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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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さて、チビ和泉を連れてコンビニまで行こう。
子供が子供抱いてたらおかしく思われるかもな、と思って、ワシは二十歳の朝霧の忌み子の格好になった。近くのコンビニまでとは言え、幼児と一緒に歩くのは大変で、ワシは途中からチビ和泉を抱っこして歩いた。
チビ和泉は、寝たら少し元気出たみたいで、コンビニに入ったらワシの腕を抜け出してジュース売り場に直行した。
「おれんじじゅーちゅ!」
『あー、あったなー、これ買うか』
「つぶつぶの!」
和泉が指差すのは、プラスチックのボトルに入った、果肉が入ってるオレンジジュースだ。
『高いやつだな……まあいいか、買ってやろう』
「いっぱいのむ」
『おう、飲め飲め』
3本も買っときゃ持つだろ。他になんか買っとこうか? うーん、欲しいのは子ども用の食器だけど、100均までチビ和泉を連れて行くのは大変だし、今日はこれで切り上げて、食器は通販か何かで買おう。
ワシはチビ和泉の手を引いて、会計を済ませて、チビ和泉を抱き上げた。
「じゅーちゅ、じゅーちゅ!」
『帰ってうがいしてからな』
和泉が元気でホッとしたけど、本当に今の和泉は小さな子供なんだな。
そんな事考えながら、帰り道を行く中。
家に続く坂道の下に、うちのアパートを見上げてるおっさんがいた。割と体格の良いおっさん。
おっさんは、ずっとそこに立ってた。
誰だろう、何してるんだろうと思いつつすれ違おうとして、ふとそのおっさんの顔を見て、ワシは息を呑んだ。
おっさんの面立ちは、和泉によく似てた。
『……!?』
ワシは思わず和泉を抱きしめて、おっさんから距離をとった。おっさんも、すれ違おうとしたワシに目をやって、チビ和泉を見て、目を見開いた。
「え……!? えっ、嘘だろ、豊の!? いつ子供作って……!?」
和泉の父ちゃんだ、こいつ! 和泉から金取ろうとしに来たんだ!!
チビ和泉は、一瞬戸惑って自分の父ちゃんの顔を見て、それから火が着いたように泣き出した。
「やあー!! いやー!! あげない! あげない!! ばいばい!! ばいばい!!」
ワシは、和泉を抱いたまま、反射的にゴツい倉沢静の姿になった。おっさんは心底たまげた顔したけど、追っ払うのが先だ!
『何しに来た!! 和泉の金は絶対やらないぞ!!勝手に訴えられて困ってろ!!』
「い、いや、まず豊に会わせてほし……」
『こいつが和泉だ、バカ!』
ワシは怒りに任せて怒鳴った。
『悪いやつに術かけられてチビになっちゃったんだ! 実の親のくせに自分の息子のことすらわかんないのか!!』
ワシですら、こいつが和泉だってわかったのに!
「い、いや、何を言って……」
『帰れ! 金なんて絶対渡さない! 和泉は真面目に働いて頑張ってんだぞ! そんな金絶対渡さない!! 帰れ! 帰れ!!』
チビ和泉はずっと泣いて、手をぶんぶん振り回して「いや!」しか言わなかった。
「きやい! いや! あげない! きやい!!」
和泉の父ちゃんは、呆然としてワシらを見てたけど、やがて「ほ、本当に豊なのか……?」と呟いた。
『最初からそう言ってるだろうが! 帰れ! 和泉には何もさせないぞ! 帰れ!!』
脅すつもりで、チビ和泉をうまく抱きながら片手を振り上げると、和泉の父ちゃんは明らかにビビった顔をして後ずさり、踵を返して駆けていった。
ワシは、大きく息をついて、チビ和泉を抱き直した。チビ和泉は、もう、しゃくりあげて泣いていた。
「ちとしぇ、ひっ、ちとしぇ……」
『もう大丈夫だからな、泣くな、泣くな、なんにも心配しなくていいから』
それでもチビ和泉は泣き止まなくて、ワシに謝り始めた。
「ごめんなしゃい、ちとしぇ、ごめんなしゃい」
……こいつは、何も悪くないのに。なんにも悪いことしてないのに。いきなり子供にさせられて、泣くほど嫌いな父親に金を無心されて。なんにも悪いことしてないのに……。
ワシは、チビ和泉をよしよしとあやした。
『なーんにも泣くことない、お前はなーんも悪くない、家に帰ろう』
うちに続く坂を登る。お前は何にも悪くない。ひどい目に遭う理由なんてなんにもない。ワシが守ってやる。絶対に、守ってやる。
コメント
1件
ああ…この話、読んでて胸がぎゅっとなったよ…🥺 小さくなった和泉くんが「おれんじじゅーちゅ!」って無邪気に指差す姿に和んだのも束の間、まさか父親が現れるなんて。千歳くんが即座にゴツい姿になって追い払うとこ、かっこよすぎた…! でも何より、泣きながら「ごめんなしゃい」って謝るチビ和泉くんが切なくて。何も悪くないのにね。千歳くんの「お前はなんにも悪くない」って言葉が、じんわり沁みたよ。守ってやるって言える存在がいるって、すごく強いことだと思う。2人の絆、確かに感じた回だった🌙