テラーノベル
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『もう何を言っても無駄だ、既にこいつの肉体と魂の主導権は全て私が乗っ取った、ははっ…!!こいつの身体葉扱いやすくて助かる……呪縛エネルギーが蓄積してしまえば、魂のない、抜け殻の奴隷同然となる……』
「遠隔で、誰が彼の身体に入り込んだのか知らないけど、ゴウセルの体から出て行って‥!!」
『それは出来ない相談だ、そんな無駄な要求をしても何の意味もなさない』
身体を乗っ取られ、もう殆ど『ゴウセルとしての』自我もなく、呪縛の侵蝕が進みゆくにつれ、呑み込まれ、肉体と自らの魂の所有権と主導権は、もはや何者かによって奪取され、抗う事もままならない。『はははっ…!!、こいつの身体と魂は私の物だ、全てこの手で掌握した……ああ、心地が良い…何度もこいつの事を呼んでも無駄だ……』
ゴウセルの、身体全てを支配し、乗っ取った何者かはそう言った。
「…………っ…!、姑息な真似を使って‥、一体どうするつもりなの……っ!、私はともかく、私の……何よりも大切な最愛の人まで、こんな行為に陥れて……、魔神族の呪術魔法は、その者を蝕む力が、加減を間違えたら、下手すればその呪いに耐えきれなくなり、息絶える…それを知った上での行動なのかしら?彼が儀式が始まるそれ以前に絶命してしまっては、貴方達が思い描いてる計画は全て水の泡になるわよ?」
『ああ、勿論知っている、だが……こいつとしての意識などもう無いに等しい‥こいつの全てを支配した、この身体はもう私のものだ』
すると、ゴウセル?の身体に黒い紋章や字が首元や顔、手足に複数箇所に刻印されていった。完全に彼としての意識全てが深淵の闇の侵蝕に飲み込まれようとしている。
「っ……!!、ゴウセル…っ…!!、お願い……自我を取り戻して……っ…!お願い……屈しないで‥‥!」
リーシアはゴウセルに問いかけ続け、救おうとしている一方で、自身の身体を今も着実にゆっくりと侵蝕が深刻化し続けていき、その過程で生じる呪縛の痛みを背負いながらも目の前に立つ、彼にそう言い放つが、リーシアの悲痛なる思いの叫びはもう、届きそうにない。
『無駄だと言っているだろう?何度同じ要求をされようが、私はその易い要求など答えるつもりもない、こいつの身体は私の身体の器となった…』
「こんな強引な手段まで使うとは、相当君らにはもう余裕でいられる時間の猶予がない事が見え見えだよ、姫様とその大罪人を逃したのが仇となったね、君らの計画性は本当にズボラも良いところだ」
「凶夢の幻術の術中に姫様を陥れる事に成功したのを良い事にお前らは安堵した、けど実際は逃す事なく、永遠とあの世界に二人を閉じ込めておく事が、重要事項だった為に焦ってた、それ数万……いや、数億年前から、ずっと我々魔神族一族、騎士団全てが封印の眠りについておられる姫様の目覚めを夢見てきた‥だからこそ、上のあのお方達はかつての姫様のお姿を待ち焦がれ、再び儀式をする為に、ずっと密かに狙いを二人に、最初から目をつけてたんだろ?上手くいくと思っていた大規模計画が、こんな調子じゃ、焦るのも当然だよな 」
『鬱陶しい、だから何だと言うんだ?、裏切り者の部外者共は黙っておけば良いものを……』
彼のありとあらゆる身体の主導権、支配権を精神や魂諸共を奪取され、もう僅かながらの自我さえも、喪失し、略奪された為にもうどんなに彼に問いかけようが、取り戻すのは、困難だ。
「ゴウセル、絶対に……貴方を救い出すから……っ!!」
『呪縛に蝕まれ、脆弱になったその精神と身体で、こいつを救い出す……と?あははっ!ご冗談を‥ーそんなの、たかが無駄な足掻きでしかない』
「この雰囲気、それに人が変わったような変貌ぶりに口調もあの手下達ではないようだな、だとすると考えられる可能性としてあげられるのは……封印されし魔神の化身が奴の身体を支配している……」
「ああ、そんな気がするな」
「貴方の正体が何だか知らないけど、これ以上私の……私の大切の人の身体に居座って苦しめないで…!」
『はははっ……、とりあえずの束の間のお遊びは終わりだ、もう直ぐだ、もう直ぐで永きに渡った眠りから醒められる…』
