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 俺は言葉にできそうもない戸惑いを抱えたまま自室である111号室に戻った。玄関で靴を脱ぎシェードの横を抜けると、そこにうずめさんの姿はない。恐らく警戒しているのだろう。俺の横には初神ハジメがいるのだから。しかし彼女は言ってくれた。うずめさんの声が可愛く聞こえた。と。
 彼女に会わせて欲しいと頼まれて一度は断りはしたものの、できうる事なら初神さんにもうずめさんを理解して欲しい。俺はそう思ってしまった。そして、男の俺には理解できない女性の悩みなどたくさんある筈なのだ。だからこそ招く事にした。もしも対立するのなら俺はうずめさんを護る。
 
 
 「うずめ?大丈夫だ。何かあっても俺がいる。だから…出てきてくれ。」
 
 「うずめちゃ〜ん♪女子会しな〜い?。お姉さんとお話しましょ〜う?。ほぉらぁ?怖くないわよ?。一緒にあったかいお茶でも飲みましょお?」
 
 
 なので敢えて連れて来た。俺も今のままうずめさんの傍にいてやりたいが『いつまでも』とは行かないことも解っている。それに俺だけでは解決してやれないことは当然としてあるだろう。少なくとも狭い場所に閉じ込められて生かされてきた俺よりも遥かに知識も経験もある同性の方が、これからの彼女にとっても絶対に良いと決断した。味方は多い方がいい筈だ。
 
 
 「…おかえりなさい…れお。その人。…だ…大丈夫…なのね?。は、初めまして……うずめ……です。……それで…あの。…じょし…かいって…なに?」
 
 
 暫しの間を置いて、脱衣所兼洗面所の方からうずめさんが姿を見せた。桜色なバスタオルを胸上から巻いている。どうやらシャワーでも浴びていたらしいが、いつもより色っぽい。しかし俺の肩越しに彼女を見ているであろう初神ハジメにはどう見えているのだろうか?。霊感的な強弱によっては人型のモヤに見えたり、腐乱した姿に見えたり、肌の溶け落ちた骸骨に見えたりするそうだ。…それは野晒しにした死体が朽ちゆく姿と言える。
 
 
 「貴女がうずめちゃん?。やぁーん♪可愛いっ♡。お肌スベスベねぇ?うずめちゃんは幾つなのぉ?。良いなぁ、透き通る素肌ってこうゆうのを言うのねぇ♪羨ましいわぁ♡。あ。知ってるわよね?あたしのこと〜♪」
 
 「うぶがみ、はじめさん。……れおを……助けて…くれてありがとう。ちゃんとお礼を言いたかったの。あの、うずめの事、こ…怖くないですか?」
 
 
 俺と二人っきりの時には見せないうずめさんの戸惑う表情に悶絶した。彼女と出逢ってまだ四日だとゆうのにすっかり魅了されている。少し話し難そうだったのと、肌が透けている気がしたので俺は何気に寄り添って細い腰を抱き寄せた。そこはタオルが巻かれていて素肌に触れない部分だ。少なくともまだ、うずめさんの生肌に触る勇気がない俺はやはり臆病者だ。
 
 
 「全然♪。レオくんに話は聞いたし、貴女を成仏させる為にあたしも全面的に協力したいなって思ったのよ。多少は霊感あるの知ってるでしょ?。使わないと勿体ないし、もっとデキるようになりたいのよね。しかし仲いいわねぇ?レオくん。す〜ぐに彼女の腰とか抱くんだし♡。良いなぁ〜」
 
 「うずめが話しにくそうだったからね。俺が触れていると肉体の実体化も安定するし、少し喋りやすくなるんだよ。でも驚いたな?ハジメさんにもちゃんと見えているなんて。…良かったな?うずめ。友達が増えたぞ?」
ああ…すぐ側から良い匂いがする。俺と同じシャンプーやボディーソーブを使っているとゆうのに何だこの差は。女の子って…ほんとに不思議だ。
 
 「ううん。残念だけど、初神さんにうずめの本当の姿が見えているのはレオが居るからなの。霊感の波は通っているけど、初神さんの霊力は濃度が薄いわ。…つまりレオほどの生命力を持っていないみたい。だから…ね?」
 
