テラーノベル
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メリオダスらは、二人の救出に成功しやっとの思いで元の場所に戻って来られた。「メリオダス殿方……!、ご無事だったのですね…!良かった……」
アーサーはそう言い、メリオダスらに近寄った。メリオダスらが、目を向けた先に広がっていた光景は……騒然としていた。
突如として、キャメロット国内中心部で次々と魔神へと変貌し、人ならざる者になった街の人々が彼方此方に倒れていた。どうやら、何とかアーサー達で殲滅が成功していた模様。
「こりゃ、ひでえー光景だな、けど無事に魔神化した奴らに、魔神化に拡大は防げたみたいだな」
「ええ、何とか暴走していた者達は全て殲滅して騒動は、何とか収まりました、それよりメリオダス殿方こそ、お二人の救出無事に成功したのですね」
「ああ、けど……」
「……?…」
メリオダスはアーサーにリーシアの事を説明した。
「…………って事なんだ」
「術者が解除しない限り、永遠に覚めない悪夢‥…ですか‥魔神族の騎士団の中にはそんな妙な術の存在が……」
「何とか二人を助け出せたのは良いけど、けど何だか嫌な予感がするんだよなあー、彼奴ら‥‥この術は更なる地獄があるって…」
「そこまでして、彼女を途端に追い詰め始めた理由、やはり…もうそこまで我々が余裕を持てる時間がないほどに大いなる儀式の計画が、進行してる証なのでしょう」
「ま、そうだろうな。けど二人が反抗した事で順調だった歯車も停滞を強いられてる、彼奴らの焦った様子を見る限り、早急に儀式を上級階級の奴らが仕向けてるって感じだな」
とりあえずアーサーらは、突然の事態の連続だったという事もあって、王宮内で一休みする事に。だが、リーシアが悪夢に囚われる事態になってしまった為に気は抜けない。
「リーシア……」
「…………っ……うう……うう……」
「リーシアの事、何とか悪夢から救い出してあげられないのかな……」
「それは極めて不可能に近いだろう、何せあの者達が言っていた事が真実ならば、かけた術者が術の解除命令をしない限り、リーシアは永遠に悪夢の幻術の眠りから目覚められない‥」
「え……?」
「以前にも、リーシア…似たような事があったけど、それとはまた違ってこっちはその魔法を望まない限り、ずっとリーシアは悪夢に苦しめられたままって事…?」
「ああ、しかも今回のは更に質が悪い、あの様子だと悪夢に陥らせたまま、彼女の記憶の再生の段階に入り、封印の鍵を開け…更なる儀式へとあの様子を見る限り、彼女らの野望が叶うのは、そう遠くないと思った方が良い」
「やはりそうか……」
マーリンらがこう話している間にも、彼女は悪夢の記憶と、脳内には永遠と最恐な凶夢が流れ込み、精神が段々と擦り削られて、心が弱まった瞬間に追い討ちをかけるように呪縛の侵蝕が彼女の心をじっくり、ゆっくり蝕んでいく。
「かけた術者本人が解除を命じない限り、どうしようもねえーな、リーシアちゃんの事お前らで何とかして助けられねえーのか〜」
「手の施しようがない、悪夢を術者以外じゃ解除不能ってなっちまうと‥けどこれ以上彼奴の思惑通りには進ませねえー」
メリオダスらはリーシアを救う為の明確な方法が見出せない……と、忘れていた今此処には、まだリーシア、ゴウセルと同じ血族である、有力者が居るではないか。
「なあ、お前ら二人は彼奴らの事良く知ってるんだろ?それなら、この悪夢に対しての打開策も、太刀打ち出来る方法、何かしらの情報持ってるんじゃねえーか?」
「…………分からない、似たような気質や属性というだけであっても、様々だ‥言えるのは肉体や精神に狙いを定めるもの‥人体破壊や精神破壊、精神操作、これらの特性は我々唯一共通する魔力だ、魔神族の…強者なる力を有する者に至っては、このような力を持つ奴も存在するのが現実だ」
「って事は、奴らの力に対抗できる術は無いって事か……」
「ああ、今のところは……けどきぼうが完全に潰えた訳じゃないだろう?姫様が、想いを寄せ、その末に未知なる希望の道となる力を芽吹かせてくれた存在が居る 」
「だが、俺の魔力魔法では今の現状を余計に深刻化させてしまう、苦痛を与える事は出来ても、それを掬い取る事は出来ない…… 」