そう言って、ゴウセルの身体を乗っ取っていた謎の存在の気配は彼の身体から離脱し、その反動で彼は気絶した。
「ゴウセル…!!」
「…………ん……‥」
「良かった……良かった‥!」
と、リーシアは元のゴウセルに戻った嬉しさのあまり、ぎゅっと飛びつくように彼に抱きついた。けど、同時に彼女はゴウセルの身体に触れた途端に、『ある異変』を感じ取った。
それはもう、薄々勘付いていた事で、「ゴウセルにまで……呪縛エネルギーが……、それに多分まだ……貴方は彼らの支配の範囲外から逃げられてない‥…」
「リーシア………」
ゴウセルが、あの何者かに身体を乗っ取られた件は突然の収束を終えられたが、しかしそれと引き換えにリーシアの心臓部に眠っている膨大な呪縛エネルギー溜まりがゴウセルにまで転移してしまった。
それにゴウセルはリーシアの完全体を創り上げる為の神聖な大いなる大規模の儀式をする上で、最も重要な鍵とも言える存在、その為の必要手順である程度生贄対象も、魔神の呪いを受けおかなければならない。
もう、ゴウセルは益々彼らの手中から逃れる事が出来なくなった。「また、私のせいだ‥‥…私のせいで、貴方を巻き込んで‥苦しませてしまう事に‥ほんとに‥…ほんとに…ごめんなさい‥……」
「リーシア、そんな顔しないでくれ……こうなる事は分かっていた…儀式の神器の器となりうるのも、予測はしていた…君が謝る必要などない」
「で、でも……、っ…!!、あああ……」
「悲しみに引き寄せられ、魔神の呪いの侵蝕が早まってしまう、そうなれば君は奴らの思いがままになってしまう、強く抗える精神力を保っていた方が良い、闇に呑まれない為にも。」
「分かってる……けど、だけど……これまでだって私が居たから…私のせいで、貴方は沢山傷付いて……ぐすっ……」
ポロポロと流れていく涙、悲しみに誘導されて這い寄る呪いの侵蝕に苦しめられる。その連鎖が彼女の心どんどん深淵の闇底に引き摺り込もうと‥。
何はともあれ、ゴウセルに無事に元通りになってとりあえずは良かったと安堵していた矢先だった。
「あーあ、もう終わり?まあ、魔神の呪いをあんたに遷移されただけでも十分な成果といえるが……」と何処からか突如として声が聞こえてきた。
間違いなく、リーシアとゴウセル…いや、明確には彼なのか?声の主は言わずもがな、あの魔神族の血縁者騎士団の連中の一員だ。
「隠れてないで出てきたらどうなの?、もう気配はとっくに察知出来てる、さっさと姿を現しなさい」
とリーシアがそう挑発すると、その者はゆっくりと姿を現した。「もう見つかっちゃいましたか、本当なら、じっくり陰に潜み隠れて操り、じっくり術中の罠にお二人を嵌らせるつもりだったけど、でも我々が忠順なる忠誠を誓いし、頭領様方はそんな猶予なんて与えてくれなそうだし……」
また一人、魔神族の血縁者がリーシアらの前に立ちはだかる。
「奴隷人形に相応しい逸材である貴方は、儀式の開始の合図が鳴るそれまで‥‥我々の手から逃す訳にはいかない、最後の使命として貴方には、姫様の復活の為の必要犠牲の代償として、命を散らして貰う、そうなれば貴方の役目はもう終わり……」
「俺達を蝕んでいたあの術は解けた。俺はもうお前達の言いなりになるつもりなどない」
「はあ、円滑にいくと踏んでここまでやっときたのに、まさか我々の播いた歯車が同族の手によって狂わされるなんて…!、けどそれなら……ふふっ……あははっ……」
そう言って、ゴウセルに何かまた良からぬ事を企んでいる…そんな怪しげな微笑を溢した。
「絶対に……ゴウセルにはもう……傷だらけになって欲しくない、もう誰であろうと彼に近付く不届き者は、私が許さない……」
リーシアはゴウセルを守るようにして阻む。
「リーシア、まだ君の記憶の最奥には凶夢の残り香がトラウマという形で、残り続けている‥下手に奴の言葉に耳を貸そうとしない方が良い、思う壺に躍らされるだけだ」
「……っ………、けどっ…!」
「リーシア、君は何があっても俺が守り抜く、君を守る為なら…どんな事でも尽くす」
「ゴウセル……っ……」