 「えーっ?。あたしはウズメちゃんと女同士でしかできないディープなお話をしたかったのにぃ。今のままのアタシじゃダメだってことなのぉ?」
 
 
 おお?。まさか俺の方がハジメさんよりも霊感が強いってことなのか?。もっとも、この部屋に来るまでは何にも見た事も感じたことも無いのだけれど。霊感とゆうか、人じゃない何かが見えていたのは幼馴染みの方で、俺は怖がる彼女の相談相手になっていた程度だったのに。もしかして霊感って伝染るのか?。なんてことを思いながらも、俺は少々得意気だった。
 
 
 「うずめと二人だけで会うのは無理があるって事だ。多分だけど、骸骨か腐乱死体に見えるんだろうな。俺はまだ一回も見たこと無いけどね?。それに声も今みたいじゃなくなるだろうし、会話自体が成立しないかも?」
 
 「そんなぁ。レオくんには話せないような悩みを聞いて、うずめちゃんと一緒に解決したかったのにぃ。ん〜。うずめちゃん?何とかならない?」
 
 「うずめの悩みを聞いてくれるの?。…それならレオと繋がればいい。うずめもレオに言えないことくらいあるのよ?。それに女子会も楽しみ♪」
 
 
 腰に回された俺の手を取り寄り添って、ふわりと身体を預けてきたうずめさんの紅い瞳が見上げている。いつもの穏やかな微笑みを浮かべてはいるものの気妙な違和感があった。そして彼女は時間を持て余すと、よく浴室に居る気がする。一緒に入った時にも下腹を気にしているようだったし何か身体的な悩みでもあるのだろうか?。そうなると俺は役に立てないな。
 
 
 「ハジメさんと繋がれって言われてもどうしたらいいんだ?。うずめとのように手を繋ぐとかじゃダメなのか?。ん?俺の服を着てもらうとか?」
 
 「れお?。おそそ。知ってるよね?。つまり男と女として繋がるの。うずめもレオとしたいけど、うずめの身体は穢れているからできないわ。それに霊となんて気持ち悪くてできないでしょ?。…精を吸われてしまうし…」
 
 
 う。薄々は予想していたのだが、まさか彼女の口から告げられるとは思わなかった。確かに俺は童貞だし自慰行為とかまともにできたコトがない。特に思春期の中頃は、肉体が大人に近づくにつれ悶々とする日もあった。だがやはり、夜な夜な監視されていては自慰行為などできる理由がない。その反動からなのか?うずめさんには並々ならない魅力を感じてしまう。
 
 
 「うずめは俺を舐めてるだろ?。うずめがいいなら俺だってシたいさ。それにうずめは穢れてなんかいないじゃないか。…あれ?おい、なんで消えるんだよ?。うずめ?。俺、なにか悪いこと言ったか?。謝るから出てきてくれよ。お〜い?うずめさん?。え?どこ?。ドコに隠れた?あれ?」
 
 「レオ…には話し……たくないの。……初神…さん。…レオを……お願い…します。……この人…女の子の…こ…と。…舐め…てるから。…お灸を…すえて?」
 
 「う、うずめちゃん?。あたしは嬉しいけど…ほんとにいいの?」
 
 「うん。…レオの命の…恩人だ…から。…肉体…ある事の……喜びを教え…てあげて欲しい……の。……レオ?。…女の…熱さを…忘れてる……でしょ?…」
 
 「え?。おい、うずめ?。お灸を据えるって何を言ってるんだ?。それと急に消えるのやめてくれ。二度と会えなくなるんじゃないって…すごく怖くなるからさ?。(なんで出てきてくれないんだ。あれ?うずめさん?)」
 
 
 そう言い残してうずめさんはすぐに気配を消した。彼女がそうする時は一人になりたい時だと俺は考えているのだが、やはり寂しくなってしまう。
 自らを穢れていると言い放った彼女の想いや苦悩を知りたい。でも俺には話したくないと、きっぱりと突き放されてしまった。そう言えば俺にもうずめさんに話していない事が山ほどある。辛い思い出に蓋をしたからだ。
 しかし彼女は初神ハジメと関わることで、その辛い過去に立ち向かおうとしているのではないだろうか?。たとえ俺には話せなくても、隣に佇む大人な彼女には話せるのかも知れない。それに女は女同士で、男は男同士でしか共感できない物が確かにあるだろう。もしもそのハジメさんとの共感がうずめさんの成仏に繋がるのなら俺は黙って支えよう。陰ながらでも。
 
