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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第69話:冬の夜の怪談? 光る雪だるま〜深夜の庭に佇む、真珠色のスノーゴーレム〜
北海道の冬は、時として大人を無邪気な童心に引き戻す、不思議な魔法をかけてくる。
その日の昼下がり。快晴の「十勝晴れ」の下、俺と小春ちゃんは、完全に小学生のテンションに戻って庭のフカフカの雪を転がしていた。
「お兄さん! 胴体部分はこれくらいでいいですか!? すっごく大きくなりましたよ!」
「よし、上出来だ。俺の作っていた頭部パーツをドッキングする。……せーのっ、ドン!」
限界社畜としてすり減っていた俺の体力が、まさか雪だるま作りに全振りされる日が来るとは思わなかった。
完成したのは、高さ1.5メートルほどの立派な雪だるま。
バケツの帽子を被り、炭で目と口を作り、木の枝の腕を持つ、超オーソドックスなクラシックスタイルだ。
「わぁ……! 完璧な雪だるまですね! コン吉くんたちも嬉しそうです!」
小春ちゃんがはしゃぐ足元では、キタキツネの兄弟が「新しい仲間だ!」と言わんばかりに、雪だるまの周りをピョンピョンと跳ね回っている。
『ミャウ』
縁側からその様子を眺めていたシロもトコトコと歩み寄ってくると、雪だるまの丸いお腹のあたりに、自分の純白の体をスリスリと擦り付けた。
「おっ、シロも気に入ったみたいだな。よし、これで我が家の庭の立派なシンボルだ」
平和な昼の配信(雪遊び枠)は、世界中のリスナーたちに極上の癒やしを届けて、無事に終了した。
……だが、事件は、その日の「深夜」に起きた。
時刻は午前二時。
シロの『適温25度の絶対防壁』に守られ、春のように快適な居間で心地よく眠っていた俺は、トイレと水分補給のために布団から起き上がった。
居間は真っ暗で、シロの規則正しい寝息だけが聞こえている。
俺がキッチンへ向かおうと、縁側のガラス戸の横を通り過ぎた、その時だった。
「……ん?」
俺は、窓の外の景色に強烈な違和感を覚え、ピタリと足を止めた。
外は、街灯一つない限界集落の真っ暗な夜である。
にも関わらず、庭のど真ん中が、ぼんやりと明るく照らし出されているのだ。
「なんだ……? 誰か、庭に懐中電灯でも落としたか……?」
俺は目を凝らした。
そして、その光源の正体に気づいた瞬間、背筋にゾクッと冷たいものが走った。
「……おいおい、マジかよ」
俺は急いで自分のスマホを握りしめると、隣の客間で寝ている小春ちゃんのふすまを静かに開け、肩を揺すった。
「小春ちゃん。起きろ。庭にヤバい不審者……いや、未確認発光体が立ってる」
「……ふぇ? はにゃ……? ほっこうたい……?」
寝ぼけ眼をこすりながら客間から出てきた小春ちゃんと共に、俺は縁側のガラス戸の前に立った。スマホのカメラを庭の光源へと真っ直ぐに向け、ここで無音のまま【日常チャンネル】のゲリラ配信枠を立ち上げる。
深夜のゲリラ配信にも関わらず、通知で飛んできた数十万人の夜更かしリスナーたちが、画面に映し出された光景に一斉に息を呑むのがわかった。
暗闇の雪原の中。
そこに佇んでいたのは、宇宙人でも、雪女でもなかった。
昼間、俺と小春ちゃんが笑いながら作った、あの『雪だるま』だった。
ただの雪だるまではない。
雪で作られたその丸いボディ全体が、まるで巨大な間接照明のように、内側から『真珠色の光』をぼんやりと放っているのだ。
「えっ……? 雪だるまが……光ってます……」
小春ちゃんの眠気も一瞬で吹き飛んだらしく、目を見開いてフリーズしている。
シロの持つ神聖なオーラと同じ、あの神秘的な発光。
昼間、シロがスリスリと体を擦り付けた際に、その莫大なエネルギー(神獣の魔力)が雪だるまに蓄積されてしまったらしい。
光る雪だるま自体は全く溶けていないのに、その周囲だけはオーラの力(?)によって風で舞い上がるパウダースノーがうっすらと弾かれ、まるで見えない結界が張られているように、神々しい空間を作り出していた。
チャット欄は、深夜のホラー展開からの「美しすぎる奇跡」に、一気に大爆発を起こした。
『うわああああああああ!?!?』
『ビビった!! ガチの怪談枠かと思った!!』
