!!!✨ 第5話めっちゃ良かったあああ😭💕 幼少期の回想パート、風船を取りに行くかわいいエピソードから入間くんとの出会いが尊すぎて全裸で泣いた…(落ち着け) 「かっこいぃ…」って王子様に見えた瞬間、こっちまでドキドキしたよ!そして現在パートで膝枕&「いるまおにいちゃん」呼びは反則でしょ…! ビンタして「忘れろ!」って怒るナツも可愛すぎるし、入間くんの動揺も伝わってきて悶えた💥 続き待ってます!!推すわ🔥