 
 「ハァハァハァ。んくっ。ハァハァ。レオくん?大丈夫?嫌じゃない?。あたしはすっごく幸せなんだけどお♡。んんんっ♡あはぁ。強烈うっ♡。(あたしってこんなに大胆だったの!?。いきなり馬乗りだなんてっ!。でも良かったのかしら?。うずめちゃんだって抱かれたいはずなのに…)」
 
 「俺のことは心配いらないよ。それよりも、ハジメさんの方が苦しそうなんだけど。痛くないのか?。苦しいのならいちど離れた方がよくない?。(さっき『痛い』って言ったよな?。うっ!ほんとに大丈夫なのか?)」
 
 
 さすがに二人の愛の巣では緊張するからと誘われた112号室。透ける絹にも似たカーテンで仕切られた小高いベットの上で俺は仰向けになっている。その下腹に丸いお尻を重ねて下ろしたハジメさんが、俺の胸板に両手を置いて全身を撓らせている。その軽く仰け反る彼女の裸体のスケベさと言ったら鼻血が出そうだ。乱れた吐息と甘い嬌声を漏らしながら、明茶色の瞳で横たわった俺を見ている。時折り顔を寄せては、舌を絡めあった。
 
 
 「んん♡。ほんとにぃ。うずめちゃんの言うとおりだわぁ。んあんっ♡これは痛いとかじゃあっ♡。ンハァハァ、なくてぇ。んあっ♡。身体が喜んでるだけなのぉ♡。んあっく♡。(信じらんない…へそ上まで来てる♡)」
 
 「うっ!?。ハジメさん?。今ぎゅうって!?狭くなったんだけどっ?。(嘘だろ!女の子の膣って!?。うう。こんなに締まるのか?。うあ!またギュギュッて!?。…き!気持ちいいけどっ!。快感が強すぎる!?)」
 
 
 なんとも美しく淫らな女だ。形の良い乳房を弾ませるように揺らしながらも、彼女の火照った膣は俺の反り立ちを強く締め付けさらに愛撫する。ぬちゃぬちゃと聞こえる卑猥な水音。睾丸の裏には温い愛液が止め処なく伝い落ちている。恍惚とした表情で胸を反らすハジメさんが甘く小さな悲鳴をあげて、また大きく仰け反った。ビクビクっと腰や尻や乳房を痙攣させている。しかし本当にこの女は幸せなのか?。俺の心はここに無いのに…
 
 
 「んぁああっ♡。あはぁっ♡。ん♡。はぁはぁ…それはぁ…アタシがイッたからよぉ?。…んもう。レオくんはぁ気持ち良くないのね?。ひぁ♡。今ぁ♡いちばん深いところでビクン!ってしたぁ♡。あはぁ…しゅごい♡(ちょっと動いただけで飛んぢゃった♡。こんな強烈なの知っちゃったらもうオナニィなんてしてらんないわぁ。絶対に離さないんだからねっ♡)」
 
 「気持ちいいよ?スゴく。ただ、その。もの凄い緊張もしていて。(確かに凄い興奮と快感だ。大人が金を払ってでもヤリたがるのも理解できる。でも俺は、ハジメさんとこうなりたかった訳じゃない。ただ見ているだけで、話せるだけで良かったのに。…本当に俺って卑怯だよな。そうじゃないって思いながらも、ハジメさんを脱がし始めてすぐに勃起してたし…)」
 
 「あはぁはぁはぁ♡。レオちゃぁん♡。あらしもぉ動けないから変わってぇ♡。今度はレオちゃんが上になってねぇ?好きにシテいいからぁあ♡。(もう無理ぃ♡入れてるだけでバカになっちゃぅう♡。でもレオちゃんにあたしの匂いを刻みつけないとぉ♡。んあ!?またビクッてしたあ♡)」
 
 「…解ったよ。ほら?抱き着いて?。後ろに倒すからね?。(ううう。マジかぁ。加減が解らないのにぃ。…って。俺の身体はすごく興奮してるのに、妙に頭は冷静だな?。…うわぁ。ハジメさんってこんなに綺麗だったのか。そうか…俺は今、こんなにも美しい人と…繋がっているんだよな。)」
 
