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#闇堕ち
るしゅ
1,039
flower
70
#ミステリー
穏霞 乃矢
467
朝 7:08。
「ひよりー! 起きなさい! 遅刻するよ!」
お母さんの声で目が覚める。
「……ん。」
昨日のことが頭をよぎる。
スマホ。
慌てて画面を見る。
残り10時間51分
数字が減っている。
「夢じゃない…。」
制服に着替えてリビングへ行く。
「今日パンでいい?」
「うん…。」
テレビでは天気予報が流れている。
いつも通りの朝。
なのに自分だけ心臓が落ち着かない。
通学路。
コンビニの前で友達の結菜と梨乃が待っていた。
「ひより、おはよー!」
「眠そうじゃん。」
「昨日ゲームしてた?」
「いや、ちょっとね。」
言えない。
「私、今日死ぬかもしれない。」
なんて。
三人で歩きながらアイスの新作の話をしたり、体育祭のリレーの話をしたり。
普通すぎる会話が逆に怖い。
教室。
「起立、礼。」
一時間目は数学。
黒板を見ていても頭に入らない。
机の中でスマホが震えた。
ブッ。
先生に見つからないようにこっそり見る。
残り8時間13分
「……。」
「朝霧。」
「え!」
「問題。」
教室が少し笑う。
「ご、ごめんなさい。」
久しぶりに当てられて答えられなかった。
休み時間。
結菜がジュースを机に置く。
「今日ほんと変じゃない?」
「顔色悪いよ?」
「寝不足。」
そう笑ってごまかす。
そのとき。
後ろの席から椅子を引く音。
神崎蓮が立ち上がる。
すれ違う瞬間、小さく言った。
「放課後、帰るな。」
聞こえたのはひよりだけ。
「え?」
振り返ったときにはもう教室を出ていた。
昼休み。
購買へ向かう廊下。
ひよりは蓮を見つけて追いかける。
「ちょっと待って!」
蓮は止まらない。
階段まで来てようやく立ち止まる。
「昨日のこと教えて。」
「教えたら巻き込む。」
「もう巻き込まれてる!」
少し沈黙。
蓮はため息をつく。
「今日18時。」
「え?」
「旧校舎に行くな。」
「理由は?」
「……死ぬから。」
言い残して行ってしまう。
放課後。
友達が声をかける。
「ひより、一緒に帰ろ!」
「今日は先生に呼ばれてる!」
とっさに嘘をつく。
「じゃあまた明日ね!」
笑顔で手を振る友達。
その笑顔を見送りながら、一人だけ旧校舎へ向かう。
夕方の学校は静かだった。
部活のボールの音だけが遠くから聞こえる。
スマホを見る。
17:58。
あと2分。
廊下の奥から誰かの足音が響いた。
「……誰?」
返事はない。
そして18:00。
スマホが赤く光る。
対象を発見しました。
ひよりのすぐ後ろで、教室のドアがゆっくり開いた。
――第2話 終
コメント
1件
ああ、このじわじわ来る怖さ、すごく好きです。タイマーの数字が減っていく中で、アイスの新作や体育祭リレーの話をする「普通」が逆に痛い。蓮が「死ぬから」ってだけ言って去る潔さ、無駄な説明がないからこそ逆に重い。そして17:58から18:00、スマホが赤く光って「対象を発見しました」…教室のドアが開くラスト、次を読まずにはいられませんね。設定の切れ味が良いです。