「ちっ…!、あれだけあんたと姫様に施した術の罠を物怖じも臆しないで突破されてしまうとは…!…………ふふっ、まあ良いや。それならもう一度やれば良いだけ、見知った同族相手にこんな強行手段‥使いたくなかったけど、何時迄も抵抗を続けられるのも癪なんだ、だから此処からは容赦なく武力行使でいかせて貰うよ」
「リーシア、君は少し離れていてくれ」
「ゴウセル……!?、けど……もう貴方が傷付く姿を見たくないの…これ以上…っ…!」
「はあ、揃ってその御つもりなのならば、貴方であれ姫様であろうが、此方としてもこれ以上の遅延は許されそうにないので、だからこそもうどんな手段も厭う必要などない…大いなる儀式は、貴方方お二人が揃えば、いつでも終焉の訪れの時に誘えるのですから……」と呟いた。
こうして、両者の譲れない想いを胸に……。
「あははははっ‥!!!此処なら容赦なく力を思う存分に振る、こんな強攻手段なんてほんとはとりたくなかったけど、姫様や貴方が故郷の地に戻られないというのなら、それも仕方ない……」とやはり執拗にゴウセルに標的の狙いを定め、更なる術中に嵌らせようとしている。
一方で彼はリーシアの事を守ろうと必死に相手の様々な特殊の特性を持つ魔術にも、自身の得意属性である精神魔力で対抗する。
「ゴウセル………っ………」
「姫様…………」
同胞の二人は、脳裏に深く刻まれた凶夢の幻術、それに今も絶えず蝕みゆく魔神の呪いに苦しんで入るリーシアに寄り添った。
すると、不意にリーシアはポツリと涙を溢した。
「姫様……?」
「ゴウセルが自分の傍から離れてったから、こりゃ俺達が思ってる以上にリーシアが抱いてる彼奴への想いや依存が、あの時より強くなってるみたいだな」
「すぐ其処に彼は居るのにね……なのに、何で私…悲しくなっちゃうのかな……凄く淋しい……それに彼を失っちゃったらきっと、自分の事が分からなくなって、何を理由にして生き甲斐を感じていけば良いかさえ見失う……」
とリーシアは守ろうと決死の覚悟で闘っているゴウセルの事を今にも、胸が張り裂けそうな心境で彼の後ろ姿を静かに見守る。
「大丈夫でしょう、彼は七つの大罪…それに彼は彼奴らが目論んでる『大いなる神聖な儀式』に必要不可欠な犠牲の代償となる、言わば…捧げ物の神器、そんな彼を始末するような馬鹿ない行為には走らないでしょう」
「分かってる、彼は…私の全てを解放する為の唯一で最大の鍵……だからこそ彼奴らは途中で標的を変え、ゴウセルを執拗に狙うようになったのも、けど……理解してても、不安な気持ちが消えないのもまた事実なの……それに彼にも魔神の呪いが遷移されて、きっとこうして闘ってる今も少しずつ、呪いの侵蝕が進んで、彼を苦しめてる…もうあの人には傷ついて欲しくなんかない…!」リーシアはポツリと涙を流した。
その頃、ゴウセルと魔神族の者の同胞同士の戦闘は続いていた。
「はあ……はあ………、あんたがこういう趣味の悪い厄介な魔力持ちだって事は当然把握していたけど……いざその魔力が目の前に立ちはだかると、ほんとに最悪な気分ね……」
「いい加減諦めてくれないか?、例え君らが執拗に俺達に標的を向けようが、もうお前達の言いなりになるつもりはない、奴隷にもな。
ゴウセルは、精神魔力技などを自在に操り、精神を擦り減らし…相手は戦意喪失寸前……気付けば、ゴウセルの方が優勢になっていた。
どうやら、彼女は所詮は同胞…と思っていたのだろうが、ゴウセルの実力を舐めていたようで最初の威勢はなくなった。
「くっ…!、ああ………こうなったら……またあんたを……あんたの意識を支配し、乗っ取れば良い、此方だってあんたよりは無くとも、多少の精神操作や意識、記憶操作の魔力くらい持ち合わせてる……ふふっ……」
……未だ終わらぬ双方の戦闘…ゴウセルは気を緩ませる事なく、警戒心を心得ながら攻撃を仕掛ける。彼は精神や神経、記憶の部位に標的を定め、じっくり追い詰めていく魔力技を次々と繰り出し、軽快な身のこなしで、立ち回りをしていく、流石といったところだ。
それに、内側から追い詰めていく陰湿な魔力技の戦法だけにとどまらず、神器を使武器とした物理攻撃も。
「くそっ……ちょこまかと動いてっ‥!!、っ…!!」
「未だ続けるつもりか…?」