 
 騎乗位から座位になり、座位から正常位になった。その間も深く繋がったままのハジメさんは身悶え、喘ぎ、髪を振り乱す。それと連動するように彼女の熱く窮屈な膣は、蜜を溢れさせながら強烈に締め付けては蠢いた。初めて、全裸の女性に覆い被さる緊張感に心臓が爆発しそうだ。いや、本当に止まっていたらしいから今は気にしないようにしよう。…こわいし。
 両手を顔の横に放り出している初神ハジメの潤んだ瞳が見ている。輝いて見える美貌と白い肌。細い首筋から華奢な肩へ流れる曲線も美しい。重力に負けずにぷるんとした形を保っている豊かな美乳。そして控えめな乳輪を従えた桃色な乳首。両手を俺に伸ばした彼女に埋もれるようにして、俺はゆっくりと腰の抜き差しを始める。どこかぎこちなさを感じながらも…
 
 
 「ただいまぁ…うずめ?。(まだご機嫌斜めなのかなぁ?。…ハジメさんとあんな事してきた後だし、どんな顔をして会えばいいんだろう。まぁ。消えられたままよりは…顔を見ながら叱られてる方がずっとマシだけど…)」
 
 
 俺は重い身体なまま自分の部屋に戻った。1時間近く繋がりっぱなしだった快感に疲れ、眠ってしまったハジメさんをそのままにして。初のアルバイト出勤までまだ1時間程度余裕があるし、『汚れてもいい服装で来い』。と調理長にも言われてあるので着替えたい。何よりもうずめさんを見たかったのだが出てくる気は無いらしい。この部屋に来て四日。毎日が忙しくて慌ただしい。しかし普通の社会人1年生とはこんなものだろうと思う。
 
 
 「わ♪。おかえりレオ。…初神さんとちゃんと繋がったのね。気持ち良かった?。…ああゆう女性を大切にしないと、罰があたるわよ?うふふ♪」
 
 「…気持ち良かった?とか聞くなよ。うずめの言った通りちゃんと繋がったよ。これでハジメさんと二人で話せるんだよな?。ほら、下ろすぞ?」
 
 
 突然うずめさんがふわりと降ってきた。俺は慌てて受け止めたのだが、彼女の何気ない言葉が胸を掻き毟る。しかも満面の笑顔で言ってくるから始末におえない。悪気が無いことなど解っているのだが、やはり俺の罪悪感は止め処なく膨らむ。いつもならこのままでいたいのに、お姫様に抱いている彼女を下ろした。この貼り付いた後ろめたさがどうしても拭えない。
 
 
 「?。なぜ怒るの?。レオは18歳で立派な男なのだから女を抱くのは当たり前のことでしょ?。しかも初神さんはレオのこと大好きなんだし。だからレオと霊気の波長が合うのに。好意は想いを増幅させる鍵なのよ…」
 
 「別に…怒ってないよ。それに俺はそーゆー男とは違うんだよ。じゃなくって。その、初めて女の人と繋がるんなら、俺は…うずめが良かった。って今更だよな?。…シた後になって言い出す俺が馬鹿だ。なんかゴメン…」
 
 
 俺は思いの丈を吐露してしまった。それに、女体を抱くことへの価値観が他の男達とは違って俺の性癖は厄介だし、スマートさに酷く欠けている。金で買えるその場だけの快楽が重宝がられる男性主体な性の常識。その人身売買は黙認さえされている。しかし俺は『重い』のだ。思いの重なる女性しか欲しくない。快感や快楽の為だけなら、俺は生涯買わないだろう。
 
 
 「初めてって。普通の男子は数えの15で大人と認められて、16には女の身体を隅々まで知っているものでしょ?。レオは数えの19歳だから、とっくにそうゆう事に慣れているんだと思っていたわ。ごめんなさい… 」
 
 「別にいいよ。…でも忘れないでくれ。俺が欲しいのはうずめだ。それは身体とかじゃないんだからな?。そーゆーのは次世でも良いと思っているし、うずめが嫌ならずっと無くてもいい。だけど、うずめが許した子作りの日だけは真剣に努めるつもりだ。…俺はうずめが居てくれればそれで…」
 
 「レオ。ありがとう。ぐしゅ。でも嫌じゃないのはわかって?。ううん、叶うなら今すぐにでも抱き合いたいし…ひとつになりたい。ぐす。でもダメなの。…うずめの身体はもう。……ごめんなさい、やっぱり言えない…」
 