そう彼自身が理解しているように、彼が持つ魔力魔法の殆どが対象者を苦痛に歪ませ、繊維喪失、最悪の場合は掛かった相手を、自死に追い込むなど精神的に追い詰めたり‥主に精神と肉体に負荷ダメージを負わせるのが得意分野で、既に悪夢の地獄に陥っているリーシアの現状だと、精神的、肉体的苦痛を余計に悪化させかねない。
『記憶を覗く』『記憶を任意の場所まで消す』、『範囲内 の人々の意識を停止させる』、『意思不明の状態から強制的に起こす』……どれも、彼女を救う事には繋がらないものばかりだ。
だが、リーシアは……それでも彼が、救いの手を差し伸べてくれる…悪夢から助け出して欲しい。そう臨んでる。
このままでは、永遠に彼女は終わらない悪夢の幻術の中に囚われたまま……。
「じゃあ、どうしたら……」
「姫様が囚われてる悪夢の事象をどうにか出来たら希望が見えてくるかもしれない、けど俺達じゃそんな繊細な芸当は到底出来ない」
「今のリーシアに、唯一的確に接触し悪夢の中へ干渉できるのはゴウセル、お前だけしか出来ない訳だが、問題点を挙げるとするなら…そもそも前提として悪夢の中に干渉し、永遠の夢の誘いにリーシアが手引きされる前に救う事が出来るかどうかという事だが…」
「ああ、あの者達のやり方を踏まえて考えれば、接触すらも遮断する防壁のような‥…障壁の術で上塗りされている可能性も大いに高い。目覚められるのなら、それで良いが……でなければ彼女は、永遠に覚めない悪夢の中を彷徨い続け、結果的に記憶の再構築に強制的に移行される可能性もある」
「それに呪縛の侵蝕の深刻化も激化してる、きっと姫様は醒めない夢の中で、蝕まれ続けてるに違いない……早く助けに……」
悪夢の幻術に囚われてるリーシアを目の前に、葛藤を強いられているゴウセル達。
けど、肝心な明確な方法も皆無の状況。
「にしても、姫様にこんな真似 をするとは……姫様の本当の、永き封印果てから目覚め刻を我々魔神族はひたすらに夢見続け、願い続けてきた。それは僕らだって同じ、だけど……今の彼奴らは、まるで違う……」
「ああ、彼奴らは、自分達の身勝手の理想と野望に強引とも言えるやり方で良いように利用してるだけのように感じる、今の彼奴らには、姫様を慕い敬親する感情はないに等しい…力と欲望に支配された愚かな奴らだ 」
「厄介な事になっちまったな、リーシアを悪夢の幻術から目覚めさせられなかったら、リーシアは益々彼奴らの思う壺になって、最終的な終焉は、生贄を経てリーシアは封じられていた自身を引き出され、そうなったら今リーシアの中に眠ってる膨大な邪悪な魔力エネルギーが蓄積してる魔神までもが目覚めちまうって訳か 」
「姫様が喪失していた『全て』を取り戻された場合……間違いなく我々では歯が立たない、この世界において、脅威的な力を有するのが我々魔神族だ。だが、しかし姫様の力は…計り知れない…姫様の魔力は気質や、魔力そのもののエネルギー量も、全てが凌駕してる‥封印のお陰で力が半減されておられるが… 」
そうリーシアが現状目を覚まさなくなった事で、もし仮にこのままリーシアの中に眠る記憶が過程を経て、戻り…それが完了したら、最終儀式で犠牲の代償の生贄を捧げられ、全ての封印が解け、本来の彼女を呼び戻す……というのが、彼らがやり遂げようとしている最大の目的。
「もう随分と、儀式の準備段階が終えられてしまってる、お二人が正気を取り戻せていなかったら、既に大規模計画が最終段階へ移行していたのかもしれない、そう考えると、多少の安堵は生じるけど、もうそんな油断なんてしていられない……」
どうにかして、何としてもリーシアを『終焉なき悪夢の幻術』から助け出さねば。悪夢に魘され、救いようのない深淵の底沼の中に眠ってしまう前に。
「うう……う……うう……う…………いや……嫌……あ……!ああ……ううう……」
醒めない凶夢の幻術は途絶える事なく、魘される。
「あ………ああ……あ…………あああっ……はあ……はあ‥…はあ……あああ……!うああっ……!!」
凶夢の幻術によって、彼女の精神に深い傷が生じ、現実か虚実かさえも判別できなくなってきている。錯乱を起こし、悲壮感で感情が埋め尽くされ、ひたすらに彼女は大粒の涙を溢す。