「当たり前よ……あんたを……我々の儀式に……神聖な大いなる儀式には、犠牲と代償の器となる神器が必要…安易に事を運べると踏んでここまで来たというのに……まさか重要人まで洗脳が解け、反抗するなんて」
「お前達は、俺達の事を舐め過ぎていたな、あんな単純な事で俺やリーシアは屈したりしない、遠隔で身体、精神に侵入し身体の支配権を奪うという戦術は、想定外だったが……」
「ちっ…!!、ここまで……やって追い詰めたあんたを…連れ込む隙をやっと掴めたんだ……だから、絶対に後に退く訳にはいかない…!」
「随分と執拗で強固な精神だ、だが俺が抱く思いは変わらない……」
「あはは……あははははははっ……!!、あんたは我々の儀式において、最も重要な要となる鍵……儀式の代償と犠牲として、その身体魂諸共…生贄の捧げ物になる……だから手荒な真似は正直許されないけど、でも……全ては我々の切望を叶える為……」
「お前達の言いなりになるつもりはないと言った筈だ、お前達に容易に躍らされる程俺達の精神は軟弱ではない」
「はあ、まさかここまで抵抗される事になろうとは…同族であれど、厄介ね…ただの魔力で創造された人形が……、想定以上に忍耐力がしぶとい…」
「あまり長期戦にはしたくないが、手を退かないというにならば仕方がない」
「此方も早いとこ、あんたを我々の奴隷として引き摺り込まないと、主様方が痺れを切らして何が何でも…どんな手段を使ってでも、連れて帰って来いとの通達が…儀式を開始する刻はすぐ傍に迫っている…」
「それをして一体何になるというんだ?彼女の記憶を取り戻し、覚醒したその先に待っている結末は、希望など何もない、種族としての滅亡の運命を辿るのみ、ただそれだけではないのか?」
「っ…!!、大いなる姫様の復活…それだけを我々は願い、望み…ここまで生きてきた、どんな終焉になろうが、我々の欲望と復讐を果たせればそれで良い……」
そうして、一向に諦める事なく、彼女は自らに下された命令と使命を遂行すべくゴウセルに襲いかかる。
想定以上に長期戦となり、中々彼を術中に陥れる事が出来ず、悪戦苦闘する同胞……しかし、儀式の準備はとっくに整っている。
だからこそ、儀式に必要不可欠な神器の器の召集を迅速に済ませ、実行しなければならない。彼女らの顔である魔神族の一族の主、暗黙の影に隠れているリオネス王国の聖騎士長らが計画を遂行すべく、うずうずして、痺れを切らしている頃だろう。
妙な逆鱗に触れてしまう前に、彼女としては早くゴウセルを誘導したいだろうが、彼は当然抵抗の姿勢を崩さない。
「仕方ない………何時までも抵抗を続けるというのならば、もう手段さえ選んでられない…どんな手を使ってでも厭わない、ふふっ…本気の策に突入するしかなさそうね」
そう言うと、彼女は遠隔で指示を命じている者達と連携し、次なる作戦へ。
【もう大いなる儀式の準備はとっくに終わっている、後は姫様とあの大罪人を連れてくる事が完了すれば、準備は全て整う。どんな手段を使ってでもから誘導しろ。
我々は一時でも早く姫様の復活を渇望している。急げ、だが二人だけは間違えて始末しないようにな】
「了解…………」
【抵抗をこれ以上続けるなら、どんな強行手段も使え、あの者の支配権は最早我々が掌握しているに等しい、あの手を使っても良い】
と命じられ、彼女は遂に更なる手段へ。
それを不安げに見守るリーシア達。
リーシアは彼が自身の傍から離れ、其処からかなり時間が経過してきているからか依存による禁断症状がの発症が加速している模様。けど、それと同時に彼女は解けない幻術の凶夢が絶えず襲ってきており、精神状態がかなり危ぶまれている。「ゴウセル…どうか、無事で……貴方を…失うのは死ぬ事よりも……痛いの」
「姫様…………」
「随分と長期戦になっちまってるな、こりゃ俺達も歌声した方が良さそうだな」
「いや、やめておこう。彼奴らの狙いは、奴てリーシアだ。それに下手に我々が割って入った場合、妙な事を仕掛けてくるという事も可能性としては十分に有り得る。奴は奴でリーシアを守ろうと必死に闘っている……」
「け、けど……」
「メリオダス様、ゴウセル様を信じましょう、きっと大丈夫」