 
 見上げている涙を溜めた大きな眼と、潤んだ紅い瞳がひどく痛々しい。できるならうずめさんにこんな顔はさせたくなかった。それでも健気に胸のつかえを、俺なんかに吐き出そうとしてくれたことはマジで嬉しかった。
 
 
 「解ってる。俺に言えないことは言わなくていい。でも苦しいのならハジメさんに聞いてもらうといい。あの人は口が硬そうだから大丈夫だよ。さて、そろそろ着替えないと、初出勤で遅刻じゃ紹介してくれた人の顔に泥を塗ることになるし。…うずめ?一人でも大丈夫か?。…帰りは遅いぞ?」
 
 「うん。ぐす…すん。…大丈夫。レオが持って来てくれたスマートフォンもあるし。うずめね?知りたい事がたくさんあるの。だから大丈夫♪」
 
 
 ふわふわとした手触りの、袖の無い薄サクラ色なワンピース。この美女可愛い娘は何を着せてもよく似合う。久し振りに触れた彼女の細い肩と生肌に、俺はやはりビビってしまう。ついさっき包まれていた、初神ハジメの火照った柔肌とは違う滑らかな手触りに、やはり背筋が伸びてしまった。
 少しだけ見つめ合い、そっと顔を寄せると、かのえは小さくつま先立ってくれる。細い腰を抱き寄せて、できるだけの優しさで、俺は慎重に唇を重ねた。ちゅっと軽く吸われたかと思うと、ぬちっとした、熱い舌先が差し込まれてくる。暴発しそうな興奮を抑え込んで…俺は舌先を重ねてみた。
 
 
 「待っていたぞ?獅子神獅子。10分前に厨房に入るのは当然だが、その心掛けだけは買ってやる。さぁ先ずは菜切りだ。そこのキャベツ3玉を10分以内に千切りにして見せろ。庖丁はコレだ。もしも慌ててしくじれば指が飛ぶかも知れないぞ?。ふふ。お前の真剣さをウチに見せてみろ!」
 
 「は?はい!。獅子神レオ!大玉キャベツ3玉を!10分以内に千切りさせてもらうでありますっ!。(ここは自衛隊かっ?軍隊なのかっ!?。真っ黒なサングラス掛けて帽子とパンツは迷彩だし!。しかもちっちゃいタンクトップ着てやがる!。更にはノーブラなんて…意味わからんっ!)」
 
 
 ここはオレが面接に受かった『焼き鳥かのえ』だ。少し早く着いたオレは裏口からさっそく厨房に赴く。倉庫を兼ねる通路を抜けた先で待ち構えていたのは、総料理長である七月すずめ《ななつき、すずめ》さんだった。
16歳なのだが一人前の料理人で、このお店で提供されている殆どの料理を、たった一人で調理しているそうだ。美少女だからか尊敬してしまう。
 
 
 「こら!獅子神!。なんで逃げるっ!?。これも大切な相性の確認だ!ウチと獅子神は今日から色んな意味でパートナーになるんだし!ウチはお前の師にあたる!。そう!師弟関係だからこそ意思の疎通は大切なのだ!」
 
 「は、はぁ。(やりにくいなぁ。ずっと傍にくっついてるんだし。でもおっぱいが時々当たったりして悪くないかも。って!違うだろ!?。はぁ。刃物も側にあるのに…こんなに密着されたら危なくて手が動かせないよ。」
 
 
 野菜から肉から、とにかく切り物を一通り終えたところで師匠が俺から離れない。俺はまだまな板の前に立って一口大な鶏肉に串を打っている。焼き鳥屋の看板を掲げているからにはコレが売りなのだろうが鶏もも一本あたり約80グラムは大きめだと思う。しかもいちいち計っていては仕事にならないのが現場だ。各部位全てで700本。手で覚える必要があった。
 開店まで残り40分。まだ打てていない串が380。間に合う気がしないのだが、未だ師匠は背後から覗き込んでいる。たまに背中を意味ありげに撫でつつ何やらムニャムニャ言っていた。これはもしや噂に聞く『セクシャル・ハラスメント』ではなかろうか?。とか思うのだが、稀に当たるおっぱいの弾力が素晴らしいので黙々と串を打つ。これも仕事の内だろう…