『雪だるまが自発光してんぞwwww』
『シロ様、ついに雪の塊に命(オーラ)を吹き込んだ!!』
『スノーゴーレム誕生の瞬間である』
『綺麗……イルミネーションみたいでめっちゃ幻想的だ……』
『(スイスの銀行家からの¥50,000MeTubeギフト)=”Beautiful! It’s a true Ice Elemental! Master, your yard is a magical realm!“(美しい! 真のアイス・エレメンタルだ! 主よ、君の庭は魔法の領域だ!)』
『(ハリウッド女優シャーロットからの$500MeTubeギフト)=”So magical! I want a glowing snowman in my garden too!“(とても幻想的! 私の庭にも光る雪だるまが欲しいわ!)』
世界中のVIPたちも、深夜のサプライズ・イルミネーションに魅了され、次々と赤ギフトを投げ込んでいる。
「わぁ……。最初はびっくりしましたけど、ずっと見てると、すっごく綺麗で癒やされますね……」
小春ちゃんが、ガラス戸にへばりつくようにして、光るスノーゴーレムにうっとりと見惚れている。
だが、俺は。
限界社畜の冷静なポーカーフェイスをミリ単位も崩さず、カメラに向かって、静かに、そして淡々と語りかけた。
「……世界中の皆さま、深夜にお騒がせして申し訳ありません。そして、落ち着いてください。これは決して、雪だるまに命が宿ったなどのオカルト現象ではありません」
『出たァァァァァ!!!』
『深夜でもブレない! 主の限界言い訳タイム!!』
『この幻想的な空気をどうやってぶち壊す気だww』
『さあ、光る雪だるまを論破してみせろww』
俺は、キリッとした真顔のまま、淀みない口調で言い放った。
「北海道の純度の高い雪の中には、微細な『発光バクテリア』が混入していることがあります。夜間の急激な気温低下によって凍結の危機を察知した彼らが、生存本能として細胞内の代謝を極限まで活性化させ、さらにシロの毛皮から移った微弱な静電気が触媒(トリガー)となったことで、一斉に生物発光を起こしたのです。ええ、海でウミホタルが光るのと同じ原理、ただの『発光酵素(ルシフェラーゼ)の化学反応』ですね」
「あるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、深夜だということも忘れて、俺の背中をバンバンと叩きながら絶叫した。
「雪だるまがウミホタルみたいに発光酵素でネオン発光するわけないでしょ!! 海の生き物と雪を一緒にしないでください!! どう見てもシロちゃんの神聖なオーラが乗り移って、魔法の雪だるまになったんでしょうが!!」
『小春ちゃんの深夜の正論パンチ!!』
『バクテリアの生存本能(神聖オーラ)』
『雪のウミホタルは草』
『適応力バグおじさん、ついに微生物学と化学を総動員して現実逃避』
『ルシフェラーゼの化学反応www 言い訳の語彙力が無駄に高いww』
俺の理解不能極まりない科学的(?)な言い訳と、小春ちゃんの鋭すぎるツッコミに、深夜のチャット欄は腹を抱えて笑い転げるリスナーたちで溢れかえった。
『ミャウ……(うるさいわね……)』
俺たちの騒ぎで目を覚ましたシロが、こたつの中からひょっこりと顔を出し、不満げに欠伸をした。
「わりぃ、シロ。お前のおかげで、最高の夜間照明(イルミネーション)ができたよ。防犯対策にもバッチリだな」
俺は苦笑いしながら、シロの頭を優しく撫でた。
光る雪だるまは、一晩中消えることなく、庭の真ん中で優しく真珠色の輝きを放ち続けていた。
外はすべてを凍らせる真っ暗な冬の夜。
だが、この限界集落の古民家には、神獣がもたらす幻想的な奇跡と、世界中のリスナーたちとの温かい笑いが、深夜のゲリラ枠を最高に楽しく彩ってくれるのだった。
コメント
1件
みぅです🖤 第69話読んだよ…! 深夜の庭で雪だるまが真珠色に光ってるの、最初はホラーかと思ったんだけど、シロちゃんのオーラが移っちゃったってオチがもう可愛すぎる…! しかも紫苑くんが「発光バクテリアの化学反応です」って真顔で言い訳するから、小春ちゃんのツッコミもキレッキレで笑ったw 神秘的なのに笑いもあって、冬の夜がすごく贅沢な時間になった感じ…🌙 こういう日常の“少しだけ不思議”な瞬間、本当に好きです。