「でも、直にゴウセルも呪いによる痛みが生じ始めると思う、彼の身体に触れた時間違いなく…私の心臓部に在るエネルギー反応と同じものを感じたから……」
「彼奴も魔神の呪いに侵されてる…か、儀式の代償と犠牲の神器としての材料として選ばれたからか、けど何で態々そんな事を仕込んでいく必要があるんだ?」
「その答えは簡単だ。それが我々魔神族の中で伝承として言い伝えられた事‥あのお方の本当の姿を知る者はそう居ないが、封印の眠りにつき……数億年前からずっと…姫様を復活させるには、それ相応の対価となる代償の生贄が必要…最初から彼がその候補に選ばれたのも、だから全ては決まっていた」
メリオダスらがこうやって話している間にも、ゴウセルは未だ譲らぬ戦闘を繰り広げる。目の前に立ちはだかる彼女はゴウセルから受けた数々の精神魔力攻撃にやられ、最初程の威勢はなくなったものの、目的を遂行しようという事に対して強い終着信と使命感を背負っている為か、諦めようとしない。
「随分と屈強な精神だな、其処までしてその大いなる儀式とやらを遂行したいのか、大分脆弱にしたつもりだが‥どうも君らの精神力はかなりのもの、こうなれば徹底的にお前の精神と神経を壊す必要がありそうだな」
「ああ、あ……此処で諦める事などしない、全ては大昔からずっと切望していた願いを叶える為‥‥そして全てを支配して我々魔神族が頂点に立つ為に…もっと本気を出してやるんだから…!」
【さあ、今だ……】
【深淵の掌握】
「……?」
「【常闇 侵蝕支配】」
「…………あ‥……」
「【深淵の契り】」
「っ…………」
魔神族が有する凶悪な魔術を受け、ゴウセルはガクッと膝をついた。「…………」「これで無事掌握成功‥……ははっ…!!精神魔力が厄介だったが、案外大した事ないね…流石は…、いえ、所詮は人形ね」
「さて、愈々儀式の益々の準備へと入るとしましょう。姫様の復活にはまずあんたを生贄……捧げ物の神器として血を流して…肉体と魂諸共代償になるの、もうとっくに儀式の合図はもう直命じられる事でしょう、それじゃあ手始めに…姫様を……」
「………!!!」
突然、リーシアの足場に謎の禍々しい発光が……そしてゆっくりとリーシアの身体は消えていき…そして……。
「リーシア‥?」
「そんな……!!、姫様…!!」
「儀式の……大いなる儀式の刻印が…もう直訪れる。姫様がお目覚めになるには幾つか段階を踏む必要がある…その手順がもう直来る……」
「……?、なんだ……?」
ゴウセルはとある違和感を感じ取った。自身の身体を蝕みゆく呪いの侵蝕とその反動で浮き出る紋様…それらの反動で彼の生命力を吸収し始めているようだ。
「…………力が……入らない……」
「あははははっ……!!、さあ僅かとなった束の間を楽しむが良い…あんたは心がない、故に感情もそれに伴って感覚というものもない、その人形の器で良かったね」
そう言って、彼女はゴウセルを残し、リーシアをひと足先に拐った。いい潮時頃になったのを見計らって、彼を拐うつもりなのだろう。
何せ、ゴウセルは魔神族騎士団一族が目論んでいる大計画の中で儀式の最終段階。最終核といえる存在だ。
リーシアを先に攫えば、後は残りのもう片方のぷピースを嵌め込むのみ。永い年月を経て企てられていた壮大な大規模計画だからか、やけに彼女らは嬉々としている。
まあ、それ故の油断が招いた誤算もあったが。
「そんなこのままでは……本当に最悪の運命が真となってしまう、眠りし姫様がお目覚めになられてしまったら、我々全員で立ち向かったとしても、まともに太刀打ち出来ないだろう」
「ああ、何とかして阻止しないと。けどこの大罪人も‥余裕をかましてられるような猶予がなくなるのも、もう時間の無駄ってのもまた事実……」
とゴウセルに視線をやってそう告げた。
「今更もう止めに行ったとしても、もう無意味に近いって事か…まさか、こんな事になっちまうとは……」
「………………」
そうして、その時は刻一刻と迫っていた。彼を蝕む呪いはもう止まらない。切望の歯車が今、回り始める。そして立ちはだかる脅威は、何時しか大きくなって彼らを深淵の闇で覆い包むだろう。
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