………Side 真莉
多分響さんって、完全なる理系の男脳で、すごくデキる人なんだと思う。
なのに、あんなイケメンで、意外に女子には疎くて。
琴音に関しては、不器用でしかないところも、結構いい。
いろいろ不穏な話は琴音に聞いたなかで、
誘われて行くことにした温泉旅行。
車に乗ってみれば感じる、大いなる違和感。
なんだこの…優菜って子は。
幼なじみだって言うけど、2人の邪魔をしたいのか?
様子を見ていれば、響さんにかまってほしそうにうろつきながら、車酔いした琴音を気遣う響さんの向こうから、心底心配そうに覗き込んだりして。
…悪い子じゃなさそうだな。
車に戻ってきたと思ったら、肩を落として響さんに怒られたとぼやく姿が子供っぽい。
「響さんのこと、好きなの?」
聞いてみれば、ポッと頬を染める姿がなかなか可愛らしい。
そのまま伝えてみれば、ますます赤くなる顔。
意外と、純情なのか…?
「あんまり…2人を邪魔しないほうがいいと思うけど。響さん怒ると怖いでしょ」
「す…好きっていうか、響は皆のものなのに、琴音だけ特別扱いされてるから…」
…好きなんじゃん。w
そこまで話したところで、2人が車に戻ってきた。
「…名字が真莉って…すごく珍しいね〜」
あからさまに話を変えるから、思わず笑ってしまう。
「内緒にしといてやるから、あんま邪魔すんな」
耳元でコソッと言って、俺は話を合わせた。
それからはちょっと態度を変えた優菜。
それでも2人が同じ部屋なのは許せないらしい。
諦めろよ。
…俺みたいに。
わかりやすい響さんの思いに当てられて、食事が終わって2人にしてやろうと思い立つ。
鈍いのかわざとなのか、気付かない優菜の手を取ってやれば、それくらいの接触で顔を赤らめる優菜にも「…お?」と思う。
「ちょっと…!外に行くんじゃないの?」
エレベーターに乗って、上の階を押す俺に、大きな目がわずかに強くなった。
「ま、いいから…ついてきて」
優菜の内心を読んで面白くなった俺は、握った手をわずかに強くして…俺と響さんの部屋の前まで連れてった。
「な、なに?」
手を繋がれてるのに、後ずさりして俺と距離を取ろうとする優菜。
…こういう反応、嫌いじゃない。
…………
「靴下はいいっ!下駄が履けなくなる!」
「この辺は冷えるんだろ?東京と違って」
そう思ったから持ってきたのに、靴下は押し返され、マフラーだけ巻いて行くという。
「まぁいいや。そんじゃ、行くか」
外の散歩に付き合わせるお嬢さまには完全な防寒をさせて、俺は優菜と2人、旅館の外へ出た。
……………