「救いの手を差し伸べるのならば、今が絶好の機会だろうが、そもそもこれは…この術は悪夢の中に侵入出来たとして、阻害…そして完全に悪夢を内側から解除するのは困難に等しい 」
「うああ、うああっ……、うう……助け‥て 」
終焉なき凶夢の幻術に絶句する彼女は、耐え難くなって彼に救いを求めた。「どうやら、姫様はよほど貴方様に惹かれ、ただならぬ想いを寄せられていらっしゃるようだ。我々が手を差し伸べるべきではなかったようだね」
「リーシア‥…上手くいくかは分からないが……君がそれを望んでいるのなら、やってみよう」
「うう……、うう……、う……あ……ああっ……あ……あああっ……うあ……」
押し寄せる悪夢の波には抗えず、心身諸共魔神の呪縛の侵蝕の連鎖へと、誘われてく。彼女は魅せられている浸透しゆく凶夢の最中で、ずっと『悲哀』しか生まれない、彼女にとって苦痛の地獄、彼女が崩壊してしまいそうな、そんな『喪失し難い、何かを失い続ける凶夢』。
「リーシア、ずっと悪夢に魘され苦しんでる、早く何とかして助けないと、リーシアが………」
「ああ」
そうして、ゴウセルは自身が持つ魔力魔法を駆使し、しかしながら彼の持つ魔力魔法を利用すれば、結果的にリーシアに多少の苦痛を負担に抱えさせる事にはなってしまうのだが。
彼は、『悪語り』、『感覚の目覚め』、『魔力切断』など多種多様な神経、精神系統の技を彼女を対象
とし、放出する。
「彼女には結果的に、少し苦痛を刺激してしまったが……心の所有権を奪い、それに伴って精神を一時的にだが、停止させた。これで完全に、とまではいかなくとも多少は凶夢の幻術から脱する光にはなった筈だ」
「リーシア……」
「それなら、少し待ってみるか。それでリーシアが無事に凶夢の幻術から抜け出せると良いけどな」
「うん…………」
それから、ゴウセル達は、その後の経過観察を視る為に彼女の傍についていた。更にその後、もう一度試しに強制的に意識不明や気絶状態から起こせる『感覚の目覚め』で彼女が目覚めるかをみてみる事にした。
「……………………………………………………あ」
彼女は小さく声を出し、少しずつゆっくりと瞼を開けた。
「リーシア‥…!!」
「‥……ん……ん」
「目を覚ませたようだな」
「‥……ゴウ‥……セル……私‥…を、凶夢から救って…くれたの……?、ありがとう…… 」
悪夢から脱する事には成功したようだが、でもその一方で凶夢の幻術は既に彼女の精神や記憶にトラウマとして蓄積し、絡みついてしまっていた。
再び彼女は、悲哀の感情が溢れ出した。「ああ……ああああっ…!!うあ……ああっ……!!、ううう…………ぐすっ‥…」
彼女は頭を抱え、泣き叫んだ。その悲しみの感情が引き起こした事で、また更に魔神の呪縛の侵蝕がより活性化し、彼女の心身を蝕み、闇へとまた一歩陥らせる。
やはり、リーシアがかかった『凶夢の幻術』は、術者のみが解けるという、悪手極まりない、悪性魔法のようだ。脳内に植え付けられた凶夢によって彼女は、眠りから解放された挙げ句の果てにも、悶え続け……心さえ荒み、悲痛の凶夢は脳裏にまでも浸透し、彼女は永遠とじっくりと追いやられて、まさに危機的状況だ。
「うう……うう……うう……」
「っ……ああああああああっ……うああああああああっ、うう‥…うう‥‥うう……」
「リーシア……」
リーシアは終焉なき凶夢の幻術に絶え間なく襲われ、精神崩壊も、もう寸前にまで迫っていた。永遠に覚めない眠りから何とか助け出す事が出来たのは非常に素晴らしい事だが、凶夢の幻術は完全に彼女の記憶と脳内に浸透し、消えない‥‥精神神経、脳神経に深く刺さり込んで、出口のない幻術にひたすら踠いている。
「リーシア、すまない‥‥君を救う事が出来なかった…出来る限りの事は果たしてみたが……」
彼は凶夢という、悪性高い凶悪な幻術に、それに加え解除困難を極めている術に心と精神を強く蝕められ、心身諸共疲弊しゆくリーシアにそっと寄り添った。
「しっかし、ゴウセルの力でさえも、リーシアの事を救えないってなると益々手の付け所が分からなくなってきたな」
「そうだね、けど何かしらの手を打たないとこのままだと、彼女は最悪の場合…侵蝕によって魔神に心と身体さえも支配される……それを抑止する為にも、何か方法があれば…」
「幻術の脅威は、我々魔神族にとっては‥存在も認知されてる程恐れている邪悪な魔力だ。にしても、ここまで歯が立たないというのは、相当なものだ。『凶夢の幻術と幻影が死へと誘う』なんて可能性もある魔力術だ。 幻術、凶夢のレベルは多様にあるが、多分姫様が苦しんでおられる凶夢は……抜け出せない、底無しの地獄に違いない」
「それに幻術、凶夢は一度脳裏に記憶として浸透してしまえば……走馬灯の如く永遠と、精神や神経を滅ぼしていく、凶夢の幻術から逃れる術などないに等しい」
「って事は凶夢という幻術から抜け出す方法はないって事か……」
「ああ、トラウマと同意義と言えども…それがその対象者にとって深刻なものであればある程に救う手立てはない 」
「…………」
「そんな……‥ 」
二人が正気に戻り、連れ戻せた事で少し安堵していたところにこんな事態に。いや、ゴウセルとリーシア達を態と逃したのも、あの魔神族騎士団の連中らの策略のうちだった。
メリオダスらは、魔神族の者の多くから標的として狙われていた時から、ずっと今まであの魔神族騎士団一族達の掌で弄ばれていた事など、今更気付く余地もないだろう。
「けどこのまま、何もせずこのまま彼女を見ているだけじゃ何も変わらない…!!、何か打開できる方法を探さないと…!」
「姫様が囚われている悪夢……幻術は、脳内に一つの記憶として刻まれてしまったらもうそれは手遅れ…、さっき話した通り、凶夢の幻術で投映してるものが凶悪であればある程凶夢の威力は高まる。更に凶夢の幻術魔法の多くは大抵その対象者にとって、悲痛になる…つまり、その対象者の弱点となる者が、凶夢の幻術の映像として流れ込む……」
「そんな……!!」
困窮的な事態に追い詰められた彼ら。かけられた凶夢の幻術に絶えず苦しむリーシアを前に救いの手を差し伸べたいが、助けられる宛てがないというのが現状……。
「………これで、改善されるとは思わないが、彼女の記憶を一時的に消去させ…凶夢に苦しんでいる記憶を忘れさせてみよう」
「なるほどな、つまりは記憶を一時的に消去する事で凶夢の幻術に陥っている現状をリセットさせるって訳か、けどそれって効果あるのか?完全に記憶の中に凶夢が浸透して刷り込まれているのを考慮した……」
「彼女が苦しむ姿を目の前にして、ずっと嘆いてばかりでは現状が変わる訳ではない、それに幻術、幻、夢というのは記憶や錯覚…感情などに関連している、彼女にこれ以上苦痛を抱えさせる訳にはいかない」
ゴウセルはそう言った。
彼は心を持たない、いや失った。その為無感情で少し無機質な存在、だがそんな彼だったが、彼女と出会い変わった。
そしてそれは、彼女の方だって同じだ。彼女も彼と共に生きていく長い時を経て、彼女は感じた事ない感情を抱くようになり、次第に彼に惹かれていった。そして今では、彼を何よりも『かけがえのないたった一人の大切な人』と、その思いは強くなっていき、その思いから創造された覚醒なる力や、依存的感情を抱く程までにもなった。
そんな彼女の想いに応えようと、だからこそ彼はリーシアを救う事に対して一心になっているのだ。
「姫様がお選びになられた方だ、我々が止める権利はない。それに姫様の事を救えるのは、貴方ただ一人しかいない」
元あの騎士団の仲間達と共にリーシアに仕えていた二人も、この短期間でゴウセルの事をすっかり信用し、リーシアの事を救って欲しいと、その願いを彼に託した。
「ああ」
彼は早速、彼女の記憶を改竄し、そしてリーシアの記憶の中の一部を消去した。これで脳内に浸透した凶夢が巻き起こして魅せられている記憶がなくなってくれると良いが……。
明確に脱せる方法が無い以上、唯一の希望と言えるのは、『彼』のみ。
「リーシア………」
ゴウセルは、リーシアの頭部に触れ記憶を一時的に一部のみ消去し、そうする事で『幻術の凶夢』から彼女を解放出来るにではないか、そう踏んだ彼。
その儚い希望は実るのか。
「…………ん……ん……、あれ……私…何で……さっきまで悲しくなってたんだろ……」
とぽかんとしている様子のリーシア。
どうやら、凶夢の幻術の負の連鎖が無事、絶たれたようだ。記憶の奥底までも浸透していた悲痛の凶夢が消え去り、これで安堵…かと思えたが、あの魔神族の騎士団らが仕込んだ『罠』はこれで終わりではなかった。
「っ………、あれ、何で……また………、っ…!!」
リーシアはまた感情が悲哀に満ち溢れ、彼女の精神と心諸々を侵蝕していく呪縛が再び蠢き始め、途端に活性化された。
「うう……うう……ぐすっ……あああ…ああっ……」
「間に合わなかったか、リーシア…君の事はもう救う事ができないとでも言うのか……」
絶え間ない様々な痛みに悶絶する彼女を静かに抱擁した彼。
「悪夢の中に囚われて、幻術に堕ちる事からは脱せたけど、完全に姫様を救い出す事は困難を極めそうだ……益々彼奴らの野望を阻止しないと…!!」と焦り始める。
「どうしたら…ほんとにこのままリーシアは救い出せないままなの‥‥救い出せなかったらリーシアは‥‥」
「彼奴らの思惑通りにさせない為にも、さっさとぶっとばす必要があるな、計画が全て遂行されちまう前にな」
「ああ」
メリオダスらは、その後リーシアの事を救う事に尽力するも唯一リーシアを救える希望ともいえるゴウセルの力でも結局逆戻り。
「脳内に浸透した記憶は、救いようのない……記憶を喪失させる事でそれも抹消出来るのではと思ったが、どうやら手遅れだったようだ、すまない 」
その頃、魔神族の同胞らは‥‥。
「ふふっ…もうすぐ‥もうすぐで時は満ちる。永きに渡る封印の眠りからついにお目覚めの時がやってきますよ 」
「ああ、けどにしても予想外だったよ。姫様とあの大罪人があそこまで我々の元にお戻りになられないという強固な意思をお示しになられるなんて……」
「まあそう心配は無用だ。その点についてはもうとっくに次なる策を用意してある‥、我々が数万年前から企ててきた大いなる計画なんだ、儀式を開始するまでの猶予はもうない、だからどんな手段を使ってでも、欠けた欠片を集め直さなければならない」
「我々の望みは、閉ざされた封印の中でお眠りになられてる姫様を取り戻す事‥ただ一つ……」
彼女らが待ち望む永きに渡る切望が遂に叶う、をの時は着々と近づいてきている。
「リーシア……」
ゴウセルらは、悲哀に沈むリーシアの事を気にかける。
「うう……うう……あ……ああ……あああっ…………!!、いやああああああああっ…!!」
彼女脳裏に刻まれた剥がれ落ちる事のない凶夢の残夢に悶絶状態で、心の衰退が加速し、その連鎖が更なる呪縛の侵蝕を呼び、彼女の身体は段々と魔神の呪縛によって疲弊した心で、呪縛に抗えるような精神力さえ、衰弱している…だが、無慈悲に呪縛は彼女の心を闇へ。
「リーシア………???」
「あ……あ……ああ……ううう…………」
異様な空気が漂う中、彼女らが遠隔で秘密裏に仕掛けた罠はこれだけに止まらない。リーシア達はずっと永遠にあの魔神族らの術中に嵌り、掌で支配されてる事に変わりないのだから。彼女ら魔神族は、着実にリーシアとゴウセルを深淵の闇へと陥れる為に。
「ふふっ、さあ……今よ。 」
『主導権剥奪』
「…………!!、……………………」
「………………っ……、ゴウ……セル………? 」
【…………身体の支配権、主導権は私が奪った。こいつは奴隷の骸に成り下がった、こいつの身体丸ごと乗っ取れば、貴様達は何も出来まい、そして此奴の身体にも、もう直呪縛の侵蝕の魔力源となるものが流れ込み、深淵の呪縛に蝕められる事だろう、そうなれば‥此奴は我々魔神族の従順なる生贄候補になる……】
「っ………!!!、ゴウセルの身体から出て行って……っ!!」
【ははははっ‥!!、どうだ?こうすれば例え貴女様であろうが、どうも出来ないでしょう】
「ゴウセルの身体を乗っ取って、誘導するなんて‥なんて卑怯な真似を…! 」
【はははははっ…!!!!、もうこの運命は変えられない。全て決まっていた事……、………っ…!!、何だ……、此奴の身体の主導権は私が剥奪した筈…何故だ‥‥!】
「まさか、ゴウセルの奴、乗っ取られた意識に抗ってるのか……」
「…………っ‥‥、ゴウセル‥…彼奴らなんかに‥‥堕ちないで……、貴方まで……負けないで‥っ!!」
リーシアは自身の身体に絶えず、襲いかかり……ゆっくりと侵蝕を進める呪縛の痛みに何とか耐えながら、彼にそう告